Moments' Notice/Charlie Rouse | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 このニカッと笑った不敵な笑顔のジャケットが素敵だ。Tenor Sax奏者Charlie RouseといえばThelonious Monkと反射的に出てしまうのは無理のないことかもしれない。そして、そのことはRouseがMonkとやっていたJohn Coltraneという偉大なTenor Sax奏者と絶えず比較されてしまうという宿命を持つことになる。また、孤高の天才Monkと相見えるTenor Sax奏者としてはSonny RollinsやColtraneといった才能あふれるこれまでの共演者に比べて、Rouseは役不足だという評価が出てきてしまうのだ。あるいはMonkのあの唯一無比の個性きわ立つ楽曲を演奏するのには、彼らやStve LacyのようなEdgeの立った演奏者こそが然るべきで、凡庸なTenorを吹くRouseは相応しくないといった意見もあるだろう。しかし、Rouseの個性、ともすれば単調な繰り返しともとれるRouseの淡々としたフレージングや、朴訥として実直なゴリゴリとした音色が生み出す一種の泥くささは、あの時代のMonkが求めたものだとはいえないだろうか。あまりにも先鋭的で強烈な個性を放っていた40~50年代のMonkの音楽性は、60年代には解放心地良さ普遍性へ向かっていったことと無関係ではないだろう。そして時間軸を狂わせるあの独特の揺らぎはより快感原則に忠実なものへとなっていく。『Monk's Dream』や『Criss-Cross』を聴くたびに、頭で考える音楽から身体で心地良く感じる音楽として自分が対峙していくのが良くわかる。それが良いか悪いかではなく、そこにRouseのTenorが必要であったのだろう。そんなRouseのリーダー作といえば、Rouseの歌心が発揮された60作『Yeah!』やWillie BoboCarlos "Patato" Valdesを迎えた楽しい『Bossa Nova Bacchanal』も好きだが、やっぱり個人的には70年代に出た本作に止めを刺すであろう。

 

 『Moments' Notice』はCharlie Rouse78年にリリースしたアルバム。

ドラムスはRouseとThelonious MonkとのClumbia時代に一緒だったBen Riley、ベースにはSonny RollinsLee MorganHorace SilverDuke Pearsonとやっていた名手Bob Cranshaw、ピアノにはYusef LateefJimmy Forrest、晩年のCharles MingusとやっていたHugh Lawsonといった実力派のRhythm Sectionと組んでRouseが爽快に吹きまくっている。それにしても、このリズム隊はRouseとの相性がバッチリで実に気持ち良さそうにBlowするRouseのTenorが炸裂している。

アルバム1発目は“The Clucker”。Openerに相応しい疾走感溢れるナンバーで、いきなりRouseのTenorも絶好調の冴えをみせる。ピアノのHugh Lawsonの作品。

Rouse作のご機嫌なBluesLet Me”。Relaxして男気溢れる逞しいRouseのTenorが堪能できる。

再びLawson作の“Joobobie”はHard-BoiledなThemeがカッコイイLatinなBeatが気持ち良すぎるナンバー。

Thelonious Monkの“Well You Needn't”では、水を得た魚とばかりにRouseが心おきなく吹きまくる。Lawsonのキレの良いピアノも良し。

Thad Jones作の名曲“A Child Is Born”。こういった旋律の美しいBallad雰囲気たっぷりに吹くRouseはたまらないものがありますな。後半、BalladからRhythmが変わるところでのLawsonの華麗なピアノ・ソロも極上の味わい。そして真打RouseのTenor・ソロが始まり、再びRhythmはBalladに戻り、しっとりと歌い上げる

最後をシメるのはBen Sidranもアルバム『Bop City』で取り上げたRouse作の“Little Sherri”。指パッチンのご機嫌なSwinger

(Hit-C Fiore)