ヒゲジイのアル中よもやま話

断酒を始めて早7年目。このブログは回復プロセスの記録と脳のリハビリを兼ねて綴っています。やはり、まだチョット変ですかネ?

丸めた背中

2017-11-21 07:06:17 | 雑感
 もう1ヵ月前のことになってしまいました。台風21号が四国沖を紀伊半島に近づきつつあった日のことです。昼の12時過ぎ、雨の中を近くにある美術博物館へ広重展を見に出かけました。『雨、雪、夜 風景版画の魅力をひもとく』と銘打った展覧会でした。

 美術博物館は歩いて15分ほどのところにあり、その途中、歩道に面して東屋を備えただけの小さな緑地があります。ここも私のゴミ拾いの巡回コースの一つで、そこにあるちっちゃな東屋はいつも一服する憩いの場所です。東屋は2棟あり、いずれもその中心部にある4本の鉄柱で屋根が支えられ、その鉄柱を囲んだ井形の板がベンチという同じ造りになっています。

 その緑地前を通りかかったとき、東屋でスズメたちが雨宿りをしているのが見えました。いつもならベンチ周辺で三々五々地面を啄んでいるのですが、ベンチの上に10数羽のスズメが1列に行儀良く並んで一斉に西を向いていたのです。

 不穏な雲の動きを見せる鈍(にび)色の曇空と、時折小雨交じりに吹きつける東寄りの北風がスズメたちにも嵐の接近を告げていました。そのスズメたちは、私に気付いて一斉にこちらを向きはしましたが、そうしただけで一羽たりとも飛び立つものはいませんでした。それが何とも微笑ましく、風に逆立てられた羽毛が背中を丸めたように見えたのも可愛いものでした。

 さて、そんな微笑ましい光景を見た後の浮世絵の広重展です。保永堂版東海道五拾三次の全作品が揃っていて、中でも印象深かったのはやはり看板通り、雨の情景でした。

 特に『庄野 白雨』では、右から吹き付ける風雨に撓った竹林が影絵のように背景に描かれ、左下がりの街道を驟雨に見舞われた駕籠舁きや旅人たちが急ぐ様は圧巻でした。広重にしては珍しくダイナミックな動きを感じさせる描写で、その仕掛が右上から吹き付ける風雨の斜線と左下がりに描かれた街道の斜線とが直角に交わった構図にあることがよくわかりました。

 ところで、ほぼ同時代の作家・北斎の描く風景画の画風が動とすれば、広重の方は静ではないかと考えています。両者の違いの象徴は画中の人物描写ではないでしょうか。北斎の動は、波濤ばかりでなく北斎漫画の人物デッサンにも凝縮されています。これに対して広重の人物描写は、背中を丸めた旅人の静かな立ち姿が印象的です。これがどの作品にも共通していて、街道風景とよく絡んで一種独特の旅情を醸し出しているのです。

 実は、この広重展の数日前に北斎展にも行っています。北斎展は大入り満員状態で、人だかりの中で右往左往する鑑賞でした。それに比べれば広重展は貸し切り状態のようなもので、まさに動と静の違いがありました。そのことがこんな感慨を生んだのかもしれません。

 久しぶりの絵画鑑賞はこんな頭の体操にもなりました。また、広重の背中を丸めた人物描写がどこか水木しげるの人物描写を彷彿させたので、水木しげるの画風に漂う独特な情趣はひょっとしたら広重が原典だったのかと勝手な連想までも膨らませました。

 この日は、雨、風、丸めた背中 が強く心に残りました。特にスズメたちの姿が忘れがたく、理屈っぽくて散文的な私ですが柄にもなくその時の思いを短歌に仕立ててみました。皆さんならどんなふうに仕上げますか?
  背を丸め 雨宿りする 群れ雀 南から野分 風は北から



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