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本日の到着便 広瀬隆 『日本近現代史入門ー黒い人脈と金脈ー』 2016 集英社インターナショナル その1

2017年03月04日 | 日本近現代史

  ▲ 広瀬隆『日本近現代史入門ー黒い人脈と金脈ー』 2016 集英社インターナショナル 572頁 定価2500+税

 

広瀬隆 『日本近現代史入門ー黒い人脈と金脈ー』 2016 集英社インターナショナル その1-1

 

本日の到着便 広瀬隆 『日本近現代史入門ー黒い人脈と金脈ー』 2016 集英社インターナショナル

 

近現代史研究である程度名の通った大学研究者は、自ら専門とする近現代資料収集にあたりいわゆる、のちの財閥と呼ばれるような近世から続く資料・各家文庫・文書にも目を通す必要も出てくるだろう。

そのとき、心では思ってはいても、いきなり「黒い人脈・金脈」などというサブタイトルをつけた論文や本を出すわけにはいかない。ジェントルマンらしい、学者として資料に接することになる。一度、旧素封家のお世話になり、繁く通うことになる旧家が、一つ、二つと増えていくと、何のことはない、心には批判的な意識を持ってはいても、いざ論文を書く段になると穏当な書き方になっていくことが多い。

また、極普通の一般市民は、近現代史に特別の興味がない場合、高校の教科書的な通史・通説のまま、鵜呑み・丸呑みの近代日本史のままである。

だから、「日本の近代は、西欧帝国主義の植民地になることなく、近代化は、先人の奮闘で、概ね成功だった。」という印象を持っている人がまだまだ多くいる。

しかし、一度1990年代のバブルがはじけ、また、2008年のリーマン・ショック以降、度重なる日本の沈滞と経済恐慌に遭遇してしまった今、「日本近代成功神話の呪縛」が解け始めている。そしてその呪縛とは何かを問い始めている。

日本の現代は、広瀬隆のような言説の警告を、ようやく、我が身の問題として、認識しつつあるのかも知れない。

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2001年の9.11事件以来、私は日本の戦後史やアメリカ占領期の事件など、興味のそそられる事項中心ではあったが、再検証する意識が自分の問題として、課題となっていた。

幕末・明治維新の歴史も通説の理解では居心地が悪い・・・・・という思いが募ってきたのである。

やはり、近現代史通説の再審が必要だと。

 

 ▲広瀬隆 『日本近現代史入門ー黒い人脈と金脈ー』 2016年 集英社インターナショナル

しばらく私は、広瀬隆の本からご無沙汰していて、日本戦後三大事件、「下山事件」・「三鷹事件」・「松川事件」、や、日本独立前後の、破壊活動防止法制定の頃相前後して起きた「菅生事件」などの工作事件を調べていたことがあった。ほぼ、それらが、工作事件と見なしうることを自分なりに確認したので、ようやく、次の課題に向かうことができるようになったのである。本屋から本日届いたのでざっと頁をめくる。

日本近代史に関わる黒い人脈については、鬼塚英昭の『日本の本当の黒幕』 上・下 2013年 成甲書房が詳しいが、真偽定まらぬ点もある。広瀬隆の金脈調査は、1990年代のロスチャイルド人脈系図でおなじみなのだから、期待しないわけにはいかない。

2007年ー2008年には、この本の親本というか、『日本を動かした怪物たち 持丸長者』 3巻をダイヤモンド社から出版している。広瀬隆の『日本近現代史入門ー黒い人脈と金脈ー』 は『持丸長者』の圧縮兼改訂版の様相があるようだ。参考文献が捨象されているのは、詳しくは『持丸長者』の3巻本を参照してもらうということなのだろうか。

以下この、『日本を動かした怪物たち 持丸長者』 3巻は「幕末・維新篇」376頁、「国家狂乱篇」472頁、「戦後復興篇」492頁 合計1340頁 

▲1800円+税                ▲ 1900円+税             ▲1900円+税

三巻合わせ総頁で合計1340頁 定価合計5600円+税 = 6048円 値段もなかなかのものになってしまったようだ。

広瀬隆は1943年生まれだから、教育は徹底した戦後日本民主主義の中で育ったのだろう。物怖じしない。そのような人物からは、日本近代史は、文字通り狂気じみた権力者たちの150年に見えるのだ。

 

 

 

▼『日本近現代史入門ー黒い人脈と金脈ー』 目次1

▲▼ 『日本近現代史入門ー黒い人脈と金脈ー』目次 

▲▼ 『日本近現代史入門ー黒い人脈と金脈ー』目次 

▲▼ 『日本近現代史入門ー黒い人脈と金脈ー』 目次 

 ▲ 『日本近現代史入門ー黒い人脈と金脈ー』 目次 表・図リスト

 

以下、ピックアップしてみる。

 

 1章

「新政府の人間でよく動いたのは、口先と、剣先と銃の筒先だけであった。」 21頁

「「一君万民」を謳って、幼い天皇を頂上に据えて神に祭り上げ、ほかの国民はすべて平等と宣言しておきながら、新政府は華族社会階級をつくり、やがては彼らに五段階の公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵の爵位を与えた。かくして、政治権力を持った貴族院議員と・・・・金を握った財閥と、多額納税者・・・・・絶大な行政権力を握る官僚機構・・・・武力を握る軍人と警察が、次々と市民・農民・漁民の生活を縛り上げる、新しいブルジョア封建社会?が誕生。」 21頁

「もし明治政府が嘘偽りない民主政府であり、自由平等に向かって政策を進めていれば、1945年の日本敗戦・無条件降伏後に大改革が必要になるはずはなかった。維新後の五年、十年の混乱期というなら、釈明の余地もあろうが、80年近くもそれをしなかったのだから、明治時代が民主主義とはほど遠いものであったことは言うまでもない。」 22頁


1章の終わりには日本の財閥閨閥図が6頁にわたり掲載されている。全財閥が一つの閨閥に収束していくのが総覧できる。このような閨閥系図は行儀のよい通史や、近代史学会誌などではまずお目にかかれないものなので、これだけでも資料的価値あり。

また三井・三菱・安田・住友などの財閥形成について簡潔だが、その実態が明かされている。例えば、住友家が、京都公家の九精華家から徳大寺隆麿を迎える。明治天皇の孝明天皇を養子にした一族と結び、明治政府内部に橋頭堡を築いたように。

王家と財閥と政府の渾然一体となった姻戚閨閥関係が開示されているのだ。

これでは遠からぬ先に亡国の兆しが現れてくるのは必定だ。

 

つづく

 



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