見もの・読みもの日記

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2018新春旅行:唐代胡人俑(大阪市立東洋陶磁美術館)

2018-01-11 23:32:41 | 行ったもの(美術館・見仏)
大阪市立東洋陶磁美術館 開館35周年記念・日中国交正常化45周年記念特別展『唐代胡人俑-シルクロードを駆けた夢』(2017年12月16日~2018年3月25日)

 このところ、新春の三連休は関西に出かけるのが恒例となっている。今年は、中日の日曜は大阪で文楽公演、三日目の月曜は浜松で遊ぶことにしたので、美術館めぐりができるのは初日の土曜日しかない。いろいろコースを考えたあげく、初日は東京駅8時発の新幹線に乗り、まず大阪入りしてここを訪ねた。

 本展は、中国甘粛省の慶城県博物館が所蔵する約60点により、唐代胡人俑の魅力を紹介するもの。はじめの企画展示室(昨年、汝窯青磁水仙盆が並んだ部屋)には、比較的大ぶりな俑が十数体、ゆったりと展示されていた。なんと言っても一押しは、ヒョウ柄パンツの加彩胡人俑。大阪のおばちゃんも大喜びだろう。SNSで「唐の時代のピコ太郎」と噂になっていると聞いたときは笑ってしまった。



 ほかにもトンガリ帽子をかぶってブーツを履いたり、馬や駱駝の手綱を取るポーズだったり、なるほど胡人だなと思うものがある一方、顔立ちが「濃い」だけ(?)で胡人に分類するのはどうなんだろうと思うものもあった。↓この「深目高鼻」は典型的な胡人の容貌だというのだが。



 ↓これは漢人の美男子で通りそうだが、やはり胡人俑。円領(丸襟)の胡服(長袍)を着る。裾はたくしあげてベルトに挟む。合わせは右衽(右前)だが、胡服は左衽(左前)ではなかったか?と思って調べたら、ネットに「中国は胡服を取り入れるとき、左衽(左前)を右衽(右前)に変えた」という説明があった。



 展示品にはいずれも「慶城県博物館所蔵/甘粛省慶城県穆泰墓出土」というキャプションがついていて、どこだか全く分からなかったが、第1展示室の外に、詳しい地図と解説があった。甘粛省慶城県は西安(長安)の北西。図録解説から摘記すると、唐代には慶州と呼ばれ、漢民族と北方少数民族が接触する辺境地帯だった。2001年、開発工事の際に唐代の墓が発見され、出土した墓誌銘から、被葬者は穆泰(ぼくたい、660-729)と判明した。

 これで終わりかと思ったら、第2展示室があり、さらに穆泰墓出土の胡人俑や胡人以外の俑が続いた。↓加彩女子俑。男子の冠と胡服だが、ふっくらした曲線は女性だという。これだから中国の古装ドラマで「男装する女性」が出てきても、ウソ!と責められない。



 珍しい跪拝俑も。大型のものしか知らなかったが、こんな小型(体長40cmくらい)のものもあるのだな。図録によれば、跪拝俑は山西省や河北省の初唐期の墓からしばしば出土しており、当初はそれらの地域の民間習俗と関連していたものが、後に広く伝わったものと考えられているそうだ。面白い。



 また、穆泰の墓誌も出品されていた。黒っぽい素焼きの四角い盒子状の陶器で、内側に罫線を刻して、白い顔料で文字を書いている。「隴西天水人也」が目に入った。史書に記載はない人物だそうだが、墓誌銘によって、生年没年と最低限の履歴が知られる。千二百年も隔たった異国人の私でも、ぽつぽつと意味を取ることができるのだから、漢字って大したものだなあと感心した。

 なお、常設展エリアでは特集展『中国陶俑の魅力』(2017年12月16日~2018年3月25日)を開催しており、館蔵コレクションの中国陶俑をあわせて楽しむことができる。独特の風合いを持つ黄釉加彩俑が魅力的。国立国際美術館との連携企画『いまを表現する人間像』(2017年12月16日~2018年3月25日)も面白い試み。古代の陶俑を見たあとで、佐藤忠良や舟越桂の人物像を見ることができる。

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