まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

味わい合いたい男たち

2024-03-24 | フランス、ベルギー映画
 「趣味の問題」
 レストランで働くニコラは、美食家で有名な実業家フレデリックにスカウトされ、破格の報酬で彼専属の味見係となる。フレデリックは料理だけでなく、味覚やファッションのセンスまでもニコラが自分と同じになるよう仕向け、要求はしだいにエスカレートしていく。ニコラは戸惑いながらも、フレデリックとの危険なゲームにのめり込み…

 このフランス映画、すごく好きなんです。エレガントな変態映画というか。金持ちの熟年と若いイケメンが主役という設定からしてソソられますが、二人が繰り広げるイビツな主従関係、愛憎が異常でスリリング。性的な関係にはならないけど、どんな手段を使ってでもすべてを共有、果ては同化しようとする男ふたりの言動は、じゅうぶんに濃密で耽美的な同性愛のぬめりが。フレデリックとニコラ、人生と命を賭けて二人だけのゲームにのめり込んでいくのですが、何やってんの?!はあ?ウソやろ?!と、目がテンもしくはドン引きするようなことばかり大真面目にするのでプっと吹いちゃう、これってコメディなのかなと思えるほど笑える、私にとってはそんな珍作です。

 フレデリックのニコラとの同化作戦が、かなり手が込んでて怖い、けど笑えます。自分と同じ味覚にするために過酷なダイエットをニコラに強要し、腹をすかせたニコラに彼の大好物だけど自分の嫌いなカキを病気になるほど食わせ、もうカキを見るのもイヤにしてしまうとか。ニコラに抱かせた女を自分も抱いたりとか。はじめは困惑したり怒ったりしてたニコラも、だんだん異常さにハマっていってしまい、フレデリックが足を骨折すると自分も…みたいな行為に走った挙句、おいおい~(笑)な末路に。攻めのフレデリックと受けのニコラ、どっちも負けず劣らずな変態。出会った瞬間ニコラにロックオンしたフレデリック、同じ変態のにおいを嗅ぎつけたのでしょうか。甘美で危険な変態ゲームを心ゆくまで味わい尽くして破滅した二人は、ある意味幸せ者だったと言えるのではないでしょうか。親密だけど対等ではない関係も、二人の心理戦を面白くしていました。

 ニコラ役は、名作「トリコロール 赤の愛」で私のイケメンレーダーをビビビとさせたジャン・ピエール・ロリ。この作品でもイケメン!端正で優しいマスク、知的で品がある雰囲気が好き。貧乏な若者が贅沢な生活とブルジョアの退廃に磨かれ毒されていく過程を、まるでマイフェアレディの青年版のように魅力的に演じてます。高級スーツの着こなしに惚れ惚れ!あてがわれた女とのセックスシーンでは、全裸も披露してます。フレデリック役は、オゾン監督の「焼け石に水」やルコント監督の「リディキュール」など、フランス映画ファンにはおなじみのおじさま俳優だった故ベルナール・ジロドー。この作品でもねっとりと倦んでて隠微、イカレてるけどエレガント、どこかシレっとした感でクスっと笑わせてもくれる好演。フレデリックの大富豪っぷりも、韓国の財閥とかと違って優雅で洗練されています。
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音楽騎士♬

2024-03-18 | 北米映画22~
 朝晩はまだ寒いけど、日中はだいぶ春めいてきましたね(^^♪マイリトルガーデンにも春の兆しが。ぼちぼちと花が咲き始めてます。




 ラケナリアもボケも例年以上にきれいに咲いてくれました。トリカブトも芽を出してくれました。ロマネスコもやっと収穫。サラダやシチューにして食べます🥦植えっぱなしの球根や宿根草、花木が無事に寒い冬を越えて春に元気な姿を見せてくれると、何だかホッとします。春は心身ともに憂い季節ですが、草花に負けないよう元気に過ごしたいと存じます。


 「シュヴァリエ」
 18世紀のフランス。貴族と奴隷の黒人女性との間に生まれたジョゼフは、類まれな音楽の才能を父に認められパリの寄宿舎で学び、やがて王妃マリー・アントワネットの信寵を得て爵位を授かるまでに。オペラ座の指揮官の座を賭けた舞台の主役に、美声の若い人妻マリー・ジョゼフィーヌを抜擢したジョゼフは、彼女と恋に落ちるが…

 黒人俳優の中で今いちばん好きなケルヴィン・ハリソン・ジュニアが、実在したフランスの音楽家役を演じた歴史劇。「シラノ」に続くコスチュームプレイですね。シラノもシュヴァリエもフランス人の話ですが。ケルヴィンくん、見た目も雰囲気もすごく現代的なアメリカンなので、18世紀のフランス人には見えないのだけれども、イケメンなのでノープロブレム何をしても許される尊い存在、それが若いイケメンという生物。この映画でもケルヴィンくん、若さでピッチピチ&キラキラどう若作りしても元気でもおじさん俳優にはない、出せない瑞々しざと輝きがあります。

 とにかくこの映画、ケルヴィンくんのプロモーション映画かと思うほど、ケルヴィンくんがカッコいい、可愛い!ヴァイオリンやピアノをダイナミックに流麗に弾きこなし、フェンシングはダンスのごとく美しく敏捷な動き、道ならぬ恋に燃えて破れてロマンチックに切なく、もちろんラブシーンでは肉体美も披露。ファンには嬉しい映画ですが、まるでアイドル映画みたいな無難な内容、演技なので物足りなさも。花も実もある俳優なので、若いイケメンなら誰でもできるような役は、ケルヴィンくんにはもったいないかな、とも思いました。時どき顔がすごくあどけなく見えるケルヴィンくん、意外と小柄?落ち着いた賢い少年っぽいところも魅力的。

 ジョゼフがすごく善人キャラだったのも、何だか面白みに欠けていました。味わった苦労や屈辱、黒人という立場上、もっと複雑で挑発的、屈折した人格になりそうだけど。黒人を虐げ軽んじる白人がとことん愚かで、差別や不公平に耐える悲しく誇り高い黒人、という設定や描写もスレテオタイプ。それにしても。ケルヴィンくんみたいな美しく聡明な黒人より、どうしてあんたのほうが上だと思えるの?な凡庸な見た目と低能人間的言動の差別主義白人さん、ほんと多いですよね~。

 話が軽くて薄いのと、時代劇といえばの衣装やセットも現代人のコスプレ劇っぽいのとで、残念なほど重厚さとかスケールに欠けていました。キャストのショボさのせいでもあるかも。ケルヴィンくん以外は、ほとんど誰?な人ばかり。マリー・アントワネットもジョゼフィーヌも、軽薄で打算的なバカ女で魅力なし。革命に身を投じるジョゼフですが、そこに至るまでの道のりがもっと険しく悲劇的だったら共感できたのに。バカ女どもにバカにされた腹いせ、みたいな感じだったのがトホホ。
 
 
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もう会えないディスタンス

2024-03-14 | 中国・台湾・香港映画
 「再見、在也不見」
 3つの物語から成るオムニバス映画。
 「背影」中国の広西州に仕事で来た陳は、自分と母親を捨てて失踪した父を発見する。ひそかに父を観察し続ける陳だったが…
 「湖畔」音信不通だった幼なじみから手紙を受け取る陳。友人は死刑囚としてシンガポールの刑務所で刑の執行を待つ身だった…
 「再見」大学教授の陳は、講演のためタイを訪れる。そこにはかつての恩師で恋人だった女性がいて…

 日本でも活動していた台湾の俳優チェン・ボーリン主演作。久々に見たチェン・ボーリン、「藍色夏恋」の可愛いイケメンも、すっかり色気のある大人の男に。繊細で愁いのある演技も魅力的で、いい男いい俳優になりましたね~。映画そのものよりも、チェン・ボーリンの成熟に感銘を受けました。とはいえまだ若く(この映画の時は33歳)おっさん臭は全然ありません。父親役、大学教授役にはまだ不似合いなほど青年っぽいです。三つの物語それぞれで、大人になっても遠い昔の悲しみや喪失感を引きずっている男をボーリンくんの、少年の蒼い残滓が滲む表情や風情が切なかったです。

 でもほんとボーリンくん、いい男になりましたね~。薄口な韓流俳優と比べると、華流俳優はいい感じに濃くて香ばしい。ほっそりした長身も、若い頃より肉付きがよくなって色気が増した。口元が何かエロいです。シャワーシーンでちょっとだけ脱いでましたが、ちょっとユルめの裸もバキバキ筋肉より自然でよかったです。一般人とは異なる華がルックスにも雰囲気にあって、それが地味で暗い物語の救いにもなってました。

 3つの物語にはつながりはなく、主人公の陳は台湾人で同姓同名の別人。中国、シンガポール、タイの監督がそれぞれの母国を舞台に、親子、友人、男女の、離ればなれになった愛の終わりを、チェン・ボーリンに一人三役をさせて哀切に描く、という趣向になってます。もう二度と元には戻れない、もう会うこともない、という喪失と後悔の悲しく甘い痛み。美しいテーマですが、冷血人間の私の心にはあまり響かないんですよね~誰とも深く関わらない、終わった人間関係に執着しない、後ろは振り向かない(ていうか、今がいっぱいいっぱいなので振り返る余裕がない)、独りでいい、今を大事にしたい、というドライな性格なので、過去や他人に囚われすぎる人って大変だなと思ってしまいます。でも、そういう悲しみや苦しみこそが人生を豊かにもしてるのかな、と羨ましくもなります。

 三つのエピソードの中では、シンガポール編の「湖畔」が好きです。かなりBLっぽかったので。監督はゲイなのかな。そう思わせる感性が演出や場面にありました。少年時代の陳と幼なじみが親密すぎて村の噂になり、陳の父親が二人を引き裂こうとするのですが、二人は湖のほとりで会わずにはいられない。性的な関係ではないのですが、全裸で一緒に泳いだりじゃれ合ったり、どちらかがあと一歩踏み出せば肉体的にも恋人になる、でも踏みとどまってる二人がもどかしくも痛ましい。大人になって再会した二人の限られた時間と言葉少ない会話には、友人ではなく恋人同士の想いであふれているようでした。それにしても。異国で死刑囚になるとか、最悪の転落だわ。いったい何したんだよ。死刑囚になった友人役は、懐かしの台湾BL映画「僕の恋、彼の秘密」のトニー・ヤンと知り驚きました。彼もずいぶん見ないうちに大人の男になりましたね~。私も年を取るわけだわ

 ↑ 今年で41歳になるチェン・ボーリン、大人っぽくなったけどまだまだ可愛いですね~
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春きぬと人はいへども

2024-03-12 | 映画雑記
 遅ればせながら。アカデミー賞が発表されましたね!これといったハプニングとか大番狂わせ受賞とかもなく、順当に下馬評通りの結果といった感じでしょうか。今年も授賞式は観られなかったので、帰宅して主な部門の受賞シーンだけ、youtubeでチェックしました。
 スターたちの華かやで個性的なファッションも楽しみのひとつですが、何だろう、男優も女優もみんな例年になくカジュアルな感じなってたような。ノータイの男優が多かった。ロバート・ダウニー・ジュニアとかライアン・ゴスリングとか、お水っぽくてベテランホストみたいだった。フォーマルなタキシードでビシっとキメてるスターが好きなので、ちょっと残念でした。女優もお葬式、お通夜っぽい黒ドレスが多かったような。

 ↑ ブラパはもちろんママ同伴。レオナルド・ディカプリオ&レオママも見たかった。
 ブラパは今年もオスカー受賞できなかったけど、間を置かずコンスタントに候補になってスゴいと思う。受賞してもあの人は今になる俳優、いっぱいいるもんね。1回だけ受賞してそれっきりお呼びがかからなくなるよりも、受賞せずとも何度もノミネートを重ねるほうが偉業だと思います。

 話題作「オッペンハイマー」のロバート・ダウニー・ジュニアも順当に受賞。アイアンマンとオスカーでハリウッドの栄華を極めた感がるダウニー・ジュニア氏ですが、まったく重々しさがなくチャラいのもご愛敬。アイアンマンVSハルクの助演男優賞、敗れたマーク・ラファロもまたすぐにノミネートされて、いつか必ず受賞するでしょう。


 衣装賞のプレゼンター、ジョン・シナが日本の某お笑い芸人風の姿で登場。アソコはお盆ではなく封筒で隠して。アメリカでは超セレブスターだというジョン・シナが、よく引き受けたな~。でもああいう悪ノリって笑えんわ~。すごく安っぽく感じた。ライアン・ゴスリングも大物スターなのに、ノリがいい人ですよね~。まるでNHKの紅白のようなステージでした。
 主演女優賞は、若くして2度目の栄冠となったエマ・ストーン。納得の受賞。「ラ・ラ・ランド」で獲れて、あの驚愕驚嘆の怪演「哀れなるものたち」で獲れないとかありえんし。それはそうと。気のせいだと思いたいけど、エマ石はミシェル・ヨーに、ロバート・ダウニー・ジュニアはキー・ホイ・クアンに、二人とも東洋人のプレゼンターは無視するような態度だった…?見て気になった人、多いのでは。まあ、お二人ともアメリカではフツーにいるアジア人嫌いの白人さんなんでしょうね。残念。世界中の人が見てる中、それをおおっぴらにするのが偽善的じゃないというか、自分を貫いていていろんな意味でスゴいとは思います。エマ石よりもジェニファー・ローレンスのほうが何か感じ悪かったけど。感じ悪い女王ローレンスが良い例ですが、いい俳優=いい人、ではないんですよね。



 今いちばん観たい映画「落下の解剖学」は、フランス映画ながら脚本賞を受賞。主演女優賞候補だったザンドラ・ヒュラー、おもしろい形のドレス着てましたね~。客席で隣の人とか大丈夫だったのかな。スワン・アルローもいたのが嬉しかった。ヨーロッパの人気スターをオスカーの授賞式で見るのって、貴重かつ新鮮で好きです。外国語映画賞を受賞した「関心領域」も早く観たい!こっちにもザンドラ・ヒュラーが出てますね。
 クリストファー・ノーラン監督の監督賞受賞も、めでたいかぎり。ご本人もファンも、やっと獲れてホっとしたって感じでしょうか。キリアン・マーフィーも、ポール・ジアマッティとの接戦を制して受賞。知る人ぞ知るアイルランドの若手個性派だったキリアンも、ついにオスカー俳優に。


 セレモニーのクライマックス、作品賞のプレゼンターは…どこの酔っ払い爺さん?またはちょっと認知入ってる高齢者?かと思ったら、アル・パチーノでした。何かやらかしそうな臭いぷんぷん。あの伝説のララランド誤発表事件のようなことが、今年も起きるのでは?アルパチ爺さん、わざとなのかほんとにボケてたのか、作品賞候補の紹介もthe oscar goes to もすっ飛ばして、独りごとのようなおかしな発表をするから、会場は困惑でザワつく。いつものワーっと歓喜の一瞬!がなくて、グダグダなラストになってしまったような。去年のラストのハリソン・フォード爺さんも、ヨボヨボで危なっかしかったし。最近はトリを高齢のベテランにさせるのが慣例になってるようですが。ララランド事件の教訓は活かされてませんね。

 あらためて、今年の主な受賞は…
 
 作品賞 「オッペンハイマー」
 監督賞 クリストファー・ノーラン
 主演男優賞 キリアン・マーフィー
 主演女優賞 エマ・ストーン
 助演男優賞 ロバート・ダウニー・ジュニア
 助演女優賞 ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ
 国際長編映画賞(外国語映画賞) 「関心領域」

 今年も無事にアカデミー賞を見届けることができました。これが最後かも…毎年そう思いつつ、気づいたらオスカーの季節に。一年があっという間に感じられるのは、やはり年を取った証でしょうか。こんな調子で、すぐGWすぐ夏休み、すぐ年末…エンドレスループみたいで怖いです

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奇々怪々人間ベラの冒険

2024-03-03 | イギリス、アイルランド映画
 「哀れなるものたち」
 ヴィクトリア朝時代のロンドン。天才的な科学者デクスター博士は、自殺した女性の脳を彼女が身ごもっていた胎児のものと取り換え、赤ん坊の心で蘇生した女性をベラと名付け養育する。幼児から少女へと精神が成長したベラは、屋敷から出られないことに反発と不満を募らせ、弁護士のダンカンの誘惑に乗って彼と共にリスボンへと出奔するが…
 独特すぎる作風が一度ハマるとクセになる、ギリシアの鬼才ヨルゴス・ランティモス監督の新作を、ようやく観に行くことができました(^^♪前作「女王陛下のお気に入り」も強烈でしたが、この最新作はさらにスケールアップ、パワーアップしていて、まさに驚異とインパクトのカオス状態でした。内容も演出も演技も、すべてが文字通りぶっとんでます。まさにクレイジーファンタジー。ポリコレ、コンプラ時代の今、よくこんな映画作れたな~と感嘆あるのみな、下ネタ満載のエログロ映画でした。清く正しい紳士淑女は観ないほうがいいかもしれません。私はこういう映画、大好き!めっちゃくちゃ面白かったです!

 ヒロインの自分探し、成長の物語ってありふれたテーマですが、この映画は前代未聞なほどに斬新で特異。ありえないほどの怪奇な方法で爆誕したベラは、まさにニュータイプのヒロイン。ベラの冒険が、めくるめくような華美さとグロテスクさ、そして大胆不敵な愉快痛快さで描かれています。ベラの固定観念とか常識、モラルにとらわれない自由さ、勇敢さに圧倒され唖然ボー然となりつつ、これこそ女性の理想の生き方なのではと憧れも。恐れ知らずの行動力、実践力で世界を知り自我に目覚めるベラですが、性への探求心の貪欲さにはただもう畏怖、そして爆笑!ダンカンとヤリまくるだけでは満足できず、パリで娼婦になっていろんな男ともヤリまくり、その過程で考察を深めていくベラのトンデモ社会勉強が笑えました。男性優位な社会の矛盾や理不尽さ、女性の自立や自由も、ストレートに大真面目に描くのはもう廃れた手法で、「バービー」やベラみたいな異形のヒロインが非現実的な世界で目覚めて行動する、という描き方がトレンドになってるんですね。

 この映画、何といってもベラ役のエマ・ストーンですよ。いったいどうしちゃったの?!と仰天する怪演、そして脱ぎっぷりヤリっぷり。ハリウッドの今をときめくトップ女優のエマ石が、おっぱいもヘアも丸出しであられもなく下品に卑猥に、そしてあっけらかんと痴態を繰り広げてるんです。すごいわエマ石。彼女ほどの人気女優になったら、フツーは守りに入って無難な仕事しかしなくなるはずなのに。オスカーを受賞した「ラ・ラ・ランド」なんか比ではない女優魂の炸裂ぶり。その攻めまくった演技、あっぱれの一言です。ドギツいコメディ演技なところもまた非凡。日本の同世代女優には絶対不可能な、ウルトラC級の激烈演技でした。ギョロ目と大きな口という漫画顔も、怪奇映画のヒロインにぴったり。今年のアカデミー主演女優賞、「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」のリリー・グラッドストーンとの一騎打ちみたいですが、リリグラ石の演技が真珠なら、エマ石のは誰も行ったことがない惑星の石、みたいな。

 ダンカン役は、大好きなマーク・ラファロ。彼の珍演もなかなかのものでした。うさん臭いヤリチン色魔役なんて、マークもよく引き受けたな~。でもそんな役でも実力と魅力を発揮し、卓越した俳優であることを証明してるマークです。マークも毛むくじゃらな全裸をさらしてヤリまくってます。ベラを弄ぶつもりが逆に骨抜きにされ、いい男風だったのが身も心もボロボロになっていく姿が滑稽。あのメンタル崩壊っぷり、オスカーの助演男優賞候補も納得の珍妙さでした。笑えるシーンいっぱいあるのですが、特に笑えたのはダンスホールでベラと踊るシーン。変なダンス!女王陛下のお気に入りでも、変ダンスありましたね。

 モンスターな風貌と悲しい父性愛のデクスター博士役、ウィレム・デフォーもオスカー候補になるべきだった名演と存在感。博士が語る、父親に人体実験のモルモットにされた幼少期のエピソードが、非道すぎてホラーでした。豪華客船でベラが仲良くなる老婦人役で、ドイツの名女優ハンナ・シグラが登場して驚きました。博士の屋敷にいるアヒル犬がファニーなヤバさ。

 トンデモな話や演技だけでなく、映像と美術、衣装も独創的で目に楽しいです。ロンドンやリスボン、パリが舞台になってるけど、ほとんど架空の世界のような、妖しい近未来っぽい風景がシュールです。体力気力がある時に、また観たい映画です。それはそうと。脳みそを取り換えるという設定は、楳図かずお先生の名作怪奇漫画「洗礼」を思い出させました。

 ↑ まずありえないけど、続編作ってほしい(笑)

コメント (2)
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