禍の字形変遷図を追加しました。
咼 カ 口部
解字 冎カは、手足の骨が連続してつながる形で、ここでは関節部分をさす。そこに口のついた咼カは、関節部分がまるいことを表し、関節の先端が、とびでてまるい意と、それを受けるへこんでまるい部分をいう。具体的には、大たい骨のまるい上部とそれを受ける骨盤の骨臼をさすものと思われる。咼を音符に含む字は、関節の骨の一方のくぼんだ「まるい穴」、骨の一方のまるく出た「まるい山形」のイメージをもつ。
イメージ
「まるいくぼみや穴」(渦・鍋・堝・窩・禍)
「まるい山形」(蝸)
「その他」(過)
音の変化 カ:渦・鍋・堝・禍・窩・蝸・過
まるいくぼみや穴
渦 カ・うず 氵部
解字 「氵(水)+咼(まるいくぼみ)」の会意形声。水がうずまいてまるい穴のようになること。
意味 (1)うず(渦)。うずまき。うずまく。「渦中カチュウ」「渦潮うずしお」
鍋 カ・なべ 金部
解字 「金(金属)+咼(まるいくぼみ)」の会意形声。金属製のまるくて底の浅い器。
意味 なべ(鍋)。炊事に用いる器。「鍋物なべもの」「手鍋てなべ」「夜鍋よなべ」(夜に鍋をかけ夜食をとりながら仕事をする)「夜鍋仕事よなべしごと」「鍋戸カコ」(大鍋で海水を煮詰めて塩を作る家)
堝 カ・るつぼ 土部
解字 「土(つち)+咼(まるい穴)」の会意形声。まるい穴のかたちの土焼きの器。
意味 るつぼ(堝)。中に物質を入れて加熱して溶かす耐熱製の容器。化学実験では磁器製のものが普通だが黒鉛製などもある。「坩堝カンカ・るつぼ」
窩 カ 穴部
解字 「穴(あな)+咼(まるい穴)」の会意形声。まるくあいた穴。
意味 (1)あな。くぼみ。むろ。まるい穴のかたちの巣。「腋窩エキカ」(腋の下のくぼんだ所)「燕窩エンカ」(ツバメのまるい巣。中華料理の高級材料となる)「眼窩ガンカ」(眼球が入っている頭骨のあな)「蜂窩ホウカ」(蜂の巣)「蜂窩織炎ホウカシキエン」(皮膚下の蜂の巣のような粗い組織で起こる化膿性炎症) (2)物をかくす。かくす場所。「窩蔵カゾウ」(隠し場所)「窩主カシュ」(窩蔵の主。盗品を売りさばく人や店)「窩逃カトウ」(逃亡者をかくまう)
禍 カ・わざわい ネ部
解字 「ネ(=示。祭壇・神)+咼(まるい穴)」の会意形声。神のたたりを受けて思いがけない穴(落とし穴)にはまること。
意味 わざわい(禍)。ふしあわせ。「禍根カコン」(わざわいの起こるもと)「禍根を絶つ」「災禍サイカ」「コロナ禍カ」(コロナウィルス感染の蔓延による禍わざわい。2020年~)「禍福カフク」(わざわいとしあわせ)「禍福は糾(あざな)える縄の如し」(幸福と不幸は、より合わせた縄のように交互にやってくる)
まるい山形
蝸 カ・ラ 虫部
解字 「虫(むし)+咼(まるい山形)」の会意形声。丸い山形の殻をもつカタツムリ。
意味 Ⅰ.カの発音。かたつむり。「蝸牛カギュウ・かたつむり」「蝸角カカク」(かたつむりの角) Ⅱ.ラの音。にし。にな。巻貝の名。「蝸螺ララ・にな」
その他
過 カ・すぎる・すごす・あやまつ・あやまち 辶部
解字 金文は、「 冎(足の骨がつながった形)+彳(ゆく)+止(あし)」の会意形声。「彳+止」は篆文で辵チャクとなり、現代字でしんにょう(辶:ゆく)となる字。つまり、足の骨(死んだ人の足)が行く形で、現在でなく過去の「行ったこと」を表す。篆文から冎カが、同音の咼カに変化した。過は、すぎる・時がすぎる意となる。また、禍カ(わざわい)に通じ、しくじる意味もある。
意味 (1)すぎる(過ぎる)。通りすぎる。よぎる(過る)。「通過ツウカ」「過客カカク」(①通り過ぎてゆく人。旅人。②来客) (2)時がすぎる。すぎる(過ぎる)。すごす(過ごす)。「過去カコ」「過程カテイ」(経過したみちすじ。プロセス) (3)度がすぎる。すぎる(過ぎる)。「過信カシン」 (4)しくじる。あやまつ(過つ)。あやまち(過ち)。とが(過)。「過失カシツ」「過誤カゴ」(あやまち。過も誤も、あやまちの意)
<紫色は常用漢字>
<関連音符>
冎 カ 冂部
解字 手ないし足の骨が連結した形。手足の骨が関節によってつながるさまの象形で、骨の原字。音符「冎カ」を参照。
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咼 カ 口部
解字 冎カは、手足の骨が連続してつながる形で、ここでは関節部分をさす。そこに口のついた咼カは、関節部分がまるいことを表し、関節の先端が、とびでてまるい意と、それを受けるへこんでまるい部分をいう。具体的には、大たい骨のまるい上部とそれを受ける骨盤の骨臼をさすものと思われる。咼を音符に含む字は、関節の骨の一方のくぼんだ「まるい穴」、骨の一方のまるく出た「まるい山形」のイメージをもつ。
イメージ
「まるいくぼみや穴」(渦・鍋・堝・窩・禍)
「まるい山形」(蝸)
「その他」(過)
音の変化 カ:渦・鍋・堝・禍・窩・蝸・過
まるいくぼみや穴
渦 カ・うず 氵部
解字 「氵(水)+咼(まるいくぼみ)」の会意形声。水がうずまいてまるい穴のようになること。
意味 (1)うず(渦)。うずまき。うずまく。「渦中カチュウ」「渦潮うずしお」
鍋 カ・なべ 金部
解字 「金(金属)+咼(まるいくぼみ)」の会意形声。金属製のまるくて底の浅い器。
意味 なべ(鍋)。炊事に用いる器。「鍋物なべもの」「手鍋てなべ」「夜鍋よなべ」(夜に鍋をかけ夜食をとりながら仕事をする)「夜鍋仕事よなべしごと」「鍋戸カコ」(大鍋で海水を煮詰めて塩を作る家)
堝 カ・るつぼ 土部
解字 「土(つち)+咼(まるい穴)」の会意形声。まるい穴のかたちの土焼きの器。
意味 るつぼ(堝)。中に物質を入れて加熱して溶かす耐熱製の容器。化学実験では磁器製のものが普通だが黒鉛製などもある。「坩堝カンカ・るつぼ」
窩 カ 穴部
解字 「穴(あな)+咼(まるい穴)」の会意形声。まるくあいた穴。
意味 (1)あな。くぼみ。むろ。まるい穴のかたちの巣。「腋窩エキカ」(腋の下のくぼんだ所)「燕窩エンカ」(ツバメのまるい巣。中華料理の高級材料となる)「眼窩ガンカ」(眼球が入っている頭骨のあな)「蜂窩ホウカ」(蜂の巣)「蜂窩織炎ホウカシキエン」(皮膚下の蜂の巣のような粗い組織で起こる化膿性炎症) (2)物をかくす。かくす場所。「窩蔵カゾウ」(隠し場所)「窩主カシュ」(窩蔵の主。盗品を売りさばく人や店)「窩逃カトウ」(逃亡者をかくまう)
禍 カ・わざわい ネ部
解字 「ネ(=示。祭壇・神)+咼(まるい穴)」の会意形声。神のたたりを受けて思いがけない穴(落とし穴)にはまること。
意味 わざわい(禍)。ふしあわせ。「禍根カコン」(わざわいの起こるもと)「禍根を絶つ」「災禍サイカ」「コロナ禍カ」(コロナウィルス感染の蔓延による禍わざわい。2020年~)「禍福カフク」(わざわいとしあわせ)「禍福は糾(あざな)える縄の如し」(幸福と不幸は、より合わせた縄のように交互にやってくる)
まるい山形
蝸 カ・ラ 虫部
解字 「虫(むし)+咼(まるい山形)」の会意形声。丸い山形の殻をもつカタツムリ。
意味 Ⅰ.カの発音。かたつむり。「蝸牛カギュウ・かたつむり」「蝸角カカク」(かたつむりの角) Ⅱ.ラの音。にし。にな。巻貝の名。「蝸螺ララ・にな」
その他
過 カ・すぎる・すごす・あやまつ・あやまち 辶部
解字 金文は、「 冎(足の骨がつながった形)+彳(ゆく)+止(あし)」の会意形声。「彳+止」は篆文で辵チャクとなり、現代字でしんにょう(辶:ゆく)となる字。つまり、足の骨(死んだ人の足)が行く形で、現在でなく過去の「行ったこと」を表す。篆文から冎カが、同音の咼カに変化した。過は、すぎる・時がすぎる意となる。また、禍カ(わざわい)に通じ、しくじる意味もある。
意味 (1)すぎる(過ぎる)。通りすぎる。よぎる(過る)。「通過ツウカ」「過客カカク」(①通り過ぎてゆく人。旅人。②来客) (2)時がすぎる。すぎる(過ぎる)。すごす(過ごす)。「過去カコ」「過程カテイ」(経過したみちすじ。プロセス) (3)度がすぎる。すぎる(過ぎる)。「過信カシン」 (4)しくじる。あやまつ(過つ)。あやまち(過ち)。とが(過)。「過失カシツ」「過誤カゴ」(あやまち。過も誤も、あやまちの意)
<紫色は常用漢字>
<関連音符>
冎 カ 冂部
解字 手ないし足の骨が連結した形。手足の骨が関節によってつながるさまの象形で、骨の原字。音符「冎カ」を参照。
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