シャボン玉ひとつ | 店舗探し.comの過去コラム

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2013/3/18

「国家百年の計。」

TPP交渉参加を表明した記者会見で、安倍首相はそう明言しました。
100年後を見据えての大きな決断がなされたのです。

今から100年前というと1913年(大正2年)になります。
この年11月22日に江戸幕府最後の征夷大将軍、徳川慶喜が亡くなり
ました。
ここに、名実ともに江戸時代が終焉し、統一国家【日本】が成立
したのです。

明治に元号が変わり、明治は幕を開けました。
しかし、制度や人心が1日にして180度変わったわけではありません。

将軍と江戸幕府の権威・権力の枠内とはいえ、自立した政治・経済
・社会のまとまりを持っていた藩は、小さな国家でした。
俗に「徳川300藩」と言いますが、江戸末期には276藩あったとされ
ています。
つまり、この狭い日本に276もの国がひしめき合っていたことになり
ます。鎖国をしていた時代の「世界」とは日本列島で完結していた
のです。

開国し、列強と対峙せざるを得なくなると、小さな島国の中でごた
ごた争っている場合ではなくなりました。
276もの細かい泡をまとめて、「日本」という一つの大きなシャボン
玉を作ったのです。

徳川慶喜という細かい泡々の頂点に君臨した将軍の死は、既に日清・
日露戦争を通じて、一つのシャボン玉としての国家アイデンティティ
を内外に示していた日本が、真の統一国家となったことの象徴なの
ではないでしょうか。

この100年の前半で、日本はアジアの他のシャボン玉を、無理矢理
自分のシャボン玉に吸収しようとして挫折しました。
後半の50年間、日本はよそ見することなく、自分のシャボン玉を大
きく膨らませることに専念してきました。

地政学的に多くの国家が国境を接しているヨーロッパでは、戦争と
いう手段に頼ることなく、いくつものシャボン玉を合体させてEUと
いう大きなシャボン玉を作り上げてしまいました。

未来へのベクトルの最終目的が、地球全体を覆う大きなシャボン玉
を完成させる方向を向いているのだとしたら、TPPは、間違いなく
その方向に沿っているでしょうし、日本の交渉参加決定もまた、同
じ方向を目指そうという意思の表れと言えるでしょう。

日本の人口は、100年後には5000万人以下にまで減少するとの予測
があります。
それはまさに100年前の人口とほぼ同じ水準です。

その時、日本が大きなシャボン玉の一部となっているのか、自分の
膜だけを必死で支えるしぼみかけたシャボン玉のままでいるのか、
今後の交渉が大きなカギを握っていることだけは間違いありません。