穏やかな
カメラマンの所作に
つい
まじまじと
凝視する
「…いつまでそうしてる訳？」
不意に
囁くような声
「しないの？キス」
催促を口にした
カメラマンと
目が合う
けど
改まって
ふはふはした誘いに
今までの駆け引き感と違う
この雰囲気に
瞬きを繰り返す
ムードに流され
本能的な欲求のままに
求められる時間
とは
違う
どこか
むず痒い
これまで
避けて通った
ぬるい甘さ
とでも
言う感覚に
ずぶずぶと
膝まで
沈み
纏わりつく様な
空気感
漠然と感じて
本能的に
対比的な態度で
この瞬間の 流れを変えようと
…何ムード作って
盛り上がってんの？
恋人でもないのに…
と
心に壁を立てる
肌の合わない相手とは
数分でも 一緒に居るのは苦痛だ
その点からいえば
カメラマンの事は
嫌いではない
…けど
溺れれば
警戒心を鈍らせ
不利でしかない立場である事
肩の見えない位置のタトゥー
で
学習しただろ
…と
苦い思い出に唇をかむ
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