朝一番の電車に乗る為に、息子の捜索に出かけようとしている所に携帯電話が鳴りました。私は妻からだと思ったのですが、表示されている電話番号を見ると知らない番号でした。
市外局番が、0465
訝しく思いながら、電話に出ると、神奈川県の小田原警察署からでした。
「 息子さんを保護しております。 」
驚きと喜びで急に興奮してしまいました。
どうして小田原なのか?
何か事件に巻き込まれていないか?
まだ未明に、どうしたのか?
色々な事柄が頭の中をグルグル回り整理しなければなりませんでした。
少し衰弱しているが、息子は怪我することもなく無事でいると警察官は教えてくれました。
「 迎えには来れますか? 」
もう、始発電車に乗るつもりで準備している所なので、急いで小田原警察署まで行くと伝えました。小田原駅前に交番があるのでそこで警察署までの行き方を聞いてくださいと言われました。
電話を切ってから私はしなければならない事を頭の中で列挙しました。まず、妻に連絡しないとなりません。
ところが、3度、電話しても”電話に出れない”というメッセージ音声が流れるだけです。次に息子の無事を報告しようと私は父の寝床に行きました。父は布団から落っこちて眠っていました。
「 大丈夫? 」
そう声をかけると、目を覚ましました。”行くのか?”と問う父に、息子が発見されたと伝えました。すると半分眠っていた父は目を開き起き上がりました。
今から迎えに行くからと伝えると、
「 良かったなぁ、良かったなぁ 」 しみじみ言ってくれました。
私は急いで荷造りをして、実家を飛び出しました。父母が見送ってくれて、まだ薄暗い街にとび出しました。
実家を出る前に妻から電話があり、息子が発見されたことを伝えました。そう言えば妻はキャンプに行っていたのでした。キャンプの片づけをする時間なども考えると、妻が車で向かうよりも、私が小田原へ電車で行った方が早いでしょう。
私は息子と二人だけで話をすることができる訳です。これも何かのお導きかもしれません。
品川から6時34分発新幹線ひかり501号に乗れました。この新幹線はひかりでありながら停車駅が少ないです。品川を出ると新横浜、小田原、豊橋、名古屋です。
私は車内で息子の事や、この21日間の事を思い出していました。本当に苦しい日々でした。
今までに感じたことのない気持ちで居た ・・・
既に過去にあった事柄として見られるのが嬉しかったです。まだ息子の顔を見ていないのに、すっかり背負っていた重い荷物を下ろせた気分になっていました。
小田原駅で新幹線を降りると、言われた様に駅前の交番を訪ねました。婦人警官が親切に小田原警察署への行き方を教えてくれました。地図を取り出し、歩く道に線を引いてくれました。
途中まで登坂を行かなければならないそうです。登りきると後は下り坂なので楽そうです。
「 最後の試練かぁ 」
私は地図を見ながら小田原警察署まで歩いて行きました。
家出息子捜索日記
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