篠田監督から安間監督へ代わっての初戦は、改善点と課題が顕示された試合となった。3バックは継続しながら、アンカーシステムは取らずに3-4-3あるいは3-4-2-1といった布陣で挑んだFC東京だったが、対する仙台も同様の布陣ゆえミラーゲームといった体裁になったこともあり、前半は互いに際だった動きが少ない試合に。特に仙台はFC東京の監督交代1試合目というタイミングとこれまでの味スタでの“分の悪さ”も考慮してか、まずはリスクを負わずに試合に入ろうという意志が感じられた。ちなみに、仙台の味スタでの相性の悪さは次のとおり。
【味の素スタジアムでの対仙台戦 戦績】
2002/10/26 FC東京 2-0 仙 台（東スタ）
2003/07/06 FC東京 2-0 仙 台（味スタ）
2010/05/05 FC東京 0-0 仙 台（味スタ）
2012/12/01 FC東京 6-2 仙 台（味スタ）
2013/12/07 FC東京 2-0 仙 台（味スタ）
2014/07/27 FC東京 3-0 仙 台（味スタ）
2015/07/29 FC東京 3-1 仙 台（味スタ）
2016/10/29 FC東京 1-0 仙 台（味スタ）
ボールポゼッションを意識した攻撃スタイルを展開しようとしたFC東京。パスを繋いで相手陣内へ攻め込もうという意図は感じられたものの、やはりサイドへ振ってもバックパスや横パスという選択肢が重なり、ゴール裏からは前体制との明確な変化をピッチで表現出来ていないと感じたのか、ため息やブーイングの回数も時間が経つにつれて起こってきた。両チームともに決定機がなく、シュート数も僅かであったこともその反応を増加させた要因の一つでもあっただろう。
確かに、バックパスという選択に慣れてしまっていてなかなか抜け出せない状況になっているのも事実だが、原因を探れば、それはバックパスで“逃げる”という以上に、常にボールを足元で受けてしまうクセや前線の動き出しとの連動性がまだまだ噛み合わず、タイミング良くボールを出せないことが大きく起因していた。加えて、味方との距離感がもう一つ縮まらないことと、相手にとっては格好の餌食となりそうなパススピードの遅さが自分たちの攻撃を苦しくしていたといえる。特にゴールに背を向けた時のゆるいバックパスは完全に命取りとなる（試合終了直前にもそのピンチを作ってしまった）。それほどプレスをかけてこなかった仙台だったから良かったものの、これがリーグ順位上位陣が相手だと不用意なミスから簡単に仕留められていただろうということは、想像に難くない。
とはいえ、従来では見られなかったパス交換から前へ窺う姿勢が見えたことは、明るい兆しと考えても良さそうだ。特に大久保嘉人がボールを受けて出すという動きが増え、パスミスも相変わらず多かったものの高萩も縦パスのチャレンジを積極的にしていた。サイドについては太田はまだ縦への勝負へ挑めないもどかしさは続くが、右の柳は相手に引っかけられるなどミスの方が多かったとはいえ、チャレンジをする姿勢は見えた。後は単純に精度の問題。ただ、ミスが増えると積極性を欠き、継続出来ずに後ろへ戻すことが増えてしまったのは残念だったが。その点では及第点には微妙なものの、今のFC東京には精度以上に積極性、ゴールを奪いにいくという姿勢が重要だと考えれば、次へと繋がる反省が身になるミスだと思いたい。その意味では太田をはじめ、徳永や東らにはもっとスピードを落とさずにチャレンジをする意識を求めたい。ビルドアップしながらスローダウンしてしまう攻撃からの脱却へはまだ遠いが、各自が持つ意識の強さと自ら動くという献身性が周囲と一致した時には、素早い連動性が生まれそうな“欠片”は窺い知ることは出来た。
後半途中から中央にスペースが出来始めて両チームともに積極性が生まれると、仙台は三田のミドルなどで得点を狙う一方、FC東京もボックス付近でのパス交換からシュートを放つ場面や、仙台のファールからのFKというチャンスを作っていく。ゴールの匂いが感じられた67分、太田のCKからのニアへ送ったクロスをチャン・ヒョンスが頭で合わせてFC東京が先制。すると、仙台も攻撃のギアを上げるべくリャン・ヨンギ、クリスランを2枚替えでピッチに送り出し、中央と両サイドを速いグラウンダーのパスなどで繋げながら攻勢を強めていくも、FC東京も必死に守りを固めて失点を許さない。ただ、FC東京は2点目を奪って試合を楽にするのか、1点を死守するためにリスクを避けるのかというチームでの意思統一が不安定な状況も見え隠れし、中途半端なプレーが疲労と共に散見されたのは大きな課題、修正要件の一つだった。
その後、一進一退の攻防が続き、5分というアディショナルタイムが与えられるが、FC東京は選手起用でそれほど劇的な爆発力が出なかった仙台にも助けられ、1点を最後まで死守。しかしながら、試合終了直前にチャン・ヒョンスが自陣でゴールに背を向けて出した緩いバックパスがクリスランに奪われ、GK林も飛び出して無人のゴールとなる決定的な場面を作ってしまったことは、大いに反省しなければならない。
監督が交代したとはいえ、ピッチで表現するのは選手たち。攻撃への意識やフリーランニングの積極性などには課題が山積みで、正直なところ仙台のパフォーマンスに助けられた比重も少なくなく、満足出来る試合では全くない。だが、監督交代早々チームが激変することはほぼない状況において、僅かながらでもひたむきさと前への意識が生まれつつあったことは評価出来る。大切なのはこれを一喜一憂の結果に囚われずに継続していくこと。すぐにピッチで具現化出来ずとも焦れずに根気よくトライしていくことだ。そこに少しでも集中力の欠如や散漫な意識が見られたら、すぐにポジションを奪われるという競争を呼び起こし、チームとしての成熟を図っていくよう繋げていきたい。
◇◇◇
【明治安田生命J1リーグ戦 第26節】
2017年09月16日(土)19:03 試合開始 味の素スタジアム
入場者数 17,940人
天候 雨 ／ 気温 19.3℃ ／ 湿度 78％
主審 榎本一慶 ／ 副審 戸田東吾、前之園晴廣 ／ ４審 竹田和雄
FC東京 1（0-0 / 1-0）0 仙 台
≪得点≫
（東）： チャン・ヒョンス（67分）
（仙）：
◇◇◇
【FC東京 メンバー】
≪スターティングメンバー≫
GK 33 林 彰洋
DF 22 徳永悠平
DF 14 チャン・ヒョンス
DF 05 丸山祐市
MF 26 柳 貴博
MF 37 橋本拳人
MF 08 高萩洋次郎
MF 06 太田宏介
FW 38 東 慶悟 → 米本拓司（83分）
FW 15 永井謙佑 → ピーター・ウタカ（66分）
FW 13 大久保嘉人
≪サブスティテューション≫
GK 01 大久保択生
DF 04 吉本一謙
MF 21 ユ・インス
MF 25 小川諒也
MF 07 米本拓司
FW 20 前田遼一
FW 09 ピーター・ウタカ
≪監督≫
安間貴義
◇◇◇
◇◇◇
【2017明治安田生命J1リーグ FC東京 日程】
第01節 02/25(土)14:00〇FC東京 1-0 鹿 島（A・カシマ）
第02節 03/04(土)15:00〇FC東京 2-0 大 宮（H・味スタ）
第03節 03/11(土)19:00✕FC東京 0-3 Ｇ大阪（A・吹田Ｓ）
第04節 03/18(土)19:00〇FC東京 3-0 川 崎（H・味スタ）
第05節 04/01(土)16:00△FC東京 3-3 鳥 栖（H・味スタ）
第06節 04/08(土)19:00✕FC東京 1-2 札 幌（A・札幌ド）
第07節 04/16(日)14:00✕FC東京 0-1 浦 和（H・味スタ）
第08節 04/22(土)16:00〇FC東京 3-0 新 潟（A・デンカＳ）
第09節 04/30(日)15:00〇FC東京 1-0 広 島（H・味スタ）
第10節 05/07(日)14:00〇FC東京 2-0 仙 台（A・ユアスタ）
第11節 05/14(日)15:00✕FC東京 1-2 柏 （H・味スタ）
第12節 05/20(土)19:00△FC東京 1-1 神 戸（A・ノエスタ）
第13節 05/28(日)16:00△FC東京 1-1 甲 府（H・味スタ）
第14節 06/04(日)13:00〇FC東京 2-0 清 水（A・アイスタ）
第15節 06/18(日)18:00✕FC東京 0-1 横浜FM（H・味スタ）
第16節 06/25(日)18:00✕FC東京 0-2 磐 田（A・ヤマハ）
第17節 07/02(日)19:00✕FC東京 1-3 Ｃ大阪（A・金鳥スタ）
第18節 07/08(土)19:00△FC東京 2-2 鹿 島（H・味スタ）
第19節 07/30(日)19:00△FC東京 1-1 新 潟（H・味スタ）
第20節 08/05(土)19:00△FC東京 1-1 川 崎（A・等々力）
第21節 08/09(水)19:00〇FC東京 2-1 大 宮（A・NACK５）
第22節 08/13(日)19:00〇FC東京 1-0 神 戸（H・味スタ）
第23節 08/19(土)19:00✕FC東京 1-2 浦 和（A・埼 玉）
第24節 08/26(土)19:00✕FC東京 0-1 横浜FM（A・日産ス）
第25節 09/09(土)19:00✕FC東京 1-4 Ｃ大阪（H・味スタ）
第26節 09/16(土)19:00〇FC東京 1-0 仙 台（H・味スタ）
第27節 09/23(土)16:00 FC東京 vs 柏 （A・ 柏 ）
第28節 09/30(土)16:00 FC東京 vs 磐 田（H・味スタ）
第29節 10/15(日)14:00 FC東京 vs 甲 府（A・中銀スタ）
第30節 10/21(土)16:00 FC東京 vs 札 幌（H・味スタ）
第31節 10/29(日)17:00 FC東京 vs 清 水（H・味スタ）
第32節 11/18(土)14:00 FC東京 vs 鳥 栖（A・ベアスタ）
第33節 11/26(日)13:00 FC東京 vs 広 島（A・Ｅスタ）
第34節 12/02(土)14:00 FC東京 vs Ｇ大阪（H・味スタ）
◇◇◇
