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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

クモガタヒョウモンの日向ぼっこ、ヌルデの美しい実、キノコ続々。猛毒のキノコも(妻女山里山通信)

2016-09-18 | アウトドア・ネイチャーフォト
 今年の信州の春は、例年より10日から2週間も早く始まり、アッという間に終わってしまいましたが、この秋はゆっくり目で進んでいる様です。しかし、台風16号が本格的な秋を連れて来そうです。長雨になる前に、妻女山山系の撮影に行きました。今回は、普段行かない山奥まで足を伸ばしました。急斜面のザレ場の森が連続で筋肉痛になりました。

 カメムシの仲間のアカサシガメを発見(左)。鋭い口先を小さな甲虫や蝶や蛾の幼虫に突き刺して体液を吸います。セミもこの仲間。不用意につかむと刺されることも。成虫は木の皮の裏で越冬します。イチモンジセセリがゲンノショウコ(現の証拠)で吸蜜(中)。花が小さく一回で吸える量が少ないためか、忙しなく花と花を行き交います。体調5ミリぐらいの極小のクモ(右)。網を張らないのでハエトリグモ科かなと調べると、マミジロハエトリのオスと判明(右)。忙しなく動くのでピントが甘いのが残念。再撮したいのですが、発見するのが大変。

 ゲンノショウコで吸蜜中のミナミヒメヒラタアブ(左)。似たホソヒメヒラタアブは8ミリ以下とのことでミナミヒメヒラタアブとしましたが、正確な同定は交尾器なども観察が必要で、かなり困難です。両方共オスの方が胴体が細いので、これはメスでしょう。
 センニンソウ(仙人草)で獲物を待ち構えるイオウイロハシリグモ(中)。やはり網を張らないクモです。左のハナアブなどを狩ります。クモは脚が8本、目が8個あり昆虫ではありません。以前、ナショナル・ジオグラフィックに、クモは体に比べて脳が大きく、体の隙間にはみ出している種さえあると。そのため、小さなクモが大きく緻密な網を張れるという記事がありました。蜘蛛の糸は強靭で、太さ1センチもあればジャンボジェットが釣れるという記事を読んだことがあります。人工的に蜘蛛の糸を作る技術も開発されたので、将来性は高いでしょう。
 ヤクシソウで吸蜜中のイチモンジセセリ(右)。ヤクシソウは、花後にうなだれるので見分けがつきます。

 ヌルデ(白膠木)の赤い実。まだ完熟ではありません。ウルシ科なので過敏な人はかぶれる場合もあります。完熟した実は白く粉を吹き、酸塩味があるため、信州ではこれを煮詰めて塩の代わりにした地域があるそうです。
 葉や葉軸にある種のアブラムシが寄生し、ヌルデミミフシやヌルデハイボケフシ、ヌルデハイボケフシなどの虫癭(ちゅうえい)ができます。このコブを「五倍子(ふし)」といい、タンニンを多く含み、黒色染料の原料になります。晩秋には、イカルなどの鳥が食べているのを見かけます。
「足柄の 吾を可鶏山(かけやま)の かづの木の 吾をかつさねも かづさかずとも」(万葉集:詠人知らず)
 かづの木(ヌルデ)を男性にたとえ、私を誘ってくださいという歌だそうです。

 シマハナアブのオス(左)。果樹の受粉に利用されるハナアブです。ネオニコチノイド農薬の空中散布をすると、真っ先に絶滅する昆虫です。ミズヒキの茎にぶら下がった小さな虫(中)。カメムシの仲間のツマグロオオヨコバイでした(右)。ツマグロヨコバイは稲の害虫ですが、ツマグロオオヨコバイはそうではない様です。東京の子供たちはバナナムシと呼んでいました。ヤマクワ、キイチゴ,ヤマブドウの木などを吸います。この虫も不用意につかむと刺されます。

 ヤブサンザシの実が成っていました(左)。1mほどの低木で、葉は手の平型。果実は生食はできない様ですが、果実酒にはなるそうです。この秋は、ガマズミの実が不作です(中)。酸味のある抗酸化作用の高い美味しい果実酒ができます。毎年作っていましたが、今年は無理そうです。クマノミズキの実も熟して来ました(右)。完熟した実は、色々な鳥たちの餌になります。

 センニンソウも結実し始めました(左)。人が踊っている様に見えます。ヤブマメの花(中)。地上の鞘の豆と、地下にも落花生の様に豆ができますが、アイヌの人達は食べたそうです。茹でて油を付けていただくとか。美味しいそうなので食べてみようかなと思います。春先に掘り出すそうです。ツトガ科のシロオビノメイガ(右)。幼虫の食草は、フダンソウ、ホウキグサ、アカザなど。ホウレンソウも食べるので、農業では害虫です。吸蜜するそうですが、この時はぶら下がっているだけでした。

 クモガタヒョウモン(雲形豹紋)が日向ぼっこ中。タテハチョウ科ミドリヒョウモン属。6月から10月に発生しますが、盛夏は休眠します。幼虫の食草はスミレ類。妻女山山系では、ミドリヒョウモンやメスグロヒョウモンはよく見ますが、クモガタヒョウモンは珍しいかも知れません。今まで見つけても、高速で飛び交っていて全く撮影できませんでした。この日は雲が多く気温が下がったので、日向ぼっこをしてくれました。

 妻女山にあるのはほとんどノコンギクなのですが、長坂峠だけにこの群生地があります。これは草高も低く花もやや小さめ。ユウガギクでしょうか、シロヨメナか。野菊の同定は本当に困難を極めます。
鏡台山の柴平樽滝線で野菊の同定調査。完全にど壺にはまりました(妻女山里山通信)
 シソ科のイヌコウジュ(犬香薷)(中)。葉の鋸歯の数が細かく10以上あるのでヒメジソではないでしょう。乾燥させて薬用風呂に。「和漢三才図絵」、「本草図説」にも掲載。この山系にはナギナタコウジュも咲きます。ミツバアケビ(三葉木通)の実がたくさん成っていました(右)。
アケビのブルーチーズ入りミソバーグ(オリジナルレシピ) 信州味噌にブルーチーズを合わせたところが、まさにミソ。味噌とブルーチーズのはんなりとしたコクのある香りが漂ってきて食欲をそそります。

 イノコズチ(猪子槌)別名はヒカゲイノコズチ(左)。いわゆる引っ付き虫の典型で、動物にくっついて広がる動物散布植物。イノコズチにできた虫えい(イノコズチクキマルズイフシ)(中)。生薬名の ゴシツ(牛膝)は、この虫えいの形が牛の膝に似ていることから。根を干したものが牛膝で、利尿・強精・通経に効くといわれます。ヒナタイノコズチに比べると茎の毛がほとんど見えません。キノコ狩りなどで不用意にこの草むらに入ると酷い事になります。代表的な引っ付き虫には他に、ヌスビトハギ、チカラシバ、センダングサ、オナモミなどがあります。
 帰化植物のマルバフジバカマが咲き始めました。アサギマダラが吸蜜していたのですが、気付かず近寄ってしまい飛び去ってしまいました。

 林道の真ん中にイグチ科の大きなキノコ(左)。アシベニイグチの仲間でしょうか。同定できていません。コナラの森にあった、やはり大きなイグチ科のキノコです。ニガイグチの仲間でしょう。ニガイグチは誤って一本でもキノコ鍋に入れると苦くて全部食べられなくなります。これがクサウラベニタケ(右)。ウラベニホテイシメジと間違いやすいキノコです。激しい嘔吐と下痢をもようします。
ウラベニホテイシメジとクサウラベニタケ(妻女山里山通信)プロでも間違えやすいキノコ。同定は確実に。確信が持てないなら採らないで。

 薄暗い林下に怪しく佇むシロオニタケの幼菌(左)。猛毒です。次は別名死の天使といわれるドクツルタケ(中)。カエンタケなどと違い触ったぐらいでは大丈夫ですが、誤食すると死に直結する猛毒のキノコ。致死量がわずか8グラムですから、大きなものだと7〜8人分の致死量になります。今回林内中にたくさん生えていました。妻女山山系では、7月と9月に大量に発生します。テングタケ科のキノコと白いキノコは、猛毒のものが多いので採らないことです。最後にやっと食菌を発見。ウスヒラタケです(右)。煮ても炒めても美味しいキノコです。

 カワラタケ(瓦茸)。木材腐朽菌で、タマチョレイタケ科 シロアミタケ属。制癌作用があるということで薬用に用いられます。私は煮出して飲んだり、焼酎漬けにして飲用しています。新陳代謝が促進され美肌効果もあるとか。これは非常に綺麗で裏も真っ白です。老菌になると裏が茶褐色になります。

 根本の太さが70センチぐらいあるヤマザクラが地上3mぐらいのところで折れていました(左)。シラカバやオニグルミ、コナラの木を巻き沿いにしています。幹の中は虫に喰われてボロボロでした。いずれキノコが大量に出るでしょう。友人のログハウスで昼食(中)。曇っていて北アルプスは見えず、風景も霞んでいます。帰りに立ち寄った樹液バーはオオスズメバチが4匹(右)。子育てに忙しく相当大変そうです。これからの季節はより攻撃的になるので要注意です。拙書でも書いていますが、黒髪や黒い服は厳禁。甘い香りの化粧品やキャンディーも駄目です。威嚇されたら速やかに立ち去ること。万が一に備えて、毒抜きのポイズンリムーバーも必携です。

『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

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