異教の地「日本」 ~二つの愛する”J”のために!

言論宗教の自由が保障され、ひとりひとりの人権が尊ばれ、共に生きることを喜ぶ、愛すべき日本の地であることを願う。

財務事務次官のセクハラ疑惑 あきれた政府の人権感覚 2018.4.23 毎日新聞

2018-04-24 14:37:08 | いじめ セクハラ ヘイト 差別

「女性活躍」を掲げながら、この国の政府の人権感覚は一体どうなっているのか。辞任表明した福田淳一・財務事務次官のセクハラ疑惑。公文書改ざんで指弾を受けている最中の倫理観の欠けた対応や発言に、女性の権利問題の専門家らも怒りをあらわにしている。【井田純】

「公正中立な第三者が調査」常識

 週刊新潮の報道が発端となったこの疑惑。「加害者」側の財務省は16日、被害者側に、同省の顧問弁護士に名乗り出るよう求めた。

 「長年セクハラ問題に取り組んでいますが、こういう発想には初めてお目にかかりました。日本の高級官僚は、こんなにも女性の人権と無縁なのか、と改めて驚いています」。こう話すのは、1989年に福岡地裁に提訴した全国初のセクハラ訴訟で、原告女性の代理人を務めた角田由紀子弁護士。財務省の調査手法に異議を唱える声明をネット上に公開し、署名活動を始めた弁護士有志の一人でもある。「公正中立な第三者が調査を行うのはハラスメント対応の常識です」と角田さん。

 それにもかかわらず、麻生太郎財務相は「知らない弁護士には頼めない」。同省の矢野康治官房長も18日、衆院財務金融委員会で「被害者が弁護士に名乗り出ることがそんなに苦痛なのか」と答弁した。この人物が、次官の職務を代行するという。絶句、ではないか。その後、テレビ朝日が自社の記者が被害者だったと明らかにする異例の展開となった。

 公務員のセクハラ防止規定は、99年4月施行の「人事院規則10-10」に定められ、各省庁の長にセクハラの防止、排除はもちろん、問題が起きた場合に「必要な措置を迅速かつ適切」に取るよう責務を課す。また、運用規則には「国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行などに該当」するセクハラは懲戒処分の対象になりうると明記している。「麻生さんや福田さんは、一度でもこれを読んだことがあるのでしょうか」と角田さん。

 今回、角田さんはセクハラ訴訟を起こした89年当時のテレビ報道を思い出したという。「東京・新橋の街頭でマイクを向けられて『会社で女の子の尻にも触れなかったらどうすりゃいいんだ』『職場がぎくしゃくしますよ』と言う中年男性が何人もいたんです」。今では隔世の感があるが、福田氏は辞任会見で「(セクハラと指摘された)『言葉遊び』のところが結構、ご批判を受けているのは、なるほど、今の時代ってのはそういう感じなのかなとは思いました」と時折笑みを浮かべながら話した。財務省の時計は前世紀で止まっているらしい。

 学校法人「森友学園」をめぐる公文書改ざん問題に続く、財務省のセクハラ醜聞。海外でも大きく伝えられた。問題発覚時から報道を続ける朝鮮日報の金秀〓(キムスヘ)東京特派員は「あんな下品な発言が今出てきたのには驚きました」と話す。

 金さんが入社した97年当時の韓国では、同種のセクハラが横行していたという。「日本よりも多かったと思う。セクハラ官僚にはパラダイスだったかも。でも韓国は変化のスピードが速いので、今なら社会的に終わり、だと思います」

 実は、金さん自身が取材現場でセクハラ被害を受け、それを自ら報じた経験がある。入社から5年ほどたったころ、ある省庁ナンバー3の審議官を囲み、20人以上の記者が参加した飲み会の席だった。このうち、女性は金さんを含め2人だけ。「当時その省のトップは女性でした。審議官はその場にいない彼女の性的な魅力について、露骨な表現で話し始めたんです。次に私に対して、性的なニュアンスで『おいしくなさそう』と言ってきたのです」

 金さんは決然とその場を離れ、社に戻って一連の発言を原稿にした。記事自体は小さい扱いだったが、この審議官は辞職を余儀なくされた。「その後、私の写真がネットなどで出回り、中傷も受けました。でも『この審議官は部下にも同じように接していたかもしれない』と報道を擁護する声もあり、議論が広がりました」

 金さんは「この時も、省のトップがセクハラの対象でなければ記事にならなかったかも」と振り返り、今回の財務省のケースについて「自分を守るために会話を録音するのは当然のこと。自社で報道できずに週刊誌に相談したのも理解できます。被害者がセクハラを証明するのは難しい。こうした対処をしなければ、レイプ被害で『本気で抵抗していなかった女性も悪い』と非難されるのと同様の2次被害も考えられますから」と話す。

声上げにくい日本社会

 日本でセクハラ疑惑が報じられる中、米報道界最高の栄誉とされるピュリツァー賞が発表され、ハリウッドの大物プロデューサーのセクハラ疑惑を報道したニューヨーク・タイムズ紙とニューヨーカー誌が受賞した。これらの報道がきっかけで世界に広まった「#MeToo」運動と今回の問題を比較し、日本では「街頭で抗議した女性たちのように堂々とすべきだ」と被害者を攻撃する声がある。

 これについて、若尾典子・佛教大教授(憲法・ジェンダー研究)は「そもそも『#MeToo』運動についての見方が間違っている」と指摘する。「米国では70年代から裁判でセクハラに対する闘いを続け、80年代になって女性側が勝利し、法理が確立されました。フェミニズム文化も根付いていて、女優の政治的発言も多い。その米国にして、このような運動の形をとらなければ声が出せなかった。仕事に関わるセクハラ被害者はそれほど声を上げにくい、ということを改めて示したのです」

 まして日本社会。しかも政官界となれば「ジェンダーギャップは大きく、女性の立場はきわめて弱いはず」と若尾さん。今回のセクハラ疑惑を、一女性記者と一官僚の個人的な問題にしてはならない、と強調する。「政策についての重要な情報を持っている人物のところに記者が取材に行くのは男女とも同じ。ところが、女性だけがこういう人格侵害を受ける。権力を握る側がその地位を利用して、相手をおとしめているのです。森友学園問題と同様に、公務員を全体の奉仕者と定めた憲法に違反する深刻な事態です」

 セクハラ問題が起きれば、企業でも学校でも、訴えた側の意向に沿った対応を行う責任が生じる、と若尾さん。「一番つらい思いをした人の気持ちを考え、そこから職場や学校のあり方を問い直し、変えていく。今回被害に遭った方はきっと仕事を失う可能性も考えたことでしょう。政治や役所の世界はもちろん、メディアもその対応を問い直すべきです」

 前出の角田さんも言う。「部下の女性が取材先でセクハラに遭った場合、『でれでれしていたんだろう』『その程度のことで泣いてくるんじゃない』と言うようなケースもあると聞きます。個々の社の枠を超えて、ジャーナリズム全体が取り組むべきだと思います」

 

***********************************::

画像に含まれている可能性があるもの:1人、スーツ、テキスト

画像に含まれている可能性があるもの:2人、、スマイル、テキスト

 

【関連記事】

国会でも#MeToo 野党議員、セクハラ疑惑に抗議:朝日新聞デジタル

 - 財務省の福田淳一事務次官のセクハラ発言問題を巡り、野党議員が20日午前、国会内の会合で「#Me Too」と書かれた紙を掲げ、そろって抗議の意思を示した。

全文表示 | Me Too女性議員に「セクハラとは縁遠い方々」 批判殺到した ...

 - 私は皆さんに、絶対セクハラは致しませんことを、宣言致します!」 20日午前、国会内では野党の女性議員が中心となって抗議集会を行った。議員たちは米国発のセクハラ告発運動にならって「#Me Too」と書かれた紙を掲げ、女性議員は黒い服に身を包んで参加した。 すると同日夜、長尾氏はその集会の様子をおさめた写真とともにこんなコメントをツイートしたのだ。 「セクハラはあってはなりません。こちらの方々は、少なくとも私にとって、セクハラとは縁遠い方々です。私は皆さんに、絶対セクハラは ...

 

 

 

 


最新の画像もっと見る