降り続いていた雨が上がって、蒲田の駅前を行き交う人も心なしか、軽やかな足どりに感じます。
2015年6月19日、金曜日。
この日、向かったホールは「大田区民ホール・アプリコ」。
ここに来るのも、久し振りです。
前、いつ来たのだろう。
“ブリッツ フィルハーモニック ウィンズ”の演奏会は今回で3回目。
前回は、「渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール」で行われた第21回定期演奏会に行かせて頂きました。
~指揮者のいない吹奏楽~と題したコンサートは全編、“指揮者なし”という面白い演奏会でした。
特にスパークの「ダンス・ムーヴメンツ」は、複雑な曲を見事なまでに表現していて、とても感動いたしました。
そして、今回。
~ブリッツで聴く課題曲とダフニス~というテーマです。
コンクール前のこの時期、学生の皆さんにとっては、プロの課題曲演奏を聴けるのは、大きな“財産”になると思います。
また、一時期、コンクール自由曲として爆発的にヒットした「ダフニスとクロエ」。
このラヴェルの名曲を情熱的な演奏をするブリッツがどのような音楽として観客に届けてくれるのか、私は興味津々であります…。
開演前に音楽監督の松元宏康氏より“オープニングトーク”というかたちで、ブリッツの今後の計画を発表して頂きました。
吹奏楽&ブリッツを好きになってもらうための新しい試み、その一。
ファンクラブの開設。
入会金、会費等のいらないファンクラブを立ち上げると言うのです。
そして、そのファンクラブに入会すると特典が4つあるとのこと。(①ファンクラブ会員が200~300名以上になったら、プライベートコンサート&交流会開催②年4回のメールマガジン発信③リハーサル見学ができる④定期演奏会の曲目リクエストが出来る)
特に若い方々には、貴重な体験となると思いますし、技術向上の一翼を担うのではないでしょうか?
続いて、その二。
毎回の演奏会の最後にブリッツメンバーと一緒に演奏が出来るというもの。
この日の演奏会でも楽器を持参した方の多く(主に中高生の皆さん)がブリッツメンバーとアンコールで“宝島”の大合奏をしました。(楽器を持ってきた方が結構いたので、推察するに一部の方には事前に“告知”されていたのでは?)
松元氏のトークの後には、サックスパートとパーカッションの皆さんでの見事なアンサンブルを見せて頂きました。
そして、時間は19:00、開演です。
[演奏]Blitz Philharmonic winds
ブリッツ フィルハーモニック ウィンズ
[指揮]松元 宏康(音楽監督)
三澤 慶(ミュージックパートナー)
Overture “The BLITZ!!”/三澤 慶
2015年全日本吹奏楽コンクール課題曲
Ⅰ.天空の旅 -吹奏楽のための譚詩-/石原 勇太郎
Ⅱ.マーチ「春の道を歩こう」/佐藤 邦宏
Ⅲ.マーチ「プロヴァンスの風」/田坂 直樹
オリエント急行/P.スパーク
【休憩】
2015年全日本吹奏楽コンクール課題曲
Ⅲ.秘儀Ⅲ -旋回舞踊のためのヘテロフォニー/西村 朗
Ⅴ.暁闇の宴/朴 守賢
バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲/M.ラヴェル
まず、最初の曲は、ミュージックパートナーとして名前を連ねている三澤慶氏の作品「Overture “The BLITZ!!”」。
ブリッツの“テーマ曲”です。
若々しさと躍動感にあふれた華やかな演奏でした!(音圧がすごい!)
ブリッツのために作られた曲なので当然だとは思いますが、見事にマッチしていますね!
さて、ここからは、今年の課題曲が3曲。(指揮の三澤氏は、客席より舞台へ登場。)
まずは、課題曲Ⅰです。
最初は、私が集中出来ていなかったせいか、モヤモヤモヤっと始まったように感じましたが後はパーフェクト!
あとで、思ったのですが、この曲をうまいバンドが演奏すると映画音楽のようにも聴こえます。(個人的意見です。)
続いては、課題曲Ⅱ。
こういうコンサートマーチって、ある意味難しいですよね。
ミスを気にしながらやると、つまらない演奏になってしまうし、あまり勢いよくやると“音楽”でなくなってしまう…。
ちょうど良いくらいの柔軟性とテンポでスマートに演奏するのがベストなのでしょう。
そして、それが課題曲という意味でも模範的なものですよね、きっと。
でも、課題曲ではなく単純な楽曲として、そんな演奏を聴くと私はツマラナイ。(前にもこのブログで書いたかも知れませんが、最近の課題曲のマーチ、ライト過ぎるんですよ。)
そういう意味では、この日のブリッツの演奏は、あらゆる意味で“寸止め”を駆使した絶妙な演奏だったように感じました。
ライトではないが、ヘビーでもない。
実にうまくリズムや躍動感が散りばめられていて、マーチ本来の持つ、猛々しさは残しつつも上品に演奏すると言う“テクニック”には感服いたしました。
ある意味、課題曲の模範演奏とは多少、異質かもしれませんが、私は非常に楽しめました。
次は、課題曲Ⅳです。
この曲は、Ⅱと違って、メロディラインに特徴があります。
曲名を見れば、すぐわかる(笑)
明らかに地方色があって、しかも南欧の陽気な雰囲気です。
エキゾチックな感じもして、演奏者がイメージを湧かせやすい楽曲だと思います。(少なくとも同じマーチのⅡよりは。)
ブリッツの演奏も楽団のカラーに合っていてステキでした…。
前半最後の曲は、スパークの「オリエント急行」です。
指揮は松元氏にかわります。
そもそも「オリエント急行」とは、1883年に運転を始めたヨーロッパを横断する長距離夜行列車のことらしいのですが、2009年に定期列車が廃止されるまで、さまざまな種類の“それ”が走っていたようですね。
個人的なことを言いますと、「オリエント急行」と言う言葉は、アガサ・クリスティの小説によって初めて知ったように思います。
さて、スパークの楽曲についてですが、もともとBBCの委嘱で1986年に作曲されたブラスバンドの曲です。(その後、東京佼成ウインドオーケストラのために作曲者自身によって吹奏楽版も。)
簡単に言うと「オリエント急行」の出発から到着までを描写した曲なんですが、日本でも人気の高く割と演奏されることが多いように思います。
基本、標題音楽なので、やはり、聴き手側もイメージする部分が多いと思います。
この日の演奏は、こういった“イメージ”の世界にも負けない絵画的な演奏でした。
何よりも“情緒”がある。
それにスパークの曲らしい躍動感が加わって、とても楽しい演奏でした。
休憩をはさんで後半の最初は、課題曲ⅢとⅤ。
まずはⅢから。
今年の課題曲Ⅲは、毎年の“Ⅲ”の曲調から比べて少し異質で、難解なのだと思います。
だからこそ、私は面白く感じます。
これまで何回か、この曲を聴かせて頂く機会がありました。
それぞれに工夫を凝らした演奏は、非常に興味深く拝聴いたしました…。
そして、ブリッツの演奏。
素人なりに考えてみましたが、他の団体より、ひとつひとつの音にアクセントを効かせているように思いました、しかも故意に。
だから、とっても“舞踊”感が増していたように思える。
クルクル回りながら踊っているダンサーが目に見えるような気さえしました…。
ダイナミクスにメリハリがあって、心地よかった。
そして…、他の団体とは“差別化”された面白い演奏だと思いました。
私は好きです、この演奏。
続いては、課題曲Ⅴ。
私のような素人にとっては難解に感ずる曲です。
でも、さすがプロだけあって、音楽に“流れ”を作っている。
だから、自然に身体の中に曲が入り込んでくる感じがします。
“表現力の妙”を感じますね。
でも、そのオオモトにあるのは低音部の充実ですね。
土台がしっかりしているから、その上にひとつの曲を構築できる。
そんな風に思えました…。
さあ、早いもので、いよいよトリの曲、「ダフニスとクロエ」です。
やっぱり、印象派の音楽ですので、透明感だとかキラキラ感、そして、出来れば“色気”を感じたい。
これまでのコンクールで数多く演奏されたこの曲も、特に高校生の演奏には、いかに素晴らしかろうと、この“色気”を思わせるモノはなかなか、なかったように思います。
吹奏楽でオーケストラの曲をやる場合、管楽器には“弦の響き”は到底、表現できないので原曲とは違う“何か別のモノ”を作り出すのがベストだと私は思っています。
ですが、この曲だけは、やっぱり弦楽器を意識せざるを得ない。
そういう意味ではブリッツの演奏は完璧だった!
弦を意識しているから、“色気”がムンムン。
表現は悪いですが、とびっきり美しい大人の女性を見ているような気がしましたね。
素晴らしかった!!
それと当然ですがソリストの皆さんのテクニックは、ブラヴォー!
ステキな演奏の余韻に浸りながら、会場の観客の皆さんと拍手をしていましたら、アンコール曲をするようです。
最初に発表があったとおり、当日、会場に楽器を持ってきた観客の皆さんとブリッツメンバーとの“合奏”。
でも、準備するのに少し時間がかかるので、その間に1曲。
ミュージックパートナーの三澤慶氏の作品で、ある演奏者の方の酒宴での様子を描いた曲とのこと(笑)(確か「打ち上げパーティギャロップ」と紹介されていたような…。間違っていたらゴメンナサイ。)
とても愉快な曲でした!
そして、観客の皆さんと合同演奏。
曲は、「宝島」。
盛り上がらない訳はありませんね。
普段は禁止の舞台の撮影もOKとのこと。
皆さん楽しそうで大変、盛大に演奏会は終わりました!
ただ…、、、
この日の演奏会は、とても素晴らしいものでした。
課題曲は、コンクールでの模範演奏と言うよりも個性を持った楽曲の演奏に聴こえ、工夫を凝らされたパフォーマンスは実に心地よいものでした。
その他の曲も“大人”を感じさせるものでした。
色っぽかったですねェ。
だからこそ…。
少しでも、そのステキな余韻に浸っていたかった。(コンサートで、あまりに感動が深い時は、アンコール曲ですら、ジャマな時があります。)
でも、この観客との合同演奏は…、私にとって不必要なものでした。
合同演奏の喧騒が“余韻”をどこかに吹き飛ばしてしまった…。
舞台と客席との距離を縮めたい、演奏者と観客との一体化したいという意図は痛いほどわかりますが、そのような“距離”は、物理的ではなく、音楽で精神的につながるのがベストだと私は思います。
と言うか本編の演奏の部分で「ブリッツ フィルハーモニック ウィンズ」と観客は既に精神が繋がっていたのに…。
少し、言い過ぎてしまいました…。
ただ、こう思っているオヤジがいるという事だけは書かせて頂きました…。(ただ静かに音楽を聴きたいだけなのです。)
そして、一笑に付して頂ければ幸いです。
「ブリッツ フィルハーモニック ウィンズ」のサウンドが好きです。
そのパフォーマンスが好きです。
そして、これからも演奏会に行かせて頂きます。
楽しみにしています…。