「 なんだか今日はサクサク進むね 」
シーンチェックでのリハの合間
エキストラの女の子が声を掛けて来た
「 …そうだね 」
この仕事をしている女の子は
大抵 綺麗だ
彼女も
よくよく見ても 可愛い
「 ねぇ さっき 俳優の古賀さんと
一緒だったけど 知り合いなの?
他でも共演したとか? 」
こういう可愛い子と
気軽に会話できる
この仕事の特権だよなぁ
向井さんに関しては例外で
普通に
女の子好きな俺としては
至福の瞬間
彼女
休憩中の俺らを見てたのか
他にも出演者と話してる人
居たのに…
あ
ひょっとして あの俳優に誘われた?
それで 確認してるのかも
って事は 彼女が
俳優の お目当ての…
「 ねぇ この後 暇? 」
何食わぬ顔で 誘ってみる
俳優の先約有なら 断られるだろう
でも そうなら
その誘いの危険度を教えてあげないと
「 ごめんね 私… 」
くりくりと可愛い顔を 俺に向ける
断る素振りだ
確信した
俺は
良心の痛みを半減すべく
俳優の魂胆を ぶちまけようと
彼女の会話途中に
割って入る為
『あ』 の形をした口で
彼女と目を合わす
「 お酒も飲めない年齢の子供には
興味ないのよね 」
にっこり微笑んで舌を出す彼女
『あ』 が 『え』 に変わる
正義のヒーロー気取って
助けようとしたヒロインに
顔面パンチ くらった感覚だ
ぐうの音も出ない 断り方をした彼女
…この子なら 心配無用か
そう思い直し
余計な忠告は 取り止めた
「 あのね 余計なお世話だけど 」
俺をバッサリ切って捨てた彼女
まだ何か?
「 覚悟が出来ていないなら
古賀さんの誘いには気を付けて
あの人 若い子 大好きだから 」
…へ?
「 うちの事務所内じゃ 有名よ
あっ 呼ばれてる 行くね 」
彼女はスタッフに手招きされ
立ち位置確認に入った
その奥に目を向けると
談笑している 俳優陣
俺を誘った 俳優 古賀さんは
テッシーと何やら話している
- 覚悟ができていないなら -
彼女の言葉を
脳内で反芻する
…なんだよそれ…