押入れ崩れた! | 店舗探し.comの過去コラム

店舗探し.comの過去コラム

会員様向けメルマガに掲載された過去のコラムを掲載しています。

2010/10/27

 

ものぐさが高じて散らかしていた部屋に、急な来客を
迎えることになりました。

あなたは散乱していたゴミや、見栄えの悪いものは
とりあえず押入れに突っ込んでおき、押入れを開ける
羽目になるような展開を周到に避けてその場を凌ごうと
します。
 
しかし、押入れの容量以上に無理に詰め込んだために
来客の目の前で押入れは決壊して、一気に中のガラクタ
が雪崩れ落ちてきて、部屋を埋め尽くしてしまうのです。
 
できの悪いコントのような状況が、地球上の多くの都市
で起きつつあるようです。
 
『スラムの惑星 都市貧困のグローバル化』
        マイク・デイヴィス著 明石書店
 
地球の都市化のスピードはハイペースで進んでいます。

1950年に86にすぎなかった100万人以上の都市が、
2006年においては400になり、2015年までに少なくとも
550にはなると言われています。

本書では、このままで行くと、2050年におよそ100億人
に達することが予期される、将来の世界人口成長の
ほとんどすべてを、都市が占めることになるだろうと予想
しています。
 
さらに、都市化のスピードをはるかに凌ぐスピードで進行
しているのが、スラムの拡大です。
 
スラムへは、たとえばグローバルな競争を勝ち抜くため
に、農業が大規模化する過程で、営農できなくなった
農民や、オリンピックや国際会議などを迎えるために
行政府によって会場付近から締め出された住民達が
次々に流入していきます。
 
華やかな国際イベントが行われる、贅を尽くした会場
や高層インテリジェントビルが立ち並ぶ、都市の表の顔
が光り輝けば輝くほど、影の顔であるスラムの環境は
より悪化し、悪臭を放つのです。
 
無秩序に、ゴミやガラクタが撒き散らされて散乱する
スラムに、次から次へと人が押し寄せて住みついては、
その密度を増していきます。
 
もはやスラムの決壊は秒読み段階に入っていて、都市
をスラムが埋め尽くすのは避けられないのでしょうか。
 
ウサギ小屋と揶揄された日本の住宅事情が、世界中の
都市から羨望のまなざしで見られるなどというコントが、
現実のものとならないことを祈るばかりです。