その時 | 店舗探し.comの過去コラム

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2011/3/16

その時・・・。

地震は、まるで保線状態の悪いレールを走る電車に揺られて
いるかのような体感で、今まで経験したことが無いほど長く
続きました。

店舗探し.comのオフィスは、東大赤門の目の前にあるビルの
3階にあります。

その時、デスクの下に隠れた方がいいか、建物の外に避難
したほうがいいのか、いずれの判断もつかないまま、結局
そのどちらの行動も取ることなく、ただその場に立ち尽くし
ていました。

窓の外を見ると、東大赤門前広場には十数人の人がいます。
彼らは、地震で揺れている間も全くその場を動こうとしま
せん。
傍目には、慌てている様子は全く感じられませんでした。

しかし、それは決して落ち着いていたのではなく、こちらと
同じく、判断停止の状態に陥り、一歩も動けなかっただけ
なのかもしれません。

その後、何回かの、単なる余震とは言えないような大きな
揺れを感じるたびに、社員のある者は建物の外へ出たり入っ
たりして、何度も階段を上り下りしていました。

またある者は、オフィス内に留まり、いつも通りにPCに向か
って業務を続けていました。

緊急避難場所として指定されている東京大学が、目と鼻の先
にありながら、逃げ込んで安全確保を図ろうとした者は皆無
でした。
今にして思えば、ビルが倒壊して押し潰されてしまう可能性
を低く見積もっていたとしか考えられません。

業務を停止して、帰宅するなり宿泊場所を確保するように、
との呼びかけにも社員の反応は案外に鈍く、一部社員は
早々に徒歩で帰宅しましたが、他の多くの社員は、しばらく
様子見をしようという空気が支配しているように見えました。

社員達は、夕方5時過ぎに、1階にある「いわしや」の社長の
ご好意で、車に同乗して途中まで送ってもらうことができた
ので、全員が当日中に帰宅することができました。

帰りがけに通る、文京区千石にある知り合いの美容院では、
店の前を徒歩で帰宅する人が、まるで初詣の参道のように
押し合いへしあいして流れているのを、全員が他人事のよう
に眺めていました。

三鷹や埼玉県のふじみ野が自宅だという従業員達も平然と
しているので、誰かの家にでも泊めてもらうつもりかと思っ
て訊ねたら、普通に電車で帰るつもりです、とすましていま
す。
店の前を通る大勢の人達は、電車での帰宅をあきらめて
徒歩で帰ろうとしているのだと言うと、急におろおろしだす
始末でした。

後から思えば理屈に合わない、おかしな判断ミスを、誰もが
犯していたのです。
泣いたり叫んだりしていなくても、逃げ回ったりしなくても
皆、理性的とは程遠かったのでしょう。

今まだ続く余震のように、私達はまだ、真の意味では理性を
取り戻していないのかもしれません。