きょうのフクオさん　認知症の父観察日記　

突然フクオさんが言いました。

カギがもう駄目だな。
それにアンタが裏に置いておいたカギを取っていったし、
あそこで人と話していたからもう今のカギは使えないよ。

はぁ、何言ってるのか分からないけど。

俺は知ってるんだ。アンタが裏に置いておいたカギを取ったこと。

取ったって、盗んだってこと？

いや、盗んだとは言っていない。
でもあそこにあったカギをアンタが持って行った。

カギは持って行っていないし、洗面所で人と話してなんかないよ。

いや、話してた。俺は聞いてた。

洗面所の窓越しに、誰と話してたって言うのよ！！

誰だかわからないけど、話していた。

確かに玄関のカギはもうかかりにくくなっています。
それだって、フクオさんがカギをかけた後に、
何度もガチャガチャするものだから
だいぶ前からカギ穴が歪んでしまっていました。

昨日は、私が出かける時、戸締りが心配だったので、
『お風呂へ行くときはカギを閉めてください。』
と、玄関に張り紙をして行きました。
私でも閉めずらいカギに、フクオさんはもっと手を焼いたのでしょう。

今なら、少し冷静に考えられますが、怒鳴り合っている最中は、
フクオさん、いよいよ妄想や幻覚に襲われるようになったのかと思いました。

あのさ、それって幻覚だよ。
私、洗面所で誰とも話していないもの。

いや、俺は少し頭が変になっていて、昔のことはよく分からなくなっているが、
今のことははっきり分かるんだ。
アンタはあそこではっきり人と話していた。

もう、いい加減にしてよ！！！

その後もしばらく言い合いは続きました。
バカヤローって大声で叫びたかった。
フクオさんを張り倒したかった。

でも、これを書いている今、思いました。
食卓の隣は洗面所です。
食事中に電話がかかってくると、洗面所で話していました。
もしかしたら、携帯で話している私を見ていたのかしら。
それをカギのことで誰かと、やり取りしていたと思っているのかしら。

カギも昔、フクオさんが洗面所の窓の裏に、
予備のカギ張り付けてあったことがありました。
でも、それもずいぶん昔のことで、もうしばらくは見ていません。

それにしても、いつまで、こんなことが続くのでしょうか・・・。




＊昼ごはん
ジャガイモ団子入りカレーうどん、３０品目サラダ



＊晩ごはん
レンコンと長ネギと合いびき肉の炒め物、ラワンブキの醤油煮、
キュウリの浅漬け、ジャガイモ団子と卵のスープ