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受験的には、問題にならないわけですが、学説上、共謀共同正犯否定説は根強い。

関東では福田平先生、野村稔先生、曽根威彦先生が、関西では、中山研一先生、浅田和茂先生、山中敬一先生、松宮孝明先生などの有力な先生方が否定説なわけです(※)。

島田聡一郎先生の「共謀共同正犯論の現状と課題」(理論刑法学の探究3)では、共謀共同正犯論否定説がおかしいことを、比較法と刑法制定過程から述べられていて、面白いです。

日本の刑法は、幇助を必要的減軽としています。
ですから、
実行行為の一部を担わない、関与形態が教唆ではない者について、共謀共同正犯を否定してしまうと、幇助として必要的減軽を認めることになります。
具体的には、法定刑の上限下限が半分になります。

島田先生は、相当に広い範囲の犯罪関与者に立法者が予定した法定刑を科さないことは、比較法的に見て特異であるといいます(38頁)
たとえば、
イタリア刑法は、統一的正犯体系なので、関与の態様に応じた減刑はありません。

オーストリアは、関与形態による減軽を認めます。しかし、減軽は、命令に服従していた場合や、第三者の強い影響下にある等、従属的役割しか果たしていない者に限定しています。

フランス刑法は、そもそも幇助に必要的減軽を認めていません。

現在のドイツは、日本と同じく、幇助は必要的減軽です。
しかし、ドイツは、正犯と共犯の区別についての基本が主観説です。
ですから、実行行為を行わない者の一部を正犯として処罰しており、日本流の共謀共同正犯肯定説です。

しかも、ドイツの立法過程をみると、やっぱり、その実態は、幇助形態のうち、減軽を認めるのは、重要ではない関与者のみということです。

ドイツ刑法の前身、プロイセン刑法では、幇助の中で、その寄与が重要でない者に減軽が認めるとして、減軽を限定していました。

これにかわり、ドイツ帝国刑法では、幇助を一律に減軽しました。
どうして、一律の扱いにしたか。それは、条件説(等価説)が背景にあるからです。
条件説は、結果と因果関係がある条件はすべて等価値と考えるから、重要な寄与とかの概念がありません。
では、重要な役割をした幇助も減刑したか、というとそうではない。
正犯と共犯の区別において主観説が採られていたので、実行行為を行わない幇助的形態の関与者のうち、重要な役割を行った者は、正犯として処罰できました。
結局、ドイツでも、幇助形態での関与者でも重要な役割を担った者は、主観説を用いることで、正犯として処罰してきております。

以上の様に、比較法的に見ると、どの国も、幇助形態の関与者でも、重要な役割を担った者を減刑することはしていないというのです。
幇助形態の減軽 各国比較

このようにみると、幇助形態関与者に対する処罰の在り方として、重要な役割を果たした一定の者は、減軽しないというのが、普遍的な在り方のようです。

(否定説として確認した書籍)
福田平・全訂刑法総論(第4版)275頁
曽根威彦・刑法原論579頁
中山研一 刑法総論 467頁
野村稔「共謀共同正犯」・刑法理論の現代的展開 総論 2・238頁
野村稔・刑法総論(補訂版)404頁
浅田和茂・刑法総論(補正版)413頁
浅田和茂「共謀共同正犯」レヴィジオン刑法〈1〉共犯論80頁

山中敬一・刑法総論(第2版)877頁

2016/08/18修正
2016/08/19修正
2016/08/20修正