http://blogos.com/article/229782/より転載
- 2017年06月20日 08:25
官邸は追い詰められている!「証人喚問」で加計疑惑を解明すべきだ~田原総一朗インタビー
文科省の内部文書に記された「総理のご意向」
加計学園の獣医学部新設をめぐっては、文科省の官僚が作成したとされる文書がいくつも報じられている。その文書には、内閣府が文科省に対して「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」といった発言をしたと記されていた。これを官邸は怪文書といって切り捨ててきた。しかし現役の官僚がいろんなメディアで文書の存在を認めている。菅官房長官の記者会見では、この問題で記者が菅長官を徹底的に追い詰めるシーンもあった。文科省が再調査したり、内閣府が調査に踏み切ったりした背景には、これらの追及があるのだろう。
文科省の文書の内容は次のようなものだ。まず、「官邸の最高レベル」という言葉が登場するのは、昨年9月下旬に行われた内閣府と文科省の協議の模様をまとめたメモである。文書の題名は「獣医学部新設に係る内閣府からの伝達事項」となっていて、冒頭にこう書かれている。
「平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。成田市ほど時間はかけられない。これは官邸の最高レベルが言っていること」
次に、「総理のご意向」という言葉は、昨年10月に作成されたとされる「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」という文書に出てくる。そこには、こんな言葉が並ぶ。
「設置の時期については、今治市の区域指定時より『最短距離で規制改革』を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理のご意向だと聞いている」
こういった文書は、文科省の官僚たちが相手方と話した内容を即座にメモし、上司への説明用にA4用紙1枚に要点をまとめたものだ。
この問題について、文科省の松野大臣は当初「存在を確認できない」と発言していいた(再調査の結果、存在を認めることになったが)。
松野大臣の記者会見について、この問題を告発した前川喜平・前事務次官は、文藝春秋7月号の手記でこう書いている。
「文書に関して『存在を確認できない』と発表した文科省の会見を見ていても、松野大臣と文科省のみんなが気の毒でなりませんでした。あの文書は、私が担当者らから報告を受けた際に受け取った資料の中にあるものと同一ですから、普通に探せばすぐに見つかるはずです。それを大臣が『確認できなかった』と言わされている。後輩たちも嘘をつかされている。天下り問題で国民からの信用が失墜したのは天下り斡旋の事実そのものはもとより、それを口裏合わせで糊塗しようとした隠蔽工作にあったはずです。にもかかわらず、再び隠蔽工作に加担させられている」
このような文科省の隠蔽工作に我慢ならなかったのが、前川氏の告発の動機というわけだ。
「総理が自分の口から言えないから、私が代わって言うんだ」
今回、文科省が再調査を行い、内閣府も調査結果を発表した。しかし、それはあくまでも、それぞれの省府自身による調査だ。本来は第三者を入れた調査をすべきだが、そこまではできていない。
6月12日にNHKが公表した世論調査では、加計学園の問題に関する政府の説明について「大いに納得できる」は3%しかなく、「ある程度納得できる」も22%にとどまった。逆に、「あまり納得できない」は33%、「まったく納得できない」は32%と、不信感を示した人が6割を超えている。
文科省の再調査や内閣府の調査を受けても、国民の不信感は払拭できないのではないか。
前川氏の手記の中で目を引いたのは、安倍政権の内閣官房参与を務めた経験もある木曽功氏(元文科省官僚)が、昨年8月下旬に前川氏の事務次官室をたずねてきたときの話だ。木曽氏は前川氏の「3期上の先輩」で、現在は加計学園が経営する千葉科学大学の学長を務めている。
・千葉商科大学ホームページ→http://www.cis.ac.jp/information/outline/
木曽氏は文科省の事務次官室で、前川氏に「国家戦略特区制度を利用して、愛媛の今治に獣医学部を新設する話、早く進めてくれ」と要請したという。その際、「文部科学省は国家戦略特区諮問会議が決定したことに従えばよい」と言ったのだそうだ。
その後、9月上旬になって、前川氏は和泉洋人総理補佐官に呼ばれ、官邸で面談することになったという。そのときの様子について、こう記している。
「官邸四階の補佐官室に入ると、和泉補佐官が一人で待っていました。そして、『国家戦略特区での獣医学部設置の話だが、文部科学省の対応を早く進めてほしい』と言われたのです。つい十日ほど前にも木曽さんから同様の要請がありましたから、『またその話か』と思いながらも耳を傾けました。すると和泉補佐官が続けてこう言いました。その台詞は今も耳にこびりついています。
『これは、総理が自分の口から言えないから、私が代わって言うんだ』
和泉補佐官は、はっきりとそうおっしゃったのです」
この和泉補佐官の発言が本当だとすれば、大変なことだ。
前川前事務次官を証人喚問すべきだ
前川氏は、国会の証人喚問に呼ばれたら出てもいいと言っている。しかし、自民党は証人喚問を否定している。「前川氏はいまは民間人だから、喚問する必要がない」と。だが、少し前に民間人である籠池氏を証人喚問している。前川氏の場合に限り、「民間人だから喚問しない」というのは、おかしいのではないか。
先週土曜に放送されたBS朝日の番組『激論!クロスファイア』で、僕は自民党の二階幹事長に対して、この問題について質問した。僕は二階幹事長に「前川前事務次官がこう言っているが、事実がどうか確かめるために、証人喚問したほうがいいのではないか」と聞いた。
すると、二階幹事長は「証人喚問がいいかどうかは別だが、それに匹敵する形でしっかり問いただすべきだという議論が国会にある。前向きにやったほうがいい」と答えた。自民党の幹事長がこう発言しているのだから、やはり証人喚問をするべきだろう。
この加計学園の問題で、官邸はかなり苦しい状況に陥っている。菅官房長官が記者会見で前川氏の個人攻撃をしたときもあったが、そんな個人攻撃をしなければいけないほど、追い詰められているとみることができる。
国民の疑問は相当に大きい。安倍首相がどう判断するか。一つの正念場だと思う。