ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

中村祐子 わたしが誰かわからない ヤングケアラーを探す旅 医学書院2023

2024-04-17 11:06:04 | エッセイ オープンダイアローグ
 これも、シリーズケアをひらくの一冊。 中村祐子氏は、1977年東京生まれ、慶応義塾大学文学部卒、テレビマンユニオンに参加とのことで、映画・テレビの脚本、演出を手がけつつ、2020年に集英社から『マザリング 現代の母なる場所』を出版されているようだ。立教大学現代心理学部映像身体学科兼任講師も務められる。 さて、この本は、何の本だろうか?「ヤングケアラー」についての本だろうか。そうではあるだろう。し . . . 本文を読む

青木美希 なぜ日本は原発を止められないのか 文春新書2023

2024-04-16 15:04:18 | エッセイ
 青木美希氏は、ジャーナリスト。朝日新聞の社員であるが、記者からは外されたらしい。 さて、この書物は、原発について、社会、政治、経済から考えようとするとき、必読の教科書といって良いと思う。 帯には、「安全神話に加担した政・官・業・学そして、マスコミの大罪!」と記されている。 わたしが思うに、原発とは経済的な代物であり、でなければ核軍備の代替物である。ここでいう経済とは、本来の「経世済民」の意味の経 . . . 本文を読む

栗原康 超人ナイチンゲール 医学書院2023

2024-04-08 14:03:38 | エッセイ オープンダイアローグ
 シリーズケアをひらくの一冊。 栗原康氏は、早稲田の政治学の大学院博士課程から、東北芸術工科大の非常勤講師とのこと。専門は、アナキズム研究だという。 文体は、軽々しい。パンキッシュである。アナーキーin the UK。 〈はじめに〉で、「近代看護の母」とか「クリミアの天使」と呼ばれ「道徳の教科書みたいなイメージ」で、「世のため、ひとのため、清く、正しく、美しく…そういうのにはヘドが出 . . . 本文を読む

精神看護 2024.3 特集白石正明(編集担当)さんが主観で解説するシリーズ「ケアをひらく」全43冊 医学書院

2024-04-05 15:20:29 | エッセイ オープンダイアローグ
 白石正明氏は、医学書院の名物編集者、「偉大なる編集者」といってしまうと、評価が早すぎるとなってしまうだろうが、私が尊敬する、いつの間にか影響を受けていたというべき編集者であることは間違いない。白石氏が、この3月で定年退職を迎えたらしい。 写真は、同シリーズの他、本棚にあった担当書籍を並べてみた。このほか、斎藤環氏の『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』2021と、森川すいめい氏の『オー . . . 本文を読む

斎藤環・東畑開人 臨床のフリコラージュ-心の支援の現在地 青土社 2023

2024-03-21 11:34:53 | エッセイ オープンダイアローグ
 この本に掲載されている対談は、私がいま、精神保健福祉士を目指して、大学の通信課程で学んでいる、その直接のきっかけとなったものであるといって間違いない。このお二人は、私にとって、現在、五指に入る最も重要な著者である。 タイトルについて、購入してからも実際に読み始めるまで《臨床のブリコラージュ》だと思い込んでいた。《フ》でなくて、濁点のついた《ブ》。クロード・レヴィ=ストロースのいう《bricola . . . 本文を読む

霧笛145号 創刊40年記念号 〈144号へのお便りから〉

2024-03-10 15:29:18 | 霧笛編集後記
 宮城県詩人会の色川幸子さんから「千田さんのDead or Alive、霧笛も聞こえてきそうな港町に犯人らしき人物と、俺には関係ないことだ!どっちだっていい!という人物が映画のようにくっきりと見えてきて、この人物の次の〝日〟をも読みたいと思いました。/「祭礼」及川良子さん…きょうはよき日!なんでもない日よ続け!きりりとした詩に心、動きました。/千田遊人さんのみずみずしい感性はうらやま . . . 本文を読む

霧笛第145号 創刊40年記念号 〈編集後記〉 霧笛の四〇年、私の四〇年

2024-03-10 15:13:45 | 霧笛編集後記
◆創刊四〇年である。 いつのまにか、時が経ている。 私が、二十歳代のときは、未来に明確な希望があった。世界中のすべてのひとが、総体として少なくとも今よりは幸せな生活を送ることができる未来があると信じていた。自分自身の未来も、同様に信じられたと思う。 いや、私はすでに挫折していた。都落ちした人間であった。しかし、故郷の小さな町で新規まき直し、希望をサイズダウンしながら生き直して行けるはずと思った。世 . . . 本文を読む

子どものコスパとタイパ

2024-03-03 10:38:33 | 2015年4月以降の詩
子どもはコスパとタイパが悪いから生まないのが賢明出産だって女の苦行どんな子どもが産まれるか子ガチャ危険な賭こんなディールはだれもしないカネはかかるし時間は取られるし夜は眠られず昼は走り回らされ受験受験と追い立てられ仕送り続けて育てたあげくに仕事もせずスネかじりこんなディールはだれもしないコスパタイパアッパッパ結婚だってメンドくさい妊娠なんてもってのほか性交だって省略可汗かくし粘液まみれなんか匂うし . . . 本文を読む

樋口直美・内門大丈 レビー小体型認知症とは何か ちくま新書2023

2024-02-02 12:47:41 | エッセイ オープンダイアローグ
 副題は「患者と医師が語りつくしてわかったこと」。 樋口直美氏の著書は、シリーズケアをひらくの一冊『誤作動する脳』(医学書院2020)に次いで2冊目である。 この本のねらいは、「はじめに」に記されている。「私は、五〇歳の時に「レビー小体型認知症(DLB)」と診断され、治療を続けている患者です。診断後、自分の病態を観察、記録し、「従来の説明はちょっと違うよ」と書き続けてきました。当事者を苦しめる、認 . . . 本文を読む

西村高宏 震災に臨む 被災地での〈哲学対話〉の記録 大阪大学出版会2023

2024-01-23 12:24:18 | 気ままな哲学カフェ
 シリーズ臨床哲学第6巻である。 西村高宏氏は、福井大学医学部准教授、専門は臨床哲学。大阪大学大学院博士課程で学び、鷲田清一氏の薫陶を受けた直系の系譜の哲学者ということになるのだろう。 実は、前任は東北文化学園大学医療福祉学部の教授で、せんだいメディアテークで「哲学カフェ」の場を開いてこられた方である。私も、その場には何度か参加させていただいたし、なによりも、もはや10年近く前になるだろうか、私が . . . 本文を読む

永井玲衣 水中の哲学者たち 晶文社 2021

2024-01-20 12:40:03 | 気ままな哲学カフェ
 永井玲衣氏は、現代思想の昨年5月の臨時増刊の鷲田清一の特集で、冒頭対談の聴き手を務められており、そこでこの書物を知ることとなった。 晶文社というのは、サイのマークがついた、ハードカバーの白っぽい表紙の統一したデザインの書物しかないのだと思い込んでいたが、ペーパーバックもあったのかと驚いている。これは間抜けな時代錯誤というべきだろうか。しかし、いい出版社だという印象はあり、 永井氏が「晶文社という . . . 本文を読む

気仙沼の内湾はいい天気

2024-01-07 23:31:15 | 詩誌霧笛137号(2021)以降
2024年お正月松の内晴れた空にぽっこりと白い雲日本海側の能登半島は雪かもしれないガザは晴れているかもしれないウクライナは吹雪の場所もあるかもしれない東京やニューヨークは晴れていようが吹雪だろうがとりあえずは気にしなくていい1968年や1989年に僕たちには希望があった2001年にようやく僕たちは何かに気づきはじめたおそらく僕たちはまだ人間ではない文明は進歩したかもしれないが文化は進歩などしないい . . . 本文を読む

2023紅白歌合戦雑感

2024-01-05 13:10:44 | エッセイ
 今日の時点で、のんびりこんなことを書いているのは間抜けな感じだが、夕べのどこかの国の首相よりはましかもしれない。 家でのんびり紅白歌合戦を眺めながら思ったことを記してみたい。ただし、途中、吉田類の酒場放浪記とかで、気仙沼が映っているという情報があって、気仙沼市田中前の「あじくら」の様子と旧向洋高校の震災遺構伝承館から、岩手県釜石の話題あたりまで中抜けした。そのあいだに寺尾聰の歌を聴き損ねたのは残 . . . 本文を読む

竹内英典 伝記 思潮社2023

2023-12-26 21:36:13 | エッセイ
 竹内英典氏は、書物のなかに住まう人、というべきであろう。 あるいは、薄暗い図書館の書棚をめぐって、読み親しんだ本を手に取って、その一行から詩を編み出す人である。書物のなかの、大方の人々からは「見捨てられたままの一行」(冒頭の「伝記1」より)を拾い集め、書きとめる司書であり、書記である。 この『伝記』という詩集は、竹内氏に先立って、人間の歴史の中で書物のなかに身を隠していた人々の紡ぐ物語を掬いとっ . . . 本文を読む

村上靖彦 客観性の落とし穴 ちくまプリマー新書 2023

2023-12-24 14:42:36 | エッセイ オープンダイアローグ
 村上靖彦氏は、大阪大学大学院人間科学研究科教授、東京大学教養学部から大学院、パリ第七大学で、現象学、精神分析などを修められたようである。 現象学は、フッサールが興した哲学の一派で、デカルトの懐疑を基底に、大雑把に言えば、ハイデガー、メルロ=ポンティ、サルトルなど後の実存主義につながるものである。 ちくまプリマー新書は、学問、教養への入門編というか、高校から大学一般教養レベルということになるのだろ . . . 本文を読む