*** june typhoon tokyo ***

The Brand New Heavies@BLUENOTE TOKYO



 “エンジョイ”が原点のファンキーな一夜。

 アシッド・ジャズ・シーンを闊歩してきた英のファンク・バンド、ザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズ(BNH)の東京公演ファイナルとなる2ndショウを観賞。これまではビルボードライブ東京での公演が多かったが、今回も昨年9月に続いてブルーノート東京での公演となった。これまでの彼らの公演観賞記録は次の通り。

2003年06月 新宿リキッドルーム
2006年12月 ラフォーレミュージアム六本木
2007年11月 ビルボードライブ東京
2008年12月 ビルボードライブ東京
2010年02月 ビルボードライブ東京
2011年11月 ビルボードライブ東京
2013年05月 duo music exchange
2013年09月 ブルーノート東京

 昨年のブルーノート東京公演からドーン・ジョセフをメイン・ヴォーカルに据えたヘヴィーズ。どうやら昨秋から正式にメンバーとなった模様。ドーンは“メアリー・J.ブライジやアリシア・キーズに対する英国からの回答”との触れ込みのようだが、そこまでヒップホップソウル感もないし、アリシアとも異なる。どちらかといえば、ヘアスタイルも含めて、アンジェラ・ジョンソン風というところか。経歴については前回の記事を参照してもらうとして、ドーンのヘヴィーズ加入は高い化学反応を示したといえる。



 ヤン・キンケイド、サイモン・バーソロミュー、アンドリュー・レヴィの3人にドーン・ジョセフの新生ヘヴィーズを支えるのは、左奥に坐したキーボードのマット・スティール、ヤンの右隣でマラカスとバック・ヴォーカルを担当するローレン・ジョンソン(ピンク色のショートヘアで、こちらの方がメアリー・J風の顔立ちだった)、右端のホーン隊のジム・ハント(サックス)、シド・ゴウルド(トランペット)の面々。マット・スティールは前回のブルーノート東京公演でも帯同。シド・ゴウルドはインコグニートのホーン・セクションでもおなじみの“ヨッパライ”隊の一人だ。

 おそらく過去のライヴ記事で何回も書いているだろうが、彼らのライヴの醍醐味は即座に楽しめることだ。それを一番に体現しているのが、誰よりも本人たち自身だと窺えるのも、非常に魅力的。ストールマフラー風の飾りやサングラスなどの小物を着けている姿はチープだが、ともかく全力で弾けて楽しもうという心意気が伝わってくる。
 それはもちろんステージ上でのパフォーマンスもそうだが、心躍らせるグルーヴィなサウンドにも起因する。9月にドーンを含めた4人が映ったジャケットの新作『スウィート・フリークス』はファンキー・ソウル/ディスコのてんこ盛りでパーティ・バンドの真骨頂をみせた快作となったが、そのヴァイブスをステージへそのまま憑依させた感じ。観客ともアイコンタクトをとったり、声を掛け合うなど茶目っ気たっぷりの彼らは、ただでさえ近いブルーノートのステージをいっそう近く感じさせる“マジック”でヴォルテージを一瞬にして上昇させていく。

 また、利き腕確かなバンド・メンバーによってサウンドがゴージャスに彩られているのも、高揚を煽る重要なピースの一つ。ソロ・パートも含め、目立ち過ぎず、しかしながら強いインパクトを残すジム&シドのホーン隊の演奏はクオリティも高く、何よりツボを押さえたその出し入れの巧みさが出色。連続して帯同したマットの鍵盤も手馴れた風。そして、特にバック・ヴォーカルのローレン・ジョンソンの存在がこのバンドの厚みを生み、芯を支えていたのではないか。少なめだがソロ・パートを任される部分もあり、パッと眼前がより輝くような瞬発力と肚というか重心のしっかりとしたヴォーカルは、これまでメイン・ヴォーカルに依っていた調子をバックアップするのに充分だった。

 構成はというと、愛すべき“マンネリ”から大きく脱せず。新作『スウィート・フリークス』からは「ブリング・ザ・レイン」とタイトルからも想起出来そうなシック風ディスコ「スウィート・フリーク」の2曲に留まったが、ピーター・ガブリエル「スレッジハンマー」のジェイムス・ブラウン調カヴァーや「イン・ザ・ネイム・オブ・ラヴ」「'95 トゥナイト」といったキラー・チューンもあるのだから、もう少し新作の配分があってもいいとは感じた。それがドーンの持ち味をさらに引き出すことにも繋がるのではないかと思う。
 そのあたりを考えると、“やっぱりヘヴィーズはエンディア・ダヴェンポートなのでは”と漏らす人もある程度はいるだろう。確かにインパクトという意味では(特に脇目も振らずに独壇場となるほどの印象を残す)エンディア・ダヴェンポートには半歩足らないような気もするが、バンドの一体感やフィットという意味ではドーンのパフォーマンスは歴代のBNHのヴォーカリストのなかでも一二を争うところにいると思う。それがさらなる伸びしろがありそうだというのだから、推して知るべしだ。

 終盤は新作アルバムのリード曲「スウィート・フリーク」から「ステイ・ディス・ウェイ」、アンコール明けに「ユー・アー・ザ・ユニヴァース」「ドリーム・カム・トゥルー」とBNHクラシックスで幕。ベタな選曲構成ではあるが、どこまでもその場の“ノリ”でエンジョイしてフロア全体を巻き込んでしまう彼ら。そんなステージ上の彼らへ熱い視線を送り、最高のグルーヴに身体を揺らしたオーディエンスも、この夜のパーティをエンジョイすること“だけ”を貫いたいわばヘヴィーズの一員“Sweet Freaks”(=極上のBNHマニア)と化していた。アンコール終演後、メンバーたちが一列に並んで挨拶する間際にフロアから「ドリーム・カム・トゥルー」のコーラス・フレーズの大合唱が起こる。それに対してジャンプやラインダンスで応えるメンバー。フロア全体が“ヘヴィーズ”と化したその場面に、誰もがこのライヴを満喫したという充実感が凝縮されていたといってもいいだろう。

 純粋に音に酔い、思うがままに反応する快感を知らしめた彼ら。ベタなフレーズのループが極上に感じるファンク・ミュージックよろしく、最高のグルーヴを鳴らし続けさえすれば“エンジョイ”は永遠なのさ……そんなメッセージも感じられたファンキーな夜だった。

◇◇◇

<SET LIST>
01 Introduction
02 Back To Love
03 Never Stop
04 Dream On Dreamer ~ Midnight At The Oasis
05 Bring The Rain (*)
06 Heaven
07 Gimme One Of Those
08 Sometimes
09 Spend Some Time
10 Sweet Freeek (*)
11 Stay This Way(including phrase of“Shake Your Body(Down To The Ground)”by The Jacksons)
≪ENCORE≫
12 You Are The Universe
13 Dream Come True

(*):song from album『Sweet Freaks』

<MEMBER>
Jan Kincaid(key,ds)
Simon Bartholomew(g)
Andrew Levy(b)
Dawn Joseph(vo)

Sid Gauld(tp)
Jim Hunt(sax)
Matt Steele(key)
Lauren Johnson(back vo,per)

◇◇◇









<番外編>



カラオケ、キムチラーメン、ヨドバシカメラ……
このヴィデオ、本気でカッコイイと思って撮ってるんですかねぇ?

ただ、日本を愛してくれていることだけは解かります。(笑)


Sweet Freaks
The Brand New Heavies
Imports

スウィート・フリークス
ザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズ
Pヴァイン・レコード

Never Stop/Best of Brand New Heavies
The Brand New Heavies
Music Club Deluxe







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