「 俺 今 舞台の演出書いてんだ 」
俺の右側に座ってる 向井さん
耳元で 小さく囁く
薄暗い室内で 床に座ってる
俺ら二人以外は
ざっと見渡すと 10人弱
椅子に座る 後ろ姿
モニターの明かりが ボンヤリ浮かぶ
「 あの …向井さん… 」
まだ 見始めてもいない
モニター前
脱ぐ前の 服の上から 刺激されても
…まだそんな気に持って行けない俺
左手を床に付き 俺に体を寄せ
右手で煽るように 上下する 向井さんは
俺の右肩に顎を乗せて 話しかけてくる
…これが 女の子相手だったら
簡単にやれるのに…
胸の モヤモヤ感が その気に蓋をする
「 お金払ってんだから
我慢するの 勿体ないよ 」
そうは仰っても 向井さん
千円 ですしね…
なんて 冷静な部分が
向井さんの指の動きに
少し 傾きかけた気持ちを
引き戻す
「 おまえ 遊びでも 男 初めて? 」
有り難い事に
女性からの誘いも多く
好みさえ 拘らなければ
簡単に処理してきましたもので
「 えぇ…まぁ…普通かと 」
「 ふぅ~ん… 」
少し さっきまでと声のトーンが変わる
「 面倒な時は? 自分でするだろ? 」
まぁそりゃぁ 相手を気にして
良くない時の方が 多いけど…
「 男とやる 利点はね 」
向井さんの手が 器用にジッパーを
片手で 下げた
ソイツノ テク ヲ マナベルッテ コト
「 あっ…むぅ… 」
いきなり 直で触れた指は
思いの外 熱く
俺の腰が勝手に動いた
「 ここ 俺の好きなとこ 」
そう言って 這わす指が
くねくねと 踊る
「 俺は ここで こうやんの 」
指の動きに 解説がついてくる
…今の どの指と どの指だったんだ
知りたくて 俯く
マジ 片手か?
肩にのせた 向井さんの顔が
吐息を吐くように 小さく笑う
…どう? 悪くないでしょ?
そう 囁かれ
俺は 頷くしかなかった
「 どうする? 後は自分で ヌ ク 」
「 え? 」
立ち上げるだけ 立ち上げて
放置なんですか?
てっきり最後まで…そう思っていた俺は
直ぐ近くの 向井さんの顔を見た
「 …いいねぇ その顔 」
目が合うと 俺を握った指が
滑るように カリを擦った
「 ……っ 」
突然の 強い刺激に 息を飲む
「 次は 声を出してみる? 」
…煽られてる…
他人から受ける刺激が
こんなに 良いなんて…
「 俺ね 本当は左利きなの 」
なんだか 囁かれてる声すら
盛り上げに 加担してくる
「 左手で やってやろうか? 」
少し 否 かなり
俺は 期待値をフルに上げた
…是非… そう お願いしようと
口を開けた
「 後 3千円 出すならね 」
いきなり 現実に引き戻される
行為に 集中し閉じかけた目を
向井さんに向けると
薄っすらと微笑んでいる
なんだか
凄く
大人に見えた
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