誰も知らない死後の世界③からの続き

 

 

あの世で感情のかたまりのウンコを持ち続けるという罰ゲームとしか思えないシステムに促され、私はこちらでの休息をあきらめ、すぐに生まれ変わることを決めた。

 

この巨大なウンコの感情は、地上生活で、大きな感情を湧き上がらせることで昇華させていくことができるのだという。そのために、私は父親が財産を失い、なぜか酒に溺れるのではなく、ハチミツに溺れて、プーさんというあだ名をつけられ、バカにされるという人生のシナリオを提示された。

 

他に何か別バージョンの人生はないんですか？

 

そうですねぇ・・・、プーさんバージョンが嫌なら、ミッキーバージョンで、家族全員の声がミッキーマウスみたいになってしまうというものもあります。そして、家の表札に誰かから

 

「ミート・ミッキー」と書かれるんですよね？

 

 

その通りです。よくわかりましたね。

皆、ミッキーに会いたくて、休日は９０分待ちぐらいの行列になります。

 

絶対に嫌です。

 

その場合は、家の前に並ばなくても入れる「ファストパス」の機械を設置すればいいんじゃないでしょうか？

 

もっと嫌ですよ。

自宅が「ミート・ミッキー」の家というシチュエーションを認めた上で生きたくはありませんよ。

それならまだ父親がプーさんと呼ばれる方がましです。

 

わかりました、プーさんバージョンでいくということですね。

 

ええ。それがこのウンコを昇華していく上で、一番良い方法なんですよね？

 

そうですね。私も色んな人の人生をコーディネートしてきていますが、ハチミツに溺れるお父さんというのは、初めてですよ。ですから、おそらく次の人生であなたは、多くの屈辱感や劣等感、怒りや悲しみを体験することになるでしょう。

でも、そこでどれだけその感情と向き合い昇華させていけるかが鍵です。感情に振り回されてウンコを大きくして戻って来るのか、できるだけ小さくして戻って来れるのか、すべてはあなた次第です。

 

感情に蓋をしたところで、このウンコからは逃れられないということですか・・・

 

その通りです。嫌な感情が起きた時ほど、見て見ぬふりをするのではなく、その感情と向き合うのです。

 

向き合うというのはどうすればいいのですか？

 

ご存知のように、あなたのウンコは身体のあちこちに隠されています。ですから、そのウンコが昇華されようとするたびに、色んなところであなたのウンコがうずきはじめます。あなたはそのウンコが身体のどこにあるのだろうと感じてみてください。きっと自分のウンコのありかがわかるはずです。あ、こんなところに隠れウンコがあったのか！と。

 

あの・・・ウンコが連発されすぎて、感情の話なのか、ウンコの話なのかがわからなくなりそうなんですが・・・。

 

この際、もうウンコだろうが、感情だろうが、どちらでもいいじゃないですか？

 

そんなわけないでしょう！

 

まずはその身体の中にある感情を感じることからはじめてください。そこからあなたの目覚めのプロセスが始まっていきます。

 

とにかく、嫌な感情ほど向き合えということですね。でも、この世界での記憶は消されるんですよね？

 

ええ。

 

地上世界で、嫌な感情を昇華しにきたことを覚えていられるのでしょうか・・・？

 

皆さん、その心配をされます。
ですから、次の肉体にそれに気付けるような目印をすることをおすすめします。

 

目印？

 

ええ。ズバリこの人生でそれを昇華しに来たんだ！と思い出せるような
マークのようなものですね。まぁ、これはオプション料金になるのですが・・・。

 

ぜひ、そのオプションをお願いします！
絶対私が忘れないような目印でお願いできますか？

 

わかりました。お任せください。
じゃあ、そろそろ地上へ生まれに行きますか？

 

はい！

 

それじゃあ、行ってらっしゃい！

 

行ってきまーす！

 

こうして私は地上で新たな人生を歩み始めたのだった。

 

 

----数年後----

 

「お前の親父、今日もハニーハントしてるんじゃねぇの？ハハハハ」

 

くっそ・・あの親父さえいなければ・・・。
俺は何でこんな家に生まれてしまったんだろう・・・。

 

「おーい、お前、なにウンコ持ってんの？」

 

うるせー！持ってねぇよ！

 

ちくしょう、どいつもこいつも俺をバカにしやがって。
それにしても・・・何で俺は手の平に・・・

 

 

 

 

それが自分が大きなウンコのかたまりを昇華しに来たという、人生本来の目的を思い出すために、わざわざオプション料金まで払って付けてきた目印だということを彼は知る由もなかった。

 

 

次は「誰も知らない死後の世界―解説編」へと続きます。