2015年06月17日

SLASH'S SNAKEPIT - AIN'T LIFE GRAND 【感想・レビュー】

GUNS N' ROSESのギタリスト、スラッシュ率いるハードロックバンド、SLASH'S SNAKEPITの2枚目のアルバム。2000年発売。

1stアルバム『IT'S FIVE O'CLOCK SOMEWHERE』の頃は、まだGUNS N' ROSESに在籍していたスラッシュ

元々このSNAKEPITは、アクセル・ローズが再びバンド活動にやる気を出すまでの待ち時間の暇つぶしに結成されたバンドです。あれ? なんか語弊がある気がするな(笑)

しかし、アルバムを作り、ツアーで世界を周り、一段落してアメリカに帰ってくるも、アクセルのやる気スイッチは未だにOFFのまま(笑)
待てど暮らせど動き出さないアクセルに対して、我慢の限界に達したスラッシュは、ついにGUNS N' ROSESを脱退。再びSLASH'S SNAKEPITとしての活動をはじめます。


そうして、バンドメンバーを一新して作り上げた本作『AIN'T LIFE GRAND』は、前作とは大きく異なる音楽性を持ったアルバムです。


前作の音楽性を端的に言えば、埃っぽいGUNS N' ROSESスラッシュの作るアルバムということもあって、ブルーズ色が強くてやや渋い作風でしたが、それでもヴォーカルをアクセル・ローズのものに差し替えれば、そのままGUNS N' ROSESのアルバムになってしまいそうな作品でした。
と言うよりも、本当ならアクセルに歌ってもらいたかったんじゃないだろうかと思える曲もチラホラ見受けられました。

そういうわけで、前作はSLASH'S SNAKEPITのアルバムでありながらも、GUNS N' ROSESという存在を念頭に置いて作られたものだったとぼくは思います。


一方、GUNS N' ROSESと訣別した上で作られたこのアルバム。その音楽性もまた、GUNS N' ROSESの影響下から抜け出したものとなっています。

もちろん、本作でもGUNS N' ROSESSNAKEPITの前作と同じように、スラッシュのハードで華のあるギタープレイを聴くことができます(中にはGUNS N' ROSESを想起させるようなリフもありますが、それはガンズと言うよりスラッシュ自身の味でしょう)。

ただ、まず1つ前作と大きく異なるのが、ブルーズ色の希薄さ。
ブルーズ色が減退した分、本作は非常に直情的なアメリカンハードロックのアルバムとなっています。
ひたすらハードエネルギッシュ。それぞれの楽曲に、パワーが満ち満ちています。

しかし、本作の色合いを、過去のスラッシュの作品と大きく異なるものとしている最大のポイントは、ヴォーカルであるロッド・ジャクソンの存在でしょう。
彼の声質と歌い方には、一般的なハードロック系のシンガーにはないソウルフルな趣が感じられます。

そんなヴォーカルに合わせてか、楽曲の中にはソウルミュージックやビッグバンドを思わせるアレンジがなされているものもあり、他のハードロック系のアルバムではちょっと聴くことのできない空気感が生み出されています。

ゴリゴリのアメリカンハードロックに、ソウルフルなヴォーカルとアレンジ。これはもはや、GUNS N' ROSESとは全く別の音楽です。
本作の楽曲をアクセル・ローズが歌ったとしたら……う~ん、全然しっくりきませんね(笑)



1曲目の"Been There Lately"は勢い溢れるロックンロールナンバー。
スラッシュはじめ楽器隊の演奏はもちろんですが、何よりもロッド・ジャクソンのパワフルで骨太なヴォーカルが光ります。

また、ハードな演奏の中にさりげなく散りばめられているピアノ演奏がお洒落ですが、このピアノを演奏しているのはテディ・アンドレアディスGUNS N' ROSESの『USE YOUR ILLUSION』ツアーにも帯同していたキーボーディストですね。

アルバムの幕開けとしては最高の楽曲。本作が持つ強力なパワーを象徴するような楽曲です。


2曲目の"Just Like Anything"はスラッシュのアルバムではお馴染みの、うねりまくるギターを堪能できる楽曲です。
パーカッションが使われた怪しげなムードのイントロから、ロッド・ジャクソンの雄叫びを合図にハードな演奏へと雪崩込む展開が滅茶苦茶カッコいい!

しかし、この曲の最大の特徴は、途中に何度か挿入されるソウルミュージックのようなヴォーカルパート。
ハードロックではあまり聴くことのできない異色のアレンジですが、これが楽曲にピッタリとフィットしていて、最高にカッコいいのです!
特に、2度目の「ソウルミュージックパート」からギターソロへと入る部分は、カッコ良すぎて鳥肌ものです!!


4曲目の"Mean Bone"は、ヒップホップ的なサウンドではじまる異色の楽曲。気怠い空気感を醸し出した女性ヴォーカルとスクラッチ音が耳を引きます。
そこから、やはりロッド・ジャクソンの雄叫びを合図にハードな演奏へと突入します。

ロッド・ジャクソンの野太い声で歌われる、ノリのいいロックンロール。
ぼくは、スラッシュの刻むリフをバックに、女性ヴォーカルとロッド・ジャクソンが「オ、ベイビベイビ♪」「ウッ!」と掛け合う部分が好き(笑)
女性ヴォーカルと、ロッド男臭さの対比がいいですね(笑)

そしてもちろん、そこから突入するスラッシュのギターソロがカッコいいことは言うまでもありません。


5曲目の"Back to the Moment"はエモーショナルなバラードナンバー。
ロッドはバラードを歌わせても素晴らしいですね。そして、そんな彼のヴォーカルによって、この曲にも他のハードロックのバラードにはない味わいが。どことなくR&Bのような雰囲気を漂わせています。
やはり、このアルバムの最大の強みはロッド・ジャクソンの存在ですね!


6曲目の"Life's Sweet Drug"もカッコいいハードロックナンバー。
イントロをはじめ、細かく刻まれるドラムのビートが高揚感を煽ります。
サビのヴォーカルは分厚く、聴き応え満点。疾走感溢れるスラッシュのギターソロもカッコいいです。


シリアスかつドラマティックな異色の大作"Serial Killer"や、爽やかな曲調とゴージャスなサビが特徴の"The Truth"を経て、9曲目の"Landslide"から怒涛の終盤戦がスタート!

この"Landslide"がハードかつキャッチーな楽曲で、ものすごくカッコいい!
そして、この曲でもロッドのヴォーカルは非常に魅力的。スラッシュのギターとロッドのヴォーカルが交わることで、まさにタイトルの「地滑り」を想起させるような迫力と破壊力が生み出されています。


10曲目の"Ain't Life Grand"は、タイトルトラックにして異色の楽曲……本作は異色の楽曲が非常に多いです(笑)
で、何が異色かと言うと、この曲のアレンジはなんとビッグバンド風。通常編成のギター、ベース、ドラムの演奏に、キーボードやサックス、トランペットが絡みます。そしてまた、ロッド・ジャクソンのヴォーカルがこういう曲調にすごく合うんです(笑)

ちなみに、"Ain't Life Grand"というのは「人生って素晴らしい」という意味です。日本語にすると、チャラい系のJ-POPみたいな雰囲気になりますけど(笑)、この曲に漂うのは、むしろ哀愁
人生って素晴らしいぜウェーイwww」という感じではなく、酸いも甘いも噛み分けた、ちょっとくたびれた男の背中を感じさせるような曲調です(笑)

個人的には、これはちょっとヘコんだ時に聴きたい曲ですね。
デートの誘いを「ごめん彼氏いるから(><)」と断られたときとか、競馬場まで行って一銭も当たらずに帰路につくときとか、そういうしょっぱい気分の時にこの曲を聴くと、苦笑しつつ「まぁ人生いいこともあるさ」と思える。そんな素晴らしい曲ですね(笑)


11曲目"Speed Parade"でラストへ向けて勢いをつけて、迎えるラスト12曲目"The Alien"。この曲がまた、すごくカッコいいです!
もの凄い勢いで吐き捨てるヴォーカル。陽気でキャッチーなサビ。そして何より、スラッシュのギターリフが最高にカッコいい!
ハンパなくカッコいいアルバムのエンディング。素晴らしいです。


なお、日本盤にはボーナストラックが2曲収録されていますが、特に1曲目の"Rusted Hero"は「えっ、これがボーナストラックなの?」と思ってしまうほどカッコいいハードロックです。
余裕がある人には、是非とも日本盤をオススメしたいところです。



さて、これはかつてモンスターバンドにいたミュージシャンの宿命ですが、スラッシュの作品には常にGUNS N' ROSESの存在がついて回ります。

ところが、本作において、GUNS N' ROSESの影は意外なほど薄くなっています。とは言え、スラッシュのギタープレイは、いい意味でGUNS N' ROSES時代と変わることなく貫かれています。

スラッシュが過去と変わらぬギターサウンドを鳴らしているにも関わらず、GUNS N' ROSESとは全く違う音楽が出来上がっている。その理由は、ロッド・ジャクソンのヴォーカルにあると言うほかありません。
単なるギターとヴォーカルの相性というだけでなく、ロッド・ジャクソンという異色のヴォーカルを手に入れたことで、スラッシュGUNS N' ROSESには存在しなかった様々なタイプの楽曲を作ることができたのでしょう。そして、そのどれもが素晴らしいデキ。
スラッシュロッド・ジャクソンの間には、間違いなくケミストリーが起こっていました。


2015年現在、スラッシュロッド・ジャクソンと組んで作り上げたアルバムは本作のみ。
VELVET REVOLVERや、マイルス・ケネディとのバンドも素晴らしいですが、このアルバムの持つ輝きは唯一無二です。

もう1度、ロッド・ジャクソンと一緒にアルバムを作ってほしいと思っているのはぼくだけではないはず。本作は、それほどまでに素晴らしい作品なのです。



SLASH'S SNAKEPIT - AIN'T LIFE GRAND

618r3O2I89L

1.Been There Lately
2.Just Like Anything
3.Shine
4.Mean Bone
5.Back to the Moment
6.Life's Sweet Drug

7.Serial Killer
8.The Truth
9.Landslide
10.Ain't Life Grand

11.Speed Parade
12.The Alien
13.Rusted Hero
14.Something About Your Love

※赤文字は特にお気に入りの曲です。

評価:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(10点)


ハードロック・ヘヴィーメタル ブログランキングへ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
petenshitokukiotoko at 00:25コメント(0)CDレビュー(HM/HR) | SLASH

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
記事検索
ギャラリー
  • 人間椅子 - 威風堂々~人間椅子ライブ!! 【感想・レビュー】
  • BABYMETAL - GUNS N' ROSES JAPAN TOUR 2017 opening act(大阪・神戸・さいたま) 【ライブレポート・感想】
  • BABYMETAL - GUNS N' ROSES JAPAN TOUR 2017 opening act(大阪・神戸・さいたま) 【ライブレポート・感想】
  • BABYMETAL - GUNS N' ROSES JAPAN TOUR 2017 opening act(大阪・神戸・さいたま) 【ライブレポート・感想】
  • BABYMETAL - GUNS N' ROSES JAPAN TOUR 2017 opening act(大阪・神戸・さいたま) 【ライブレポート・感想】
  • BABYMETAL - GUNS N' ROSES JAPAN TOUR 2017 opening act(大阪・神戸・さいたま) 【ライブレポート・感想】
  • BABYMETAL - GUNS N' ROSES JAPAN TOUR 2017 opening act(大阪・神戸・さいたま) 【ライブレポート・感想】
  • BABYMETAL - GUNS N' ROSES JAPAN TOUR 2017 opening act(大阪・神戸・さいたま) 【ライブレポート・感想】
  • BABYMETAL - GUNS N' ROSES JAPAN TOUR 2017 opening act(大阪・神戸・さいたま) 【ライブレポート・感想】
プロフィール

キノコパワー

タグクラウド
カテゴリー
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

  • ライブドアブログ