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NATO東方拡大の20年後

2017-02-19 19:49:22 | 欧州情勢複雑怪奇

週末にかけてミュンヘンでセキュリティー・サミットが行われていた。それにあわせてギャロップ他が行った66か国を対象としたアンケートがなかなか面白い。Bloombergに出ていた。

Four NATO Nations Would Pick Russia to Defend Them If Threatened: Poll
https://www.bloomberg.com/politics/articles/2017-02-17/melania-trump-s-slovenia-would-pick-russian-over-u-s-protection

質問は、

誰があなたの味方か?

軍事危機が起こった時、あなたの国の最も好ましい同盟国はどこですか?

青がアメリカ、水色が イギリス、薄い水色がインド

薄いオレンジが米/ロシア、ピンクが中国、濃いオレンジがロシア

記事の中でもハイライトされているように、ポイントは、

  1. ロシアは中国を、中国はロシアを最も重要な同盟者と考えている
  2. トルコ、イラン、ブルガリア、ギリシャ、スロベニアがロシアを選んだ
  3. トルコ、ブルガリア、ギリシャ、スロベニアの4か国はNATOなのにロシアを選んだ

あたりでしょうね。

(1)は、中露は同盟してないですが事実そうだってのが日々確認されている今日この頃ってところです。

(2)は、トルコは新しいけど、ギリシャ、ブルガリアがロシアよりアメリカを選ぶというのは最初からわかりきっていたこと、って感じですね。だってこの両国にとっての脅威はトルコですから。

Bloombergの記事ではハイライトされていないけど、トルコでロシアと答えた人がNATOと答えた人より多かったというのが、実のところ西側さんチームにとっては最も憂慮すべき事件でしょうね。

(多分、ここから各種NGOが活躍して、次のアンケートまでにはなんとかする、とかいうバカな取り組みが活性化すると思う。馬鹿々々しいけどでもやると思う。ウクライナでもさんざんやってた。)

 

さらに、米/ロシア、となっているのはウクライナ、イラク、ラトビアで、これは両方好きよというより、両方に割れているという意味。ただどのぐらいの数値で割れているのかはこの記事では不明。そのうちギャロップのホームページに正式なのが出るだろうからその時になったらまた書きたいと思います。

イギリスという謎の答えは、アメリカ。アメリカにとって最も頼りになるのはイギリスと答えるというのも、歴史的に考えればヘンな話なんだけど、これはアメリカが頼りにしているというより、アメリカに最も敵対してこないのはイギリスだ、といえばなるほどとも思う。そもそも、アメリカと英グループ(イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドがいわゆるファイブ・アイズで、ここだけが本当の情報共有をしていると考えられている。

というわけで、ここからわかることは、私のまとめですが、

  • 過去20年ぐらいのNATOの東方拡大によって、中露同盟ができた
  • NATOは巨大になればなるほど周辺部に矛盾を抱えて結束できなくなっている

ということですかね。

そして、根本的な問題は、

  • NATOはソ連と対峙しようとして作ったが、ソ連側のブロックのワルシャワ条約機構はとっくに解散してる。
  • それをNATOは平和のために使うのではなくてチャンス到来と捉えてほとんど騙しのようにして東欧諸国をNATOに入れ東方拡大した。
これは何のためなんですか?という問題に誰も答えていないという点でしょう。
 
東方拡大を騙しというのは、当時は東西冷戦は終わったという触れ込みだったから、まさかロシアと戦争するためのブロックに入っているという感じは一般に共有されていなかったから。また、以前にウクライナ危機の最中に調べたけど、東欧諸国のほとんどの国でNATOに入ることは国民的議題にされずに入れられており、取られていた世論調査でも圧倒的な賛成を得ていたところはとても少なかった。
 
で、こうやって20年以上が経過したわけだけど、NATO諸国と、東アジア版NATO諸国は、ついに中国、ロシア、イランを敵にして(トルコも?)戦う気なんでしょうか?
 
で、それって一体何のためなの?
 
結局、一極妄想主義というのは、穴倉の中で妄想したような話で、ここから得られる実体的な便益があるであろうと思われるのは、金融資本屋さんと石油・天然ガスの上流企業ぐらいで、それ以外の人にとっては別に実体的な便益などなく、むしろ、始終戦争だ、戦争だ、あいつは敵だ、こいつは工作員だという騒ぎをさせられ、人々は憎しみ合い、ヘイトにより人の心はバカになり、脳みそは一方方向にしか回転しない狂ったマシンのようになり、戦乱のたびに金融に混乱が起きて、石油価格が高騰し等々、迷惑しかない。
 
もう一つ便益を得ているのは、もちろん、軍事産業、情報産業、プロパガンダ関係業者、各種の評論家、著作家、アナリスト等々で、この人たちは戦争を準備することが飯の種。
 
昨日の話の続きみたいな話ですね。
 
そのうち書こうと思っているんだけど、ここに繰り広げられているのは従来の認識による「戦争」ですらない、これに気付くことが重要かなと思ったりしてる。
 
 
■ オマケ:

NATO東方拡大については倉庫に入れてありますのでご参考までに。

ウクライナ動乱:NATO東方拡大問題

http://fanblogs.jp/dtj3/archive/11/0

 


シベリア出兵 - 近代日本の忘れられた七年戦争 (中公新書)
麻田 雅文
中央公論新社

 

ナショナリズムの昭和
保阪 正康
幻戯書房

 


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2 コメント

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『露中包囲外交は金食い虫』 (ローレライ)
2017-02-20 07:57:29
『露中包囲外交は金食い虫』で『武装難民の発生源』で『西側帝国の癌』であることを意見したフリン中将などは危険人物扱いされ干される。
内陸部がほんとの内陸部になった (ブログ主)
2017-02-20 14:07:07
ローレライさん、

中露も大きいけど、イランも大きいですね。あとモンゴル。やっぱりカスピ海っしょ。ここでイランが上海側に加わったことで、内陸側がほんものの内陸になっているような恰好。で、このグループはロシアがミサイルもの全般に強いってのが非常に効いてるなとも思います。

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