すっかり秋色のニューヨーク。近所の公園で散歩をすると、足の下で葉がポテトチップスのような音を立てる。
今学期は授業を教える義務が無くて時間があるため、お楽しみでスペイン語の授業に通っている。そこで「風邪を引いたらどんなことをしますか?」と先生に聞かれ、「チキンヌードルスープを作ります」と自慢げに話していた矢先のことである。早速、リルケと代わりばんこで風邪を引いてしまった。
病んでいる時、何故かとびきり美味しく感じるチキンヌードルスープ。厚く切ったセロリとニンジンを多めに入れ、冷蔵庫に残っている白ワインを投入するのが我が家の手法。このチャンキーな具沢山のスープを飲むとじわじわと元気が出てくる。
リルケが治りかけた頃、今度は私がダウンした。セーターやらマフラーを着込んでノートルダムのせむし男のようなシルエットになって家に引きこもっていると、こんな愉快なカタログが届いた。
クリングルのカタログだ。私たちの前の住人宛てで届いた。
Kringle とはデンマークのお菓子で、巨大な円形のデーニッシュのこと。外はクロワッサンのようにサクサクでフレイキーで、上にアイシングがまわしかけてある。中身はくるみとサワークリームだったり、ラズベリージャムだったり、色々とある。
あれ、カタログの船のロゴ、どこかで見たことあるなと思ったら、今年の春、このウィスコンシン州にあるクリングル専門ベーカリーが作ったラズベリークリングルを、カリフォルニアのトレーダージョーズでちゃっかり買って食べていたのである。
リルケが「クリングルってなんだか分からないけれど、すごく気になる」とトレジョで大興奮して、当時は高いなあと思った9ドルだか10ドルだかを支払い、家に持ち帰った。
しかし今回届いたカタログをぱらぱら見ていると、クリングルが2個で42ドル、「感謝祭クリングル」が1個24ドル。そんなに高い物なの?クリスマスケーキも70ドル以上する。
トレジョで買ったクリングルが随分と安くなっていたことをカタログを見て初めて知った。けれど味が so-so で、何日もクリングルを朝ごはんにして食べなければいけなったため、二枚目は買わなくていいね…となってしまったのだった。うん十ドル出せば、もっと素晴らしいクリングルが届くのだろうか。
自分で作った方が新鮮で美味しい(+安い)のではないか、と疑わずにはいられない。身体が元気になったら、自分のキッチンでクリングルを作ってみようと意気込んでいる。
Seymour, R. 1836. "Old Christmas." Public domain.
話が飛ぶが、北欧と言えば、クリスマスに登場する Julbocken ユール・ボッケンを思い出す。文字通り、「クリスマス・ヤギ」である。小さい頃、ユールボッケンや手作りのニッセの人形(nisse は赤い煙突状の帽子を被った小人のこと)でクリスマスツリーを飾っていたのを覚えている。
よく見ると上の挿絵のユールボッケンに乗った Father Christmas も、湯気が立ち上るチキンスープらしきものを抱えている。何でしょうね、あれ。風邪を引いたりスープを作っていたりするうちに、あっという間にクリスマスになってしまいそう。
因みに私が風邪を引いた時は、リルケは日本の大根をどこからか見つけてきて豚汁を作ってくれた。これも風邪に効きそうな感じ。
一人が弱っている時はもう一人の元気な方が料理をするので、安心して体調が崩せる。