代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

法律はすべて自分たちが自分たちのためにつくるもの ―自民党の緊急事態条項の真意

2017年10月20日 | 政治経済(日本)
 10月10日に投稿した「選挙後に最も恐れるべきこと ―改憲の真の狙いは緊急事態条項」という記事に、睡り葦さまから以下のコメントいただきました。自民党改憲案の緊急事態条項の条文を読んでみて、その危険さに「あっけにとられた」とのことです。
 自民党改憲案の緊急事態条項とは以下のようなものです。まだ読んでいない方のために参考までに。この条文に続いて、睡り葦さまからのコメントを再掲いたします。

***自民党改憲案より引用****

第九章 緊急事態
第98条(緊急事態の宣言)
1 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
4 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。

第99条(緊急事態の宣言の効果)
1 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。
3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。

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 以下、睡り葦さまからのコメントを一部転載します。

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ネオリベ・ファシズムに対するリベラル・ルネサンスの出現の意義について。 ( 睡り葦 )
2017-10-15 23:35:43


 自民党憲法草案の第九八条と第九九条の文言を、すみません初めて見て、あっけにとられました。
 これは民衆が政治的存在として認識されていなかった古代国家へのほとんど逆戻りと言うべきものであると思えます。
 この草案をつくった人たちは、国民を物理経済的存在のみとしてとらえ、あえて言えば家畜と考えています。

 おそらく明治維新以前からの長州マインドということなのでしょうが、リベラルな近代法治主義政治の素養や認識がまるでない土侯的感覚そのまま、法律はすべて自分たちが自分たちのために自由勝手につくるものであるという絶対支配意識を素直にこねあげたものとなっています。

 議員改選を停止されて国民のチェックが届かなくなった議会は緊急事態における内閣の専権支配に対してただ翼賛追認のみとなり、他方で司法の牽制チェックと国民の抵抗権がまったく顧みられてはおらず、憲法の停止による内閣の無制限の「立法」と財政支出によってあらゆることができるわけで、戦前のように、デモどころか官製集会以外すべてを禁止したり、日本共産党や社民党を非合法にすることができるわけです。

 2016年05月08日の朝日新聞WEBRONZAにおける木村草太教授と礒崎陽輔氏(自民党憲法改正推進本部副本部長)との対談において、磯崎氏は、この草案は自民党の国会議員の議論によりつくられたものであり、法制的な問題を残している、あくまで「自民党としての目標」を示したもので、最終的に煮詰められた改憲提案ではない、という趣旨のことを述べています。
 すなわち、これは自民党の飾らない本音であると。自民党のファシズム集団への完璧な変質という事態はおそるべきことになっているとあらためて認識いたしました。

 緊急事態条項の改憲導入は、あきらかに法律レベルで対処すべき大規模自然災害はともかく、あきらかに対外戦争と内乱とを想定したものです。大規模自然災害を入れるのは、その機に乗じて起きる「間接侵略」や「反乱」を防止するためのものであろうと思います。

 米国軍産複合体による「有事」の全面参戦、総力戦体制の準備の指示があろうことは明らかでしょうが、同時に自公改憲勢力は国民大衆の批判反発を「反国家思想及び行為=革命内乱」と見なして、強権で予防弾圧することに踏み出そうとしているわけです。

 安保法制の成立によって米国からの改憲要請はなくなった旨を昨年アベ氏から聞いたと、田原総一朗氏が10月13日に外国特派員協会で語ったとのことですが、国民民衆の反発批判に対する恐怖は、国民主権を政治的、経済的、文化的に認めることができない日本の政治支配層グループ=自公維新希望から消えることはないと思います。彼らなりに危機感に駆られてヒステリックにすらなっていると観察します。

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