有給休暇をとって山登りに行っていたのだけれど、帰ってきたので勤めに行くと妻は言います。
そんな勝手なことが通じる職場なのかは分かりませんが、妻からすると家にいてもやる事が無いと思ったのでしょう。
自分の思った通りにしかしないので私は妻を好きにさせています。娘は朝早くから部活の合宿に出かけてしまいました。だから、特に気がめいっている時に二人でいると喧嘩になりそうな気がしていたので、勝手にさせました。
私は銀行に行くつもりでいました。
私が見つけた残高1000円あった通帳はてっきり、息子が3月までのバイト代を振り込んでもらう為に作ったものだと思ったのですが違ったのでした。通帳を4月に作っているので、春休みのバイトとは関係なかったのです。育英奨学金を申請したのでそれを受け取る為に作った口座だったのでした。
つまり、本人が触ることのない筈の口座です。おそらく奨学金の申請書を書くのにカードを本人に妻が渡していたのでしょう。それを息子が持っていて、失踪2日前に、1000円引き出したということです。
この口座に手を出したというのは、家出する意思を2日前にもっていたと推し量られます。
私が行こうとしているのは、その銀行とは別に3月分のバイトを振り込んでいる口座のある銀行です。妻のうろ覚えの記憶によると今では使っていない息子名義の通帳を渡したというのです。だから、カードも通帳もないので口座番号が分からないのです。
でも、口座を開設した支店は分かっているので事情を話して、その口座の取引情報を教えてもらおうと思ったのでした。
地方銀行の口座でも全国のコンビニのATMからお金を引き出すことが出来ます。家出してから本人が引き出していれば、息子の居場所が分かるかもしれないと思ったのです。
少なくとも本人が無事でいる事が分かるわけです。
私は息子の保険証を持って銀行に行きました。
世の中は多くの人がお盆休みに入っているので、銀行にはお客がいませんでした。
私は窓口で要件を伝えると、銀行員は困った顔をしました。こちらの事情を知り同情してくれたのですが、規則で教えられないというのです。口座名義人でないと取引履歴を知らせるわけにはいかないのだとか。
「 取引停止にはできませんか? 」
口座に残高が残っていた場合、引き出せない様にすれば、早く家に戻って来るかもしれないと考え、頼んでみました。しかし、それも父親であっても出来ないのだとか。確か、口座を作ったのは母親なのですが、窓口で操作する事は出来ないという事です。
但し、銀行員は全く教えてくれなかったのですが、銀行員の様子からこの口座は休眠中である印象を受けました。不完全ながらもある程度の感触を得ることができました。これは重要な意味合いを持ちます。
その日は息子が家出して3日目、私はやっと夕飯を食べる事ができました。
ところが、胃が痛たみ出したのでした。悲しみにより神経が正常に働いていないからでしょう。とりあえず、太田胃散を飲みました。
そして夜、妻と再び、駅に行きました。息子の自転車は昨日のままの状態でありました。この自転車が無くなっていたら息子が帰ってきたことを意味します。息子と繋がっている存在です。
高速バス、電車からも人が結構降りて来ました。お盆を地元で過ごそうという人たちと観光客です。最終便の後、その日も寂しく妻と帰りました。
家出息子捜索日記
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- 息子の嘘のバイト
- 再び嘘をつかなければならなくなった息子
- 行方不明者の届け出
- 家出の手がかり 自転車防犯登録番号
- 息子の自転車を探す
- 自転車発見! 家出の足取り
- 銀行口座の取引履歴を調べる
- どうしてお盆に失踪したのか?
- 個人情報保護法の壁
- 緊張はピークに 息子の失踪から5日目
- 真夜中の東京を家出人の捜索
- 留守録への期待
- まだ息子の帰りを待つ段階
- 失踪8日目に、息子へ送ったメール
- ハローワークが家出や失踪をし易くしている
- 高額の嘘 奨学金の申請
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