こういう長いスポンジ(タワシ?)を使っている。
このブラシ、先端部分に小さなブラシが付いているのだ。隅々まで洗うよ、という気概が伝わってくる。
これがあることにより、グッと押し付けて底までしっかり洗えると思うだろう。私もそう思っていた。いや、底までしっかり洗えることには違いない。違いないのだが。ちょっと見て欲しい。
おわかりになられるであろうか。
写真では分かりづらいかもしれないが、そのウィークスポット(洗えない部分)にはうっすらとした茶渋が微妙に残っている。他のところは明らかにピカピカなのに、そこの部分だけ何かが残っている感じがするのだ。
これは大変だ。洗っていると思ったものが洗えていない──これはのっぴきならないことである。
まず私は、この製品を開発したときに「洗えない部分がありますよ」と誰か気付かなかったのかと問いたい。問い詰めたい。
だが私自身にも問題がある。なぜこの結末を想像できなかったのかと過去の自分に強く問い詰めたい。
そんなことを妻に話したら
「私は手入るよ」
とすぽっと手を突っ込み、スポンジで洗ってくれた。
私はこの長いブラシを見つめ、「僕たちにできることはもうないんだね」と静かに語りかけた。ふとカレンダーを見ると、明日は燃えないごみの日だった。
この長いブラシは、今ではどこに行ってしまったか、もう誰にもわからないのだった。
(完)