走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

モナ

2017年06月07日 | 仕事
今の仕事を始めて診察中に救急車を呼んだのは3回。3回目は先週だった。

主訴は胸痛。先月2度同じ主訴で救急室を訪れている彼女。その日はそのフォローアップの診察だった。

待合室に呼びに行くと顔色が悪い。彼と友達に付き添われ診察室まで歩いたが胸が痛いと襟元を掴んでいる。崩れるように椅子に座った彼女。脈を測ると135-137。すぐ酸素を始め迷わず救急車を呼ぶ。

診療所は診療所。病院のようにモニターなどありません。ここで対処できないと判断すれば救急車。

胸痛の基本処置はMONA

Morphine モルヒネ
Oxygen 酸素
Nitroglycerin ニトログリセリン
Aspirin アスピリン

心筋梗塞の対処ですね。でもね、彼女は20代前半。薬物依存と拒食症と鬱と不安症。心筋梗塞の可能性は???それより発作性上室性頻拍の可能性が高い?それとも肺塞栓??マリワナ吸ってから徐々に痛くなったって言ってるしと、、、とベンゾ系の薬を一錠舌下で。アスピリンは、、、迷いながらとりあえず問診、所見の続きを取っている間に救急隊到着。

一番初めに言われたのは、アスピリン投与した?だった。

いえ、してません、って答えたけど、何だかなー、間違った事をしてそこを追及された気になった。

いえいえ、この仕事は正解か不正解かの概念だけではやっていけない。大事なのはその行動に至った理由付けができていること。それが一番重要だ。

でも、これが試験だったらとりあえずMONAするだろうな。うん試験だったら心筋梗塞が起こりそうな年齢と性別と体格と習慣がある人が患者になるだろうから、絶対MONAだ。この患者の例は試験には絶対でない。

ほら、教科書と試験が必ずしも臨床と一致しないってことは多々あるのです。それが臨床の難しさであって、醍醐味でもあるのです。

しかし肺塞栓の可能性もあったし、やはりアスピリンを投与すべきだった、と今考え直す。経験の積み重ねも仕事のうち、、、、



週末に突然夕食に招待され、チャチャっと作った即席デザート。寒天で作るババロア、マンゴー入り。美味しかった!


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