走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

父と娘

2017年02月13日 | 仕事
娘と父の両方が私の患者だ。父は重度の糖尿病で両足の全ての指を失った。腎臓もやられ透析をしていたが、腎臓移植を受け透析から離れることができた。片目は既に失明している。そして最近骨髄のがんが発見され、治療開始を待っている。

娘は父親との同居を決めた。理由は2つ。
父親の健康状態。そして一緒に住むことでお互いの生活費の節約。

娘は若い頃パニックになることが度々あった。大人になるにつれストレスの対処方法が良くなり、パニックに陥る事はなくなった。それでも子育てに追われることもあり生活保護を受けている。復職に向けてトレーニングを受けたり積極的だった。

そんな彼女がパニックになってやって来た。父親のがんの診断、自分の復職、外国人である夫のビザ問題。父との同居によるストレス。その他にもいろいろと重なりパニックになっている。

昔から父と私は水と油の関係で、一緒に住む事は無理なんです。でも経済的に頼りあっているし、介助が必要な父をほっぽりだすわけにはいかない。娘の義務もあるし、、、父と別れて暮らすのは娘としてできないと彼女はもらす。しかしパニクっている、イライラしている自分が息子に与える影響も心配している。

カナダで生活保護を受けている人は、一定期間になると再就職のトレーニングなど受けなければならない。そうしなければ国民の義務に反すると生活保護費が打ち切られる。それから逃れる手は診断書。

ここ2年ほど私の患者の彼女。彼女の言動は嘘でも演技でもない。これを良い機会にCBT(カウンセリングを通してコーピングスキルを学ぶ)を始めましょう、と勧め診断書も渡した。職場復帰は今の症状が軽快してからね、と。

きっと最も効果的なのはストレス要因の父親との同居を止める事。しかしそれでは家計が成り立たず、それも大きなストレスになる。そして娘としてのジレンマだって解決にはならない。なんとか乗り越えて欲しい。



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