止まらぬ原油安、ロシアの危機
昨晩の22：30JSTすぎに書いたブログ記事で、「これ、原油価格、底打ちしたのと違いますかね？」としましたが、見事に大ハズレ（泣
結果として、そのあとの書いた、「最近の原油価格は、序盤に油断させておいて日本時間深夜や未明にガクッとゆくことが多いですから・・・」の方が的中してしまいました。
NY原油（WTI） 日足
5日・25日移動平均線
ボリンジャーバンド（2σ、3σ）
一目均衡表
MACD
RSI相対力指数
原油ＶＩＸ（恐怖指数）は、５７．４５ポイントへ上昇。
「業界の将来について楽観している。われわれと世界が現在直面している状況は一時的で、やがて終わる」
サウジアラビアのヌアイミ石油相
この発言は、イコール「減産の必要を認めず」
ヌアイミさんは、せっかく反発の気配を示した原油価格に冷水をぶっかけてくれました。
「おっとヤバイヤバイ、上がってきちゃったぞ。ここは一言牽制しておいて、叩き下げておくか」
・・・なんて、まさか思ってなかったでしょうね、ヌアイミさん？
最近の「日本時間深夜や未明にガクッとゆく」は、こうしたオイル関係ＶＩＰの一言が多いです。
止まらぬ原油安。
表裏一体のロシア通貨危機。
英国の世界的石油大手、ＢＰ（以前はブリティッシュ・ペトロリアムの略でしたが、現在は正式社名）。
ＢＰは、ロシア国営石油の大手ロスネフチの株を２０１３年３月に２５０億ドルで取得しました。
ロスネフチ株の１９．７５％に相当。
ＢＰの決算は来年２月で、ＢＰの担当者はノーコメントなのですが、評価損の計上を余儀なくされる公算が大きいと観測されています。
ロシアでは、通貨ルーブルの信用崩壊が進んでおり、国民の間でカネをモノに替える動きが生じています。
先日は外車ディーラーやアップルの販売停止をお伝えしましたが、昨晩はスウェーデン家具大手イケアが、ロシア国内でキッチンや家電の販売を一時停止すると発表。
値上げ前の駆け込み需要が殺到した上に、売り手は為替差損の恐怖で売るに売れない。
このような環境のせいか、ロシア株は意外と底堅い動きです。
同じペーパー資産でも、国家の信用を問われるカネ（ルーブル）よりも、企業の信用が問われる株のがマシ、ということなのでしょう。
モスクワ取引所MICEX株価指数 日足
（単位はルーブル）
ただし、以上はルーブル建ての話。
これがドル建てとなると一変します。
モスクワ取引所RTS株価指数 日足
（単位は米ドル）
ちなみに過去200日平均が約１１７４ドル。
現在７００ドル台半ば。
７月と比較したら今は半額。
そして、ロスネフチに限った話ではありませんが、世界の石油会社にとって原油安の大逆風。
ＢＰ、踏んだり蹴ったりですな。
こうやって石油企業が打撃を受けて、新規事業への投資が鈍れば、原油供給は先細り。
原油価格反転はそれから？
ずいぶん先の話になりそう。
「１９９８年のルーブル危機のときに比べればロシアの外貨準備高は大きく、かつてとはだいぶ違う」
麻生財務相、今朝の閣議後の記者会見で、ロシアの通貨ルーブルが急落していることについて。
「９８年のときのような騒ぎにならないよう、ロシア政府としても対応していると想像する」
麻生さんの見解は正しく、ロシアの外貨準備と金準備は先週時点で合計４１４６億ドル。
昨年末が５０９６億ドルで、今年にルーブル防衛のために約８００億ドルを投じた分を差し引けば、そういう額になります。
この額は、輸入代金を１年以上賄える水準（一般に安全と考えられている最低水準は３カ月分）。
対外債務の返済という尺度では、約４年分に及びます。
どこ角度から見ても、ロシアは安全限界の４倍の基準を保っています。
・・・その割に、ルーブル防衛に投じた金額は手緩くないか？
しかも、緊急利上げで１７％に達した政策金利。
これほどの「劇薬」を投じなければならない環境か？
もしそうなら、劇薬を使わなくてはならないほど、実際の外貨準備は少ないという見方が成り立ちます。
どうも、「流動性の高い」イコール「実際に使えるカネ」というのは、差し引くと２０００億ドル前後らしい、という試算も。
となると、対外債務返済ベースでは２年の猶予に半減します。
昨晩の、プーチン大統領の年次演説の一節、
「現在の好ましくない状況はあと2年続く可能性あるが、いずれ急速に改善へ」
この、２年と合致します。
中銀だけでは効果薄と見て、乗り出してきたロシア財務省によってルーブル相場は小康を得ています。
しかし、まだ安心できる状態ではないのかもしれません。
昨晩のヌアイミ石油相の発言のタイミングも、「シリアのアサド政権を支援するロシアを締め上げる陰謀」という説と関連付けたくなりますね。
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