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◆私たちの文明が作り出した耐性菌工場。あるいは、私たちは毎日「耐性菌を食べている」

確かに今の世の中は誰もが肉を食べ過ぎだとは思いますし、冒頭に載せたような「アメリカだけでも1年間で 90億匹以上の動物が食材として殺されている」という数はものすごいもので、倫理的な思想にも及ぶところがあるものですが、しかし、今回の話は倫理面の話ではありません。

そうではなく、「現実の人類の脅威」についての話です。

以前から、In Deep でも、「抗生物質に対しての耐性菌」の脅威についての記事を書くことはありましたけれど、私は何となく「医療での抗生物質の使いすぎ」というものを強く思っていたのですが、実際には、

「流通している医療用抗生物質の多数(70%以上)は、人間にではなく、飼育されている畜産動物に使われている」のです。これはつまり、「畜産動物たちが、スーパー耐性菌の誕生と拡大の場なっている」という意味でもあります。

かつて人類の歴史ではなかったほどの「人間による肉食の拡大」と共に、私たちは「抗生物質が完全に効かなくなる日」というアルマゲドンを迎えることになりそうです。しかも、それを食い止める手段は今の世の中のシステムには存在しません。

では、記事をご紹介します。

HOW EATING CHICKEN COULD (SERIOUSLY) CAUSE AN APOCALYPSE
livekindly.co 2017/12/03

鶏肉を食べることは黙示録を生み出す(真面目な話)

赤身の肉の危険性について話題になることはあるが、鶏肉の悪影響について議論されることはほとんどない。

ニワトリを愛する人たちはとても多く、こういう書き方をするのは気が引けるが、実際にはニワトリは地球上で最も虐待されている動物だ。しかし、その現実を別としても、安価な鶏肉に執着することはニワトリたちを殺すというだけではなく、それは私たち人間自身をも殺している。

もう長い間、農場の動物たちは頻繁に抗生物質を投与されている。これは、公衆衛生への脅威である鶏肉の消費だけではなく、主流の農産物産業のすべての製品でそうなっていることを意味する。

抗生物質は動物たちの病気を防ぐための手助けとなり、同時に急速な成長を促す。市場投入までの時間を短縮することによって、できるだけ多くの収入を得るために、成長のための抗生物質投与は一般的となっている。

しかし、その中で、私たち人間は抗生物質を日々食べ、また抗生物質に適応し始めた耐性菌をも食べていることになっているかもしれないのだ。

それはスーパー耐性菌と呼ばれるもので、抗生物質に対して耐性があり、それまで有効だった抗生物質が無効となってしまう。

今年の世界保健機関(WHO)の報告書では、「抗生物質耐性菌の増大する脅威に対抗するための新しい抗生物質の深刻な欠如を示している」と述べている。この意味は、つまり「世界は抗生物質を使い尽くした」ということだ。

多くの医師や科学者たちが新しい抗生物質の誕生に期待してもいるが、その一方で、動物肉製品の摂取量を減らすか、あるいは完全に肉製品をなくすことによって耐性菌の増大に対して、より直接的なアプローチを主張する人もいる。

米国の非営利組織『ピュー慈善信託 (Pew Charitable Trusts)』は、医学的に重要な抗生物質の 70パーセントが農場で飼育されている動物に使用されていることを突き止めている。これは、「ヒトが使うよりも多く動物に使われている」こと、そして、「そこからこそ、スーパー耐性菌が生まれている可能性」を意味する。

これを食い止めるには、人々が自分たちの食肉消費の習慣を変えるしかなく、それがない限り問題は悪化するのみだと思われる。

現実的に、耐性菌の増大は人類の存亡に関わることでもある。具体的には「 MCR -1 」と呼ばれる遺伝子が大きな脅威だ。この遺伝子は、多くの医師たちが「最終救世主としての抗生物質」と見なすコリスチンに対する耐性を高めるのだ。

言い換えれば、医者たちは他のすべての抗生物質が無効だった場合にこのコリスチンを使用する。ところが、中国では、病院の患者の 25パーセントがこの遺伝子 MCR -1 を持っていたのだ。25パーセントという数字は冗談ではない。

この最後の手段が人類に効かなくなれば、この世には使える抗生物質がなくなるということになる。科学者たちは、これは現代人類が直面する最大の危険の一つだと述べてもいる。

英国医療研究評議会の感染症部局の局長ジョナサン・ピアース(Jonathan Pearce)氏は、「多くの手術や関節置換、帝王切開、化学療法もまた抗生物質に依存しており、それらが危険にさらされています」と述べている。

私たちは、あまりにも多くの人たちが医療へのアクセスなしで生きられないような時代に生きているが、これからは、一時的な緊急処置としての医療ではなく、自分たちの体を自分でケアしていくよう、予防的な医療に集中していく必要があるようにも思える。

スーパー耐性菌の拡大が現在も継続しているのなら、次第に医療は効果的なものではなくなり、私たちは予防的なヘルスケアしかとれなくなる。