気温はそれほどではないものの湿度が高く、体力と精神が疲労が蓄積しやすい環境のなかでの多摩川クラシコは、両者とも課題を残す一戦となった。
FC東京は先日から採用した3バックを継続。左ウイングバックを小川から太田に、ディフェンダーの山田を吉本にスイッチして川崎に挑む。だが、前半は全くと言っていいほどボールが奪えず、川崎の攻撃を受け続ける展開。川崎は素早い縦パスとサイドチェンジでボールを前へ動かし、大島や小林悠がミドルを放っていく。前半終了間際には、右奥サイドで大島のパスに抜け出した小林悠がボックスへ侵入し、フリーの阿部へグラウンダーのクロスを送るも、阿部のシュートはポストに弾かれ、FC東京は難を逃れる。一方、FC東京は中島とウタカを起点にした攻めを構築するが、単発に終わることが多く、主導権を握れないまま前半を終えた。川崎は前節の磐田戦での大敗を意識したのか、思ったほど圧力を前に掛けた攻撃は見られず、あくまでも失点をしないなかで攻勢に出るというスタンスのようにも見え、その分FC東京は川崎の決定力と前への圧力不足に助けられた感じだ。
だが、後半早々にFC東京にチャンスが訪れる。米本が左サイドでフリーになっていた太田へ長いボールを入れると、太田はディフェンダーとのマッチアップで切り返しての右足でクロス。中央でフリーになっていた中島がドンピシャのヘディングを決めて、FC東京が先制。そうなると、川崎も得点を奪おうと連続で攻勢に出たことで、次第に中盤が間延びするようになると、FC東京もカウンターを出しやすい展開へ。川崎のプレッシャーも弱まり、米本や途中出場の大久保嘉人がミドルを放っていく。川崎も幾度となく攻撃を仕掛けるが、FC東京のGK林やDFの身体を張ったブロックもあり、ゴールを割らせないまま終盤へ。何とか逃げ切りを図りたいFC東京だったが、89分に左CKから谷口が頭で合わせて、川崎が土壇場で同点に追いつく。
アディショナルタイムが5分と発表されると、スタジアムの歓声もいっそう高まり、ミドルやカウンターの応酬へ。2分を過ぎた頃には永井が左サイドを直進してボックス左奥から倒れ込みながらのクロスに、大久保のヘディングシュートは枠外。さらに、カウンターで永井がゴールに迫るも、シュートは枠の僅か左に外れて勝ち越しならず。多くが試合後座り込んだ多摩川クラシコは、決着つかずのドローとなった。
確かに痛み分けではあるが、シュート数では川崎23本に対し、FC東京は9本とホームの川崎が圧倒。前半終了間際の阿部のシュートが決まっていたら、全く異なる展開になっていただろう。川崎は特に前半ではボールを楽に持てていただけに、やや失点を避けるということに重点を置きすぎたようだ。攻守の切り替えも、それほど素早くはなかった印象ではあった。
それ以上に、FC東京は後半こそ攻勢を掛ける時間帯があったものの、前半はサッカーをさせてもらえず。左サイドの太田は攻守両面においてワンテンポ遅れて始動するので、まだ連動性が見られない中盤、米本や橋本らの動きも微妙に遅くなる。特に守備においては太田が簡単に抜かれると、そのフォローに詰めていた米本らまでもが一気に剥がされて、ディフェンスの裏のスペースをことごとく使われて苦しんだ。前半終了間際の小林悠の侵入などはその最たるものだ。
また、攻撃でもまだゴールに背を向けたプレーが多い。中島やウタカの個人技でボックス付近へ進出はするものの、シュートまでは至らない場面多数。米本や高萩が左サイドからフリーの右サイドへ展開する場面もあったが、室屋はまだ前へチャレンジする向きも窺えたが、徳永はハーフウェーまでは持ち込みながらチャレンジせず、必ずスローダウンして出しどころのタイミングを逸して背を向けてバックパスをする毎度ながらの光景も散見。3バックにしても、相変わらず安易に最終ラインへ戻すクセは改善されないまま。結局、林からリスキーなロングボールを前線に送ることになり、相手へ易々とマイボールを渡してしまっていた。
その林も毎試合好セーヴを続けてはいるが、最近の試合では“頭の疲労”も蓄積されているのか、当初の好セーヴ連発の勢いも次第に最後まで持続出来ず、ここぞという時の判断ミスが出始めているのは気になるところ。89分に谷口に決められたヘディングシュートも、DF陣との連係が合わずに飛び出したもののボールに触れられずにゴールを許してしまう形に。前節の新潟戦でもセットプレーからの失点だっただけに、早急な修正が求められる。
最後まで手に汗握る熱戦ではあったと思うが、FC東京にしてみれば、これで6月4日の第14節清水戦以来勝利なし。ここ10試合では勝利したのがその清水戦のみで1勝5分4敗。勝ち点は8しか積み上げられていない。新システムで試行錯誤のなか改善されている部分もあるとはいうが、ACL圏と降格圏への勝ち点差がほぼ同じという状況は変わらず、このまま勝ち点3を重ねていけないようだと、降格争いに巻き込まれる状況も多分に考えられる。
次節はミッドウィークで大宮、週末に神戸と中3日が続くハードスケジュール。さらに、相性の悪い浦和、ここ5試合負けなしの4位と好調の横浜F・マリノス、首位を走るC大阪と厳しい戦いの連続となる。シーズンは残り14試合あるものの、ピッチでもクラブにおいても素早い判断が重要視される状況になってきている。大久保嘉人が途中出場ながらプレー出来たという明るい話題もあるが、考えている以上に危険水域だと意識して、闘っていかねばならない。
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【明治安田生命J1リーグ戦 第20節】
2017年08月05日(土)19:03 試合開始 等々力陸上競技場
入場者数 25,043人
天候 曇のち晴 ／ 気温 28.2℃ ／ 湿度 84％
主審 扇谷健司 ／ 副審 山際将史、植田文平 ／ ４審 柿沼亨
川 崎 1（0-0 / 1-1）1 FC東京
≪得点≫
（川）： 谷口彰悟（89分）
（東）： 中島翔哉（49分）
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【FC東京 メンバー】
≪スターティングメンバー≫
GK 33 林 彰洋
DF 22 徳永悠平
DF 04 吉本一謙
DF 05 丸山祐市
MF 02 室屋 成
MF 08 高萩洋次郎
MF 37 橋本拳人
MF 07 米本拓司 → 東 慶悟（90+2分）
MF 06 太田宏介
FW 09 ピーター・ウタカ → 永井謙佑（84分）
FW 23 中島翔哉 → 大久保嘉人（76分）
≪サブスティテューション≫
GK 01 大久保択生
DF 25 小川諒也
MF 10 梶山陽平
MF 15 永井謙佑
MF 38 東 慶悟
FW 13 大久保嘉人
FW 20 前田遼一
≪監督≫
篠田善之
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【2017明治安田生命J1リーグ FC東京 日程】
第01節 02/25(土)14:00〇FC東京 1-0 鹿 島（A・カシマ）
第02節 03/04(土)15:00〇FC東京 2-0 大 宮（H・味スタ）
第03節 03/11(土)19:00✕FC東京 0-3 Ｇ大阪（A・吹田Ｓ）
第04節 03/18(土)19:00〇FC東京 3-0 川 崎（H・味スタ）
第05節 04/01(土)16:00△FC東京 3-3 鳥 栖（H・味スタ）
第06節 04/08(土)19:00✕FC東京 1-2 札 幌（A・札幌ド）
第07節 04/16(日)14:00✕FC東京 0-1 浦 和（H・味スタ）
第08節 04/22(土)16:00〇FC東京 3-0 新 潟（A・デンカＳ）
第09節 04/30(日)15:00〇FC東京 1-0 広 島（H・味スタ）
第10節 05/07(日)14:00〇FC東京 2-0 仙 台（A・ユアスタ）
第11節 05/14(日)15:00✕FC東京 1-2 柏 （H・味スタ）
第12節 05/20(土)19:00△FC東京 1-1 神 戸（A・ノエスタ）
第13節 05/28(日)16:00△FC東京 1-1 甲 府（H・味スタ）
第14節 06/04(日)13:00〇FC東京 2-0 清 水（A・アイスタ）
第15節 06/18(日)18:00✕FC東京 0-1 横浜FM（H・味スタ）
第16節 06/25(日)18:00✕FC東京 0-2 磐 田（A・ヤマハ）
第17節 07/02(日)19:00✕FC東京 1-3 Ｃ大阪（A・金鳥スタ）
第18節 07/08(土)19:00△FC東京 2-2 鹿 島（H・味スタ）
第19節 07/30(日)19:00△FC東京 1-1 新 潟（H・味スタ）
第20節 08/05(土)19:00△FC東京 1-1 川 崎（A・等々力）
第21節 08/09(水)19:00 FC東京 vs 大 宮（A・NACK５）
第22節 08/13(日)19:00 FC東京 vs 神 戸（H・味スタ）
第23節 08/19(土)19:00 FC東京 vs 浦 和（A・埼 玉）
第24節 08/26(土)19:00 FC東京 vs 横浜FM（A・日産ス）
第25節 09/09(土)19:00 FC東京 vs Ｃ大阪（H・味スタ）
第26節 09/16(土)19:00 FC東京 vs 仙 台（H・味スタ）
第27節 09/23(土)16:00 FC東京 vs 柏 （A・ 柏 ）
第28節 09/30(土)16:00 FC東京 vs 磐 田（H・味スタ）
第29節 10/15(日)14:00 FC東京 vs 甲 府（A・中銀スタ）
第30節 10/21(土)16:00 FC東京 vs 札 幌（H・味スタ）
第31節 10/29(日)17:00 FC東京 vs 清 水（H・味スタ）
第32節 11/18(土)14:00 FC東京 vs 鳥 栖（A・ベアスタ）
第33節 11/26(日)13:00 FC東京 vs 広 島（A・Ｅスタ）
第34節 12/02(土)14:00 FC東京 vs Ｇ大阪（H・味スタ）
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