DebussyRavelBoulez  曜日もわからなくなるようじゃ、もうおしまい?
 先日新しい腕時計を買った。

 これまでしていたもの ― CASIOのLINAGE ― が壊れたわけではないが、最近になっていつの間にかガラスに大きな傷がついていて、それが買い替えのきっかけになった。


 しかし、もう1つかねてから不便に思っていたことがある。
 この時計には曜日を表示する機能がついていなかったのだ。

 曜日なんて必要ないだろうとおっしゃる方も多いだろう。
 私もそう思っていたが、実際に使ってみるとしばしば不便。若いころと違い、「あれ?今日は何曜日だったろう?」と忘れることが多くなるのだ。その背景には、毎日が土曜日であってほしいという潜在的願望があるせいかもしれない。

 学生のように授業のカリキュラムがあるわけじゃないんだから、曜日なんてあまり問題にならないだろう。
 そう思う人もいるかもしれない。
 逆に時間割のような明確な違いが毎日にないので、わからなくなってしまうのかもしれない。

 しかし、曜日を忘れると生活に大きな支障をきたすことがある。
 ごみを出し忘れたら大ごとだし、イオンの火曜市が昨日だったってことがあったら哀しいではないか!

 だから次の腕時計は曜日表示のあるもにすることが必須だったのだ。
 実はここ数年、私は機会があるたびにビックカメラの売り場を訪れて、東洋系異邦人の観光客に紛れて気に入ったものがないか物色していたのである。


  1号機はスイス製
 私が初めて腕時計をしたのは小学校6年の時である。
 家に遊びに来ていた親戚のおじさんが、酔っ払って托卵家、いや、タクランケになって私にくれたのだ。

 スイスの某有名メーカー(その昔はよくクイズ番組の賞品に使われていた)のもので、たぶん結構高価なもの

だったはずだ。しかし、高価だからといって小学生の私がストレートに喜ぶわけでもない。

 実際、よく言えば渋いが正直に言うとひどくおっさんくさいデザイン。おまけにバンドは蛇革……
 しかもちょっとしたことでガラスの内側が曇ったり、時刻もけっこう狂ったりもした。

 私が欲しかったのはオリエントとかシチズンの、文字盤がブルーとかグリーンでカットガラスの時計だったの

だ(いま思えばあのようなガラスにする意味はなんだったのだろう?盛り上がった分、傷がつき放題だったろう。カッコよかったけど……)。

  音楽界の時計職人
 で、ラヴェル(Maurice Ravel 1875-1937 フランス)の作品を。


 なぜって?

 彼はその精緻な書法からストラヴィンスキーに“スイスの時計職人”と呼ばれたからだ。

 H.C.ショーンバーグは、“ドビュッシーの音楽は空気のクッションの上に浮かんでいるが、ラヴェルの音楽は精巧なクロノメーターのように正確に時を刻んでいる”と書いている(「大作曲家の生涯」:共同通信社)。

 その職人さんの作品から、今日はバレエ「マ・メール・ロア(Ma Mere l'Oye)」。


 原曲は1908年から10年にかけて作曲された5曲からなるピアノ連弾組曲。
 のちの1911年に、作曲者自身によって間奏曲などを書き加えた形でバレエ音楽としてオーケストラ編曲された。


 ピアノ組曲は、〔眠りの森の美女のパヴァーヌ/おやゆび小僧/パゴダの女王レドロネット/美女と野獣の対

話/妖精の園〕の5曲からなるが、バレエ音楽の方では「眠りの森の美女のパヴァーヌ」の前に前奏曲と「紡車の踊りと情景」、そしてまた各曲の間に間奏曲が置かれている。

 今日は網タイツのように紡ぎあげられた(←深い意味も浅い意味もありません)ブーレーズ/ベルリン・フィルの演奏を。

 1993年録音。グラモフォン。


 なお、ここにも書いているように、マ・メール・ロアとはマザーグースのことである。


  2号機はカシオのデジタル1号機
 おじさんくさい時計のあと、自分の意志で選んで親に買ってもらったのはカシオのデジタル腕時計だった。
 デジタルの腕時計としてはたぶん最初に売り出されたものだ。
 いまなら1,000円ほどで買えるデジタル腕時計ほどの機能もなかったが、確か3万くらいした。
 山口百恵が「デジタルゥーは、カーシオ!」とテレビコマーシャルで歌っていたのはこのころだと思う。

 私はもともとデジタルが好きで、このとき、もう一生アナログ時計はすることはないだろうと思った。


  3号機はご褒美でもらったキズモノ
 次の腕時計はリコーのデジタルだった。
 札幌のデパートで行なわれた“アメ横市”という催事のアルバイトで時計を売り、最後にご苦労さん代のボーナスとして店主がくれたのだった。ただ、一部に傷がある品物だった。
 しかしそれまでしていたカシオのものよりも数段多機能だった(その機能を使うかどうかは別として)。


  4号機はアナデジ
 世の中にアナログとデジタルが混合した時計が出回るようになった。
 自分もいい歳になってきて、なんとなくスーツ姿にデジタル時計ということに違和感を覚えるようになった。
 そこで、かつてのデジタル一筋の信念を貫かずにカシオのWAVE CEPTERのデジアナのものを買った。アナログ時計だが、ガラスにデジタル文字が浮き出るもの。電波時計で時刻合わせ不要というのが気に入った。


  5号機は天下のSEIKO製だったが……
 完全なるアナログ時計。機内販売で買った。
 ムーブメントはSEIKO製。しかしすぐに壊れてしまい、保証期間内だったので交換。その交換後の製品もすぐに壊れた。

 
  6号機以降はアナログ
 以降はカシオのアナログ電波時計にしている。日付と曜日が液晶デジタルというのものも、そうでないものもあったが、いずれも電波ソーラーである。時刻が狂うことも、電池が切れることもない。なんとすばらしいことだろう!

 しかし7号機、つまり先日まで着けていたLINAGEには、最初に書いたように曜日表示がなかった。

 そこでCASIOのEDIFICEである。

 少し前からOCEANUSに興味があったが、デザインと色使いがやや派手なのと、価格が高いのが難点。いくら高くても傷がつくときは一緒だし。
 と、EDIFICEの先月のニューモデルに出会った。好みのデザインだ。そして曜日表示がある。

 ストップウォッチ、タイマー、アラーム、世界時計の機能がついていて機能的には申し分ない(それはLINAGEも一緒だったが)。ただし過去の経験からすれば、私の場合、このうちストップウォッチとタイマーとアラームと世界時計の機能はまず使うことはないだろう。

 つまり電波時計の正確さ、電池交換不要、日付曜日表示有ということが重要なのである。

 ただ、このモデルには暗い場所での照明機能がないことが惜しまれる。

 傷以外には健康なLINAGEは、ガーデニング作業などの時に使い続けるつもりである。