ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

リセットしてカネの話

2017-10-17 07:56:51 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「今までの積み重ね」10月12日
 『安倍改憲 狙いは変転 9条か 他のテーマか』という表題の記事が掲載されました。総選挙後の改憲論議の行方について書かれた記事です。記事は、『衆院選後は改憲論議の加速も予想される。選挙結果次第では9条論議がリセットされ、希望の党などが主張するテーマに論点が写る可能性もある』という言葉で結ばれていました。
 リセットは、希望の党代表小池百合子氏の常用語です。小池氏は、前向きな改革イメージでこの言葉を使われることが多いようですが、怪しい言葉だという気がします。タカ派の小池氏は、9条改正論者でしたし、日本の核武装さえ肯定したことがある人物です。そして、我が国における改憲論議は、常に9条問題が最大の焦点となってきた歴史があります。9条について、60年以上に及び、多くの政治家や学者が議論を積み重ねてきたのですが、リセットという言葉には、その議論の積み重ねを無視、あるいは放棄してしまうというニュアンスがあります。それも、それまでの議論を評価した結果ではなく、政治的思惑や他の問題との取引の結果であるとしか思われない点が、いかがわしいのです。
 私は学校教育改革に纏わる議論においても、このリセット的な動きが見られるような気がしています。我が国では、戦後70年間、学校教育について様々な議論が交わされてきました。教員は聖職か労働者か、系統主義か経験主義か、躾を担うのは家庭か学校か、教育内容を決めるのは誰か、何が教育への政治介入か、思想信条の自由と国旗国歌問題、などなどです。
 それぞれの問題が他の問題とも関係があり、複雑な議論はがんじがらめのまま停滞し、世間の注目を集める「事件」があると、休火山が眠りから覚め噴火するように議論が巻き起こり、また沈静化するという繰り返しでした。
 私自身、そうした状況に嫌気が差すこともありました。世間も同じようで、先に挙げたような議論は流行らなくなり、現在では学校教育について話題になるのは、教員定数や多忙化の解消、産業界が求める人材育成に結びつく新たな「○○教育」の導入など、大切ではありますが、根本が曖昧なまま枝葉を弄るという観があります。これもリセット的発想の一つです。
 しかし、憲法論議同様、学校教育論議においても安易なリセットは、過去の、先人たちの議論の積み重ねという財産を放棄することになってしまうような気がします。今回の衆院選においても、教育の話題は給付型奨学金、幼児教育無償化などカネの話ばかりです。これでよいのでしょうか。

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