遊爺雑記帳

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中国の弱点は、石油や食料の輸入依存に戦略矛盾があること

2017-08-21 23:58:58 | 中国 全般
 世界一の人口を抱える中国。鄧小平以来の改革開放経済推進で、人々の暮らしが豊かになり、エネルギーや食糧を輸入する必要が生じています。
 ところがそこに戦略が欠けて矛盾が生じていて、それが弱点となってきているという、おもしろい説があります。
 

中国が抱える意外な弱み「食料自給率の低下」 米国が本気で怒ると中国人の食生活に何が起きるのか | JBpress(日本ビジネスプレス) 2017.8.21(月) 川島 博之

 
1793年、清の乾隆帝は英国から貿易促進のために派遣されたジョージ・マカートニー伯爵に対して、中国は“地大物博”(領土が広く物が豊富)であるから、外国と交易する必要はないと言い放ったそうだ。
 そんな中国だが、モータリゼーションが進展する中で国内生産だけでは石油が足りなくなった。現在、約3億トン輸入している。ちなみに、日本の輸入量は約2億トン。
 石油の輸入は中国の対外戦略に大きな影響を及ぼしている。中東から中国までの輸送路を確保したい。南シナ海の領有を宣言したりインド洋に進出したりする背景には、石油を安全に運びたいとの思惑がある。ミャンマーやパキスタンに多額の援助を行って同盟国化しようとしていることも同様の理由である。

■大豆の搾りかすが家畜飼料に
 そんな中国にとって、石油と同様に海外から大量に輸入するものが現れた。大豆である。現在、中国の大豆輸入量は6000万トンを上回り、世界で交易される大豆の6割にもなっている。日本の輸入量は約300万トン、中国の輸入量は食料輸入大国と言われる我が国の20倍にもなっている。
 大豆を絞って大豆油を得るが、その搾りかすである大豆ケークと呼ばれる粉末は家畜のよい飼料になる。大豆は36%ものタンパク質を含む。トウモロコシのたんぱく質含有量は9%程度だから、家畜へのタンパク質供給を考えた時、大豆6000万トンの輸入はトウモロコシ2億4000万トンの輸入に相当する。中国はまさに大量の家畜飼料を輸入している。

 中国人は豚肉を好む。中国で肉と言ったら豚肉を指すが、現在、中国人が食べている豚肉は大豆ケークを使って生産されている。
 中国は国内で大豆を生産しており、1980年代には170万トンもの大豆を輸出したことがあった。しかし、21世紀に入って自給率は急速に低下しており、2013年は16%に過ぎない。

 日本では食料安全保障が話題になる。なにかのときに、食料が輸入できなくなったら大変だ。それに備えるために、自給率を向上させるべきである。そんな議論であるが、中国もまさにそのような議論を行うべき時代を迎えている。

■食料輸入は政治的理由で途絶する
 中国は大豆を主にブラジル、米国、アルゼンチンから輸入している。2013年の輸入量はブラジルからが3180万トン、米国が2220万トン、アルゼンチンが600万トンである。それは太平洋を超えて渡って来る。

 食料が輸入できなる事態は、大きく分けて2つ考えられる。1つは生産量の減少。食料が足りなくなればどの国も自国の需要を優先するから、米国やブラジルが中国に大豆を売らなくなる事態も想定される。
 しかし、それは杞憂と言えよう。大豆を栽培する畑ではトウモロコシを栽培することができる。農民はより多くの収入が得られる作物を栽培する。現在、米国は1億トン以上のトウモロコシをバイオエタノールの生産のために使用している。それはトウモロコシや大豆の過剰生産を解消するためである。
世界では食料の過剰生産状態が続いている。そのために、食料不足が禁輸につながる事態は考え難い


 
食料輸入の途絶を心配しなければならないのは政治的な理由である。戦争になれば、敵対国に食料を売る馬鹿はいない。また戦争に至らないまでも、その前段階において敵対する国に食料を売らないことをちらつかせて、譲歩を迫る
ことができる。昨今話題の北朝鮮に対する石油の禁輸がその例である。

■中国の対外戦略は思いつきの連続?
 このようなことを考えると、
中国の対外戦略は混乱していると言わざるを得ない。石油の輸入、つまりエネルギー安全保障を念頭に置いて南シナ海やインド洋に進出したのだが、そのことをもっとも面白く思っていないのが米国
だからである。
 中国は
対立を深め始めた米国から大量の大豆を輸入している。ブラジルやアルゼンチンからも輸入しているが、それは米国が制海権を有する太平洋を超えて運ばれて来る。南シナ海の制海権だけでは不十分である。中国は食料安全保障を完全に米国に握られてしまった


 
米国が本気になって怒れば、中国人は豚肉を食べることができなくなる
。それは、一度ぜいたくを覚えた中国人にとって大変な苦痛になろう。もし、そんなことになれば政権への怨嗟の声が国中に満ち溢れることになる。

 中国が南シナ海やインド洋で米国との対立を辞さない行動に出るつもりなら、食生活の根本に関わる豚肉の飼料を米国やブラジルに依存するべきではなかった。
飼料を完全に自給できる体制を整えてから、米国に喧嘩を売るべきであった


 
エネルギーの安全保障を名目に南シナ海やインド洋に進出することによって、食料安全保障を危険にさらしている。マクロな視点から見れば、中国の対外戦略はただの思いつきの連続と言ってよく、そこに整合性を見ることはできない。“場当たり的“と評されてもしかたがないものである。

 石油の需要が増えて、エネルギー安全保障確保のために、輸入ルート確保の為、南シナ海やインド洋の覇権確保を進めてきました。東シナ海や南シナ海への進出は、エネルギー資源獲得の目的もあり、日本とのEEZ境界や、ベトナム他南シナ海沿岸国と古くから軋轢を生じてきました。

 一方で、食糧の輸入依存度も増え、ここでは大豆を例に取り上げておられますが、漁業資源の乱獲でも太平洋、東シナ海、南シナ海等で軋轢を生じていますね。

 戦略なく場当たり的な輸入で矛盾が生じていると指摘されているのは、対米戦略。
 エネルギー確保の為、南シナ海、インド洋などでの力による覇権拡大で米国他の諸国と敵対しながら、大豆の輸入は、米国ほか太平洋経由の国々に依存している。
 食糧輸入の途絶を心配しなければならないのは、現状では政治的な理由。
 エネルギー安全保障の為、力で輸入ルートへの覇権を拡大し、米国と対峙する事態を招きながら、米国から大量の大豆を輸入。米国以外に、ブラジルやアルゼンチンからも輸入しているが、それは米国が制海権を有する太平洋を経由して運ばれて来る。中国は食料安全保障を完全に米国に握られてしまっているのだと。
 大豆の搾りかすである大豆ケークを資料として飼育される豚肉も、米国にゆだねられていることになっている。
 エネルギー安全保障の為に派遣を拡大したことが、食糧安全保障ではブーメラン現象で危機を招いている。
 中国の対外戦略はただの思いつきの連続。整合性を見ることはできず、“場当たり的“と評されてもしかたがないと、筆者・川島氏は指摘されています。

 南シナ海からインド洋を経由して欧州に通じる海路は、今や習近平の政治生命の核となってきた「一帯一路」の海路ともなってきています。
 エネルギー安全保障だけでなく、飽和状態でバブル崩壊懸念が高まる国内経済の救済と、ルート沿いの国々への覇権拡大達成による、毛沢東、鄧小平に並ぶ功績造りでの習近平の独裁基盤造り政策となっています。

 が、弱点を米国に生殺与奪件を握られてしまった、整合性を欠く政策となっているとの指摘です。
 鄧小平が、毛沢東時代の専制政治の政権破綻の危険さを反省し、集団指導体制を築き、今日の発展を得た体制を、毛沢東時代の独裁政治に戻そうとしている習近平。
 その習近平の夢が叶うのか。秋の党大会と、その後が注目されますね。





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