田の神様のつぶやき

歳とともに憂国の情深まり、日本の将来を政治経済の在り方から見つめていきたい。

日本の憲法論議、東大の憲法解釈学から京大の憲法学へ(日経の“憲法改正の論点”を読んでみよう)

2018-02-07 21:51:09 | 日記

 私は、日本には憲法学者はいなくて、憲法解釈学者ばかりだ、と言ってきた。多分以前、京大の佐伯啓思名誉教授の言われていた「日本の憲法学の中心的な流れは、東大の憲法学の権威と言われた芦部信喜名誉教授が築いた解釈体系を軸にしてきました。」の言葉を借りて憲法解釈学と言ったと思う。昨日、今日の日経新聞・経済教室で京大の憲法学は解釈だけでないことが分かった。

 今年は憲法改正を巡る議論が進もうとしている。憲法改正の最大のテーマは憲法9条である。素人的に憲法9条を見てみよう。憲法9条2項は「日本は陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」とある。小学生でも我々素人でも、自衛隊がありながらこの条文はおかしいと思う。多くの憲法学者も正直に、自衛隊はこの憲法条文に合っていない、自衛隊は違憲だと言いているそうだ(朝日新聞の調査で憲法学者の半数以上とか)。そうだったら、自衛隊を廃止するか憲法を変えたらと聞くと、我々は法律(憲法)を解釈するのが仕事だから、それ以上は知らない、聞くなとくる。

 また、子供が(外国人でも)この条文を読めば自衛隊は憲法違反と思うかもしれないが、学者、専門家からは憲法の解釈上自衛隊があってもおかしいことでないらしい。そのように解釈すれば、自衛隊はあってもよいし、憲法を改正する必要もないことになる。

  日本の平和が保たれたのは憲法の平和条項9条があったためとして(本当は日米安保条約の効果)、もし憲法、特に9条をいらったら、時の権力者・政府は何をするかわからないので、その歯止めに憲法の平和条項は変えるべきではない。これが東大の憲法学の権威だった芦部教授の言われた立憲主義というものだそうだ。芦部憲法学の流れをくむ、東大の石川健治、宍戸常寿、首都大の木村草太など東大憲法学派の方々は、芦部さんのように護憲とは言わないが、9条は改正すべきでないと言っている。日本のほとんどの憲法学者は、佐伯教授が言われたように、憲法解釈学の最高峰東大の憲法学に右ならえの感がある。

 ところが日経の経済教室に、“憲法改正で論点を探る”で京大の曽我部真祐教授と九大の井上武史准教授が憲法論議をどうすべきか述べている。両教授は京大卒で憲法解釈学者ではなく憲法学者らしい。

 曽我部氏は「憲法9条を含め憲法を改正するなら検討するための人材が不足していないか、専門的知識の調達と議論の透明性が求められる」としたうえで、特に統治機構改革の必要性を述べられている。

 井上氏は9条改正に関わる自衛隊について、正面から問題を指摘、憲法改正するならこのような条文ではと具体案を提示している。さらに「日本は安全保障政策について、今なお憲法の歯止めに頼らざるを得ない状況があるとすれば、戦後我々が手にした民主主義とは何だったのか」と結ばれている。この言葉は、立憲主義を唱える学者や政治家は日本の民主主義を疑問視しているのか、立憲主義を唱え文句(スローガン)にしながら日本国民を信頼していないことを意味する。

  最後に、昨日私の属するグループのブログ“柏原プロバスクラブ通信”に搭載した、丹波市教育長の「自分たちの未来を創る子どもたちに」で述べられている言葉を紹介する。これからの教育は“暗記・再生型の授業”でなく、“思考・発信型の授業”に変える必要がある。東大も偏差値頼りの暗記・再生の解釈学でなく、京大の思考・発信に向けた真の憲法学を目指してはどうか。


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