人道介入主義は、その名前だけ見るといいことのようだけど、これは誰かが、なんの制限もなく他国の紛争に入って行けるようにしようという意味で、ある種の警察権力を誰かに与えようという枠組みといえる。
つまり、シリアで紛争が持ち上った場合、国内の問題は一義的にその国がやればいい。外国の武装勢力が入り込んで解決するなどというのは、通常予想されていない。
それを可能にするのがこの人道介入。
国連の名で入り込んでいって、そこでその首長を殺害して国家機能を破壊することも可能。これはつまり、リビアで本当に行われた。
カラー革命を制度化しようとしているようなものと言えるでしょう。
さてそこで、現在の国連では、フランスがリードして、シリアに介入するべきだと言っている。いかにも言葉遣いは、人道的にやろうとしているかのようなことを言うわけ。
France, US, UK launch joint draft resolution on Syria
が、リビアを崩す先頭に立ったのはこの人たち。
その人たちがまたシリアに国連を使って介入させようという話を持ち出している。
そもそも、シリアはつい1か月ぐらい前に、クルド部分を覗いてほとんどシリア国軍が解放してしまった。だから、本当は英米仏はまったく負けた。主権国家シリアは英米仏の介添えなんか要らない。
それを認めず、シリアの政体があたかも不安定であるかのようなことを言って、化学兵器騒ぎを作っているのが英米仏。一連の化学兵器問題は、このための策謀だろうと考えて間違いない。
で、それをトランプは拾ってしまった、というのが私の考えですね。
シリア空爆：侵略軍空爆の直前の動き
化学兵器を使うのは誰であってもよくない、まではいいとしましょう。しかし、アサドを化学兵器を使ったバカ野郎みたいなことを言った。
これは、アサドを倒そうとする側にとっては大喜びの発言。
その上でミサイル攻撃をし、その理由としてシリアの独裁者アサドが悪いからと言った。
さらに、国連でこの行動を非難できなかった。
これは、アサドを倒そう、シリア介入を続けようという側を元気づかせてる。つまり、悪くすれば、また軍事介入を求められる可能性がある。いくらトランプが一人でミッションは終わったと言っても、状況が変わればそんな発言は糞の役にもたたない。
■ 今後
ということで、今後の流れとしては
ロシアとシリアは、
- シリアはアサド体制で落ち着いている状況を見せる →他者の介入は不要だ
- シリアの化学兵器騒動はホワイトヘルメットが作ったもの
- イギリスの化学兵器騒動はイギリスが隠し事をしている
といった線をより一層強化することになるでしょう。
一方で、米軍がこれ以上の軍事介入をしたら本当に撃ち返すというのをまたまたアピールする必要もある。今現在、米英仏のシリア崩しを防いでいるのは、ほんとにこれしかない。英米仏のどこから国民が自国の行動を変える、と言い出さない限り。
だから、トランプのミサイル騒動は全くの無駄どころか、事態を悪化させただけ。
結局どこが問題かというと、国連安保理に持ち込むと、英米仏 vs 中露になるだけで、まず絶対に解決できない。しかも、軍事行動を伴うようなものの場合、英米仏はNATOという軍事同盟の仲間なんだから、裏切れないという「へ理屈」がある。
まして今後の軍事行動の是非ではなくて、やっちゃったものを国連安保理にかけても、同盟関係が邪魔して正常な判断なんかしない。
（しかし今回、相手方のロシア、シリアはする必要がある。なぜなら否認していることを明言し、かつ、それが適法であることを宣言する必要があるから。後の土台ね）
だから、軍事行動に至る前に、まずそもそもシリアの化学兵器騒動をOPCWに任せましょうとすることが非常に重要だった。前に書いたように、先週、ロシア提案とまったく同じ提案をスウェーデンが出した時に、１票差まで追い詰めたのに英米仏が反対して葬ったのが惜しまれる。中国の国連大使が無茶苦茶悔しがっていた記憶があるが、これがベストと思ってたからだろうと思う。
これを葬ったのはトランプ。
トランプ政権はもし彼が本当にこの糞な事態をなんとかしようという気があるのなら、とうてい効果的に動いているとは言えない。トランプ政権はほんとに素人政権だと思う。あと米国大統領の力を過信してる。
