走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

免許を 守る

2018年03月30日 | 仕事
診察をしていてたまに自分が嫌になる。頑固と言うか非情と言うか、、、、。

彼は自転車に乗っている時に転び鎖骨のAC関節が1cmほどずれてしまった。肩ほど複雑な関節はないと言いたいぐらい、骨の数、筋肉の数、動く方向が一番。だから肩の故障は長引くのだ。骨は拮抗的な筋肉によって支えられているので、一ヶ所がダメージを受けると総出でそれをかばおうとする。そうなるから連鎖反応の如く次々と痛みが複雑化するのだ。

で、彼は手術待ちの状態。彼の職業は屋根職人。日雇い労働に毛が生えたような労働条件のもとで働いていた。

で、この彼が診断書を書いてくれと診察に来た。肩以外はピンピンしているから仕事に戻りたいんだ。しかし雇い主が仕事に戻って良いとの医療者からのお墨付きの手紙がない限り働かせてくれないからだ。

診察をした結果、腕の筋力も動きも良い。しかしコンペンセーションと言って筋肉がかばい合っているのがよくわかる。腕を動かすと痛みが出ているのもよくわかる。

私は診断書に地上で軽度の仕事のみと書いた。彼は自分は屋根やなんだぜ、地上だけの仕事なんてないんだよ。屋根に上がらなければ意味がないんだよ!こんな事書かれたら首になっちまう!書き直せと言います。

私は断固としてそんな要求は受けいりません。屋根に上がるハシゴで、屋根の上で何かあったらどうするの?!とっさの反応が必要で負傷した肩で全体重を支えなければならないようなことが起こったら責任取れませんよ!

だいたい疾病を理由にクビになるのなら労働局へ行って申し立てができますよ。それに病気休暇手当を支給されているんでしょう?急いで仕事に戻る必要はないんです!!!

2ヶ月待っても手当が貰えないから、こうやって頼んでいるんだ!

あーあー。どうしてそう言う思考回路になるのかな、、、。支給されていないことが変でそこを修正することが無理に仕事に復帰するより理が叶っているのに。

彼の頭の中ではお墨付きの一筆しかないので、ほかのアイデアはすんなり入って来ません。こんな問答をしている時に、芯がブレない自分を嫌になるのです。たとえ正しい事をしているとわかっていても。

言われるままにハイハイと書き換えればどんなに楽かと。

あーダメダメ免許と言う名の城を守れるのは自分だけ。心を鬼にして正しい事をするのだー


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