真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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ロシアコンサート会場襲撃事件とISISとアメリカ

2024年03月28日 | 国際・政治
 モスクワ郊外のコンサート会場であった襲撃事件は、手当ての甲斐なく死んだ人も含めると死者が140人にのぼり、過激派組織「イスラム国」(IS)が、アマーク通信で動画を公開したといいます。

 そして、ホワイトハウスのジャン=ピエール報道官は、「ISは共通の敵であり、どこにいようと打ち負かさなければならない」との声明を発表したといいます。

 また、米国家安全保障会議(NSC)のワトソン報道官は、「ウクライナの関与は一切なかった」と述べたと伝えられています。でも、こうしたアメリカの主張を、私は誤魔化しではないかと疑います。

 日本を含む西側諸国は、ウクライナや西側諸国と実行犯とのつながりを示唆するロシアの主張を受け入れず、ISの単独犯行説を意図的に広めているように思うのです。ロシアが容疑者からどういう情報を得たか、正確のことはわかりませんが、容疑者11人をウクライナ国境の手前100キロほどの地点で拘束したと言っているのです。そして、その中に実行犯4人が含まれていたとロシアの連邦保安局が発表しているのです。その実行犯は、テレグラムというメッセーアプリで指示を受け、50万ルーブルを約束されたともいうのです。

 すでに裁判が開始され、24日時点で2人は罪を認め、金銭目的でやったことを告白したともいいます。そのロシアの主張を受け入れず、アメリカの発表を何の疑いも持たずに受け入れるのは、やはり、日本のメディアが、アメリカのバイデン政権の影響下に置かれていることを示していると思います。

 先日、笹川平和財団主任研究員、畔蒜泰助氏は、想像を逞しくし、「団結に利用 再動員の可能性も」と題して、下記のようにプーチン大統領を危険視する主張をしていました。でも、その主張の大部分が、具体的な根拠が不明なので、わたしは、アメリカのメディア戦略に基づく情報を、日本で広め定着させようとする意図を感じました。

ロシアのプーチン大統領は23日の演説で、ウクライナの関与があるかのような発言をした。プーチン氏は大統領戦後の19日にあったロシア連邦保安局(FSB)の幹部会で、「ウクライナは、西側諸国の支援を受けながらテロ戦術に移行している」などと発言している。併せて考えると、ロシア政権は今後、事件の裏には米国やウクライナの存在があり、ロシアを弱体化させるために行ったものだという解釈に向かっていく可能性がある。

 テロを防げなかったのはプーチン政権の失策だ。ダメージを最小限にするためにも、事件はウクライナが関係しているという情報を広げるのではないか。それは、愛国心の下にロシア国民の団結を狙うプーチン氏の方針を一層、強化することにつながるだろう。

 ロシアのペスコフ大統領報道官は22日に公表された報道で、「我々は戦争状態にある」と発言。ジョイグ国防相も21日、ロシア軍に新部隊を設置する方針を示した。これまで部分的動員と志願兵で兵力をまかなっていたが、国民の団結を背景に再動員へと踏み切る可能性もある。前線においてもウクライナの首都や民間インフラへの攻撃など、一層のエスカレーションへと向かうことが予想される。(聞き手・星井麻紀) ”

 

 また、朝日新聞は、プーチン大統領が23日のビデオ演説で、これらの人物がウクライナ国内に逃亡を計画していたとして、”根拠を示さずに「ウクライナ側に越境のための窓口が用意されていた”と報じていました。”根拠を示さずに…” などと、ロシアの主張はことごとく疑問視し、アメリカやウクライナの主張は、根拠が示されていなくても疑問を呈することなく、真実として報道するその姿勢には、ほんとうにあきれます。

 

 中東の紛争をよく知る人たちが、アルカイダやイスラム国の武装勢力を育てたのはアメリカだと言っていたことを思い出します。

 数年前の話ですが、「ワシントン・ポスト」紙が、”アメリカのトランプ大統領がCIAが行ってきたシリアの「穏健な反体制派」への武器供給・訓練事業の終了を決定した”と報じたことがありました。

 アメリカ政府は、シリア紛争勃発後に、アサド政権の転覆のために、「反体制派」を支援していたのです。トランプ大統領は、その事業の停止を決定したということです。

 

 公益財団法人中東調査会主席研究員、髙岡豊氏によると、

欧米諸国の政府や報道機関が期待をかけていた「穏健な反体制派」は、2012年中ごろにはシリアの民心を失った上、イスラーム過激派諸派に従属的な立場でしか存在しえないものだった

 といいます。そのアメリカが支援したシリアの「穏健な反体制派」が、イスラム国に武器や戦闘員を提供するようになったため、「イスラム国」は急速に勢力を拡大したというのです。

 アメリカが反米的な国の反体制派を支援したり、極秘裏に軍事訓練をして育てた組織が、その後「アメリカの敵」に変貌したケースは、「イスラム国」だけではないということです。

 

 さらにさかのぼれば、アメリカが湾岸戦争やイラク戦争で、スンニ派のサダム・フセインを捕らえ、処刑したことが、スンニ派を中心とする中東の勢力バランスを崩し、混乱をもたらすことになったという側面も見逃せないと思います。武力行使の結果は民主化などではなく、混乱がもたらされたのです。

 

 だから、アメリカによる、アメリカのための戦略が、あちこちで、悲惨なテロや紛争を惹起させることになったといえると思います。

 アメリカが反米的なロシアを弱体化させるために、イスラム過激派組織を利用することもあり得ることだ、と私は思います。

  アメリカ国防総省が、「シリア反対制派の武装勢力を訓練して、イスラム国と戦わせる」という作戦を進めているとか、「アメリカがトルコとヨルダン北部の訓練基地でシリアの反政府武装勢力を訓練している」(「ワールド・ネット・デイリー」)と報道されたこともあったのです。

 中東を知る多くの人たちが、アメリカ特殊部隊が、秘密裏に特訓した組織が、現在の「イスラム国」その他のテロ組織になったと指摘していることを忘れてはならないと思います。

 だから、今回のホワイトハウスのジャン=ピエール報道官や米国家安全保障会議(NSC)のワトソン報道官が語った内容は、似たようなアメリカの対ロ作戦を隠すためのものではないか、と私は疑うのです。

 

 藤原直哉氏は、下記をTwitterで取り上げていました。

伝えられるところによると、ウクライナ兵士はテレビ放送中にISISの記章を着けているところを捕ら”えられたという。彼らはモサドの工作員なのか、それともCIAの訓練を受けた特殊な目的のための工作員なのか?

 というのです(https://twitter.com/search?q=%E8%97%A4%E5%8E%9F%E7%9B%B4%E5%93%89%E3%80%80ISIS&src=typed_query&f=top)

 下記は前回に続いて、「日米地位協定逐条批判」地位協定研究会著(新日本出版社)からの抜萃です。こうした理不尽な特権を得ているアメリカと日本の関係にも、 モスクワ郊外のコンサート会場であった襲撃事件に連なる問題を感じます。

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                  4 米軍の優先使用、協力を義務化

                      ──第六~八条 十条、二十一~二十三条

 

                  三、気象情報の提供。自動車に関する特権

  1 気象情報の提供

 地位協定第八条は、気象業務に関して日本側が米軍に与える強力について定めている。

 軍事活動にとって、気象情報は最も重要な情報の一つである。日本政府は、①地上および海上からの気象観測、②気象資料 ③航空機の安全かつ正確な運行のために必要な気象情報を報ずる電気通信業務、④地震観測の資料などを米軍に提供しなければならないと義務付けられている(第八条)。さらに、日米合同委員会での合意によって、公表されていない気象資料や気象観測の原簿などを米軍に提供する義務をはじめ、広範囲の義務が定められている。なお、米軍が自ら行う気象情報収集活動は、軍隊の当然の機能の一つであると考えられており、協定上、当然認められると解釈されている。

 

  2 自動車に関する米軍の特権

 地位協定第十条は米軍人の運転免許の効力などについて定めている。

 地位協定は、アメリカが軍事・軍属およびその家族に対して発給した運転免許証などを、試験または手数料を課さないで日本でも有効なものとして承認している(第十条一項)。米軍および軍属用の公用車両には、識別できる番号票などをつけることになっている(二項)。軍人にとって車両運転は重要な軍事活動の一つであり、軍隊は各国を移動するためその効率的な活動確保のうえで、煩瑣(ハンサ)な試験などうけていられない、というのが理由になっている。アメリカで発給された運転免許証あるいは米軍の運転免許証を持っている軍人、軍属および家族は、日本の運転免許証がなくても、日本での運転を認めるという趣旨である。このため、彼らが交通違反を行っても、アメリカが発給する運転免許証については、日本側は免許の取消し、停止などの行政処分はできない。

 車両には識別番号票を日米地位協定でもつけなければならないことになっているが、実際には米軍車両と識別できるような票はつけられていない。このため、米軍車両が交通事故を起こした場合でも、車両の特定を困難にしている。沖縄県の地位協定見直し要請は、「軍用車両には、県民が容易に識別できるような番号票または記号が付いておらず、さらに夜間になると番号標または記号そのものが見えない場合が多い」と指摘し、「県民が容易に識別できる軍用車両の番号標の基準を示すこと」を要求している。あまりにも当然のことである。

 また、これらの車両には道路運送車両法、自動車損害賠償補償法などの法令も適用されない。したがって、道路運送法の安全輸送に関する規定の適用がないため、ジェット燃料などの危険物がなんの規制もなく輸送されている。

・・・(中略)

 なお、最近になって、国民の批判の高まりによって米軍車両について車両を識別できるプレートの装着と交通事故損害保険の加入が行われるようになった。

 

 3 郵便局の設置の自由

 地位協定第21条は、アメリカの軍事郵便局の設置・運用について規定している。

 公共事業等の利用優先の箇所でみたように、アメリカ側は、軍人・軍属およびその家族が利用する米国軍事郵便局を、日本にある米国軍事郵便局間およびこれらの軍事郵便局と他の米国郵便局とのあいだにおける郵便物の送達のため、施設・区域のなかに設置・運営することができる(第21条)。アメリカの在日外交官、軍事顧問団員など、通常海外で同様の特権が与えられているアメリカ政府のその他の官吏および職員も、この軍事郵便局を利用できる(日米の合意議事録)。これら軍事郵便局については、郵政大臣はいっさいの管理権をもたない(郵便局法特例法)。この郵便局は、軍事郵便局相互および軍事郵便局と他の在日アメリカ郵便局とのあいだの郵便業務を主とするが、日本の郵便局との交換業務をもおこなう。(日本国郵便局とアメリカ合衆国軍事郵便局とのあいだに交換する郵便物の取り扱いに関する規則)。外国為替管理令などにかする臨時特例法によって、軍事郵便局にたいして、対外支払手段などの集中の例外、外国向け送金の制限の免除なども認められている。

 なお、地位協定第22条は、在日米人の軍事訓練について定めている。これは、日本における。米軍の編成、訓練の自由を保障しているものである。

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「もしトラ」に備えるメディアの真実の報道

2024年03月21日 | 国際・政治
 先日、朝日新聞で、今までにない二つの記事を目にしました。一つはウクライナの実態を伝える記事であり、もう一つはロシアの実態を伝える記事です。
 ウクライナの実態を伝える記事の内容は、兵士の家族や親族が、「前線で戦う兵士には休息が必要だ」ということで、軍務に期限を設けるよう抗議の声をあげているということ、また、従軍する兵士の除隊時期を明確に示すよう政府に求めて抗議デモをしている人たちもいるということ、そして、ウクライナからこれまでに2万人近くが徴兵を逃れるために国外に出国したようだということ、さらに、川を泳いだり、夜間に徒歩で国境を越えたりして国外に逃れようとしたウクライナ人が、およそ2万1千人もウクライナ当局に拘束されたというようなことでした。
 ウクライナでは、ロシアの「特別軍事作戦」開始直後に、総動員令が出され、18歳から60歳の男性が徴兵の対象となって出国が禁じられましたが、ロシアとの戦いを望まないウクライナ人が、徴兵を逃れるために賄賂を贈るなどの汚職も後を絶たず、社会問題となっていて、兵員の確保が難しくなっているというようなことでした。ウクライナにおける汚職は、それ以前からいろいろあったようですが、それにしても、こうしたウクライナの現在の実態が報道されることは、今までにないことだと思います。SNSでは、ウクライナ当局が、抵抗する男性を暴力をもって連れ去るというような徴兵の動画をたびたび目にしましたが、やはりウクライナでは、そういうこともあったのだろうと思います。

 もう一つは、ロシアにはロシア軍を支えるボランティア団体が多数あり、さまざまな取り組みをしているという記事です。ボランティア団体はおよそ二万団体、数十億円規模ではないかということです。例として、ウクライナの前線に送る迷彩ネットをつくる人たち、兵士に送る伝統料理をつくる人たち、戦闘服や靴下をつくる人たち、ドローンを前線に送る人たちなどのボランティア団体があるということです。無料の軍事訓練コースを開いている人たちさえあるということです。そして、「政府が(ウクライナ侵攻で生じた)政策の『穴』をふさぐには時間が必要だ。政府を助け、問題を早急に解決するために生まれたのがボランティアだ」と関係者が話しているということです。

 私は、ウクライナ戦争におけるウクライナの勝利は遠のくばかりで、ウクライナとウクライナを支援するアメリカを中心とするNATO諸国が、いよいよ追い詰められてきたからではないかと想像します。
  先日、フランスのマクロン大統領が、「我が国の兵士をウクライナに送る可能性を排除しない」と発言したことが報じられましたが、それは、深刻な兵士不足に直面するウクライナの勝利が事実上ありえないことを示していると思います。
 だから、「停戦」を考慮せざるをえない状況になりつつなるのに、ゼレンスキー政権支持やアメリカのバイデン政権戦争支援戦略一辺倒の報道では、「停戦」に対応できないということではないかと思うのです。また、「自分が大統領になったら24時間でこの戦争を終わらせる」と公言しているトランプ氏が大統領になる可能性が、現実のものになりつつあるからではないかと思います。
 もし、「停戦」後に、ウクライナの実態が知られることになれば、報道の偏りに対する批判を受け、信用を失うことになる心配があるから、「もしトラ」に備えるための報道を始めたということだろうと想像しています。

 そしてそれは、日本のメディアが、アメリカのバイデン政権の影響下にあることを示しているのであって、ウクライナ戦争が、民主主義と専制主義の戦いなどではないこと、また、イスラエル・パレスチナ戦争が、テロとの戦いなどではなく、アメリカを中心とする西側諸国の覇権と利益のための戦いであることを物語っていると思います。

 そんなことを考えるのは、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」に存在するはずの米軍の日本における振る舞いが、あまりに非民主的で理不尽であること、また、現実的には、アメリカの利益と覇権の維持のために存在するような活動が展開されていると考えられるからです。
 下記は、「日米地位協定逐条批判」地位協定研究会著(新日本出版社)から、「公益事業などの利用優先権」に関する部分を抜萃しましたが、日本に駐留する米兵のみならず、その家族も、生活のあらゆる面で、日本の国内法を守る義務を免除されたり、優遇されたりしているのです。
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             4 米軍の優先使用、協力を義務化
                 ──第六~八条 十条、二十一~二十三条


  二 公益事業などの利用優先権
 地位協定第七条は、米軍による公益事業の利用について定めている。米軍は、「日本国政府の各省その他の機関に当該時に適用されている条件」よりも不利でない条件で、「日本国政府が有し、管理し、又は規制するすべての公益事業および公共の役務」を利用することができ、ならびにその利用における優先権を享有する(第7条)。
「公共の事業及び公益の役務」とは、日本政府が法令上、「有し、管理し、又は規制する公共サービスをさし、国が自ら所有し、おこなっている事業、例えば郵便ばかりでなく、公社が行っている業務、電気、電気通信、水道、電気、ガス、交通事業、放送、道路など国が法令によって規制している私的企業をもふくむいっさいの公共的な事業と役務がふくまれる。
「日本国政府の各省その他の機関に当該時に適用されている条件」より不利でない条件とは、政府によれば、日本政府の官庁(地方公共団体などの機関は除く)に一般的に適用されている条件よりも不利でないという意味であり。優先権の享有をとくに米軍に認めているものではないと説明されている。しかし、実際には、公共的事業と役務の具体的な利用の取り決めなどにおいて、米軍が国内の一般人や団体よりも優先権を得ている事例が多い。

  米軍は、旧国有鉄道とのあいだに「公務鉄道輸送支払い手続き設定のための日本国有鉄道とアメリカ合衆国との間の協定」を結び、通常料金よりも安く輸送できるようになっていたといわれている。 また、ジェット燃料などについては、米軍からの貸渡車によって輸送しており、急を要する場合は米軍の貨物が、「公益上の必要あるとき」(鉄道営業法第九条)という扱いで他の輸送に優先されている。国鉄がJRに替わっても優先的取り扱いを認める協定は、JRにひきつがれ、基本的には変わっていないと思われる。1967年8月、新宿駅構内でタンク車が炎上して問題になったジェット燃料輸送は、66年には年間18,852両(約54万トン)となっており、一日に換算すると90両以上のジェット燃料が当時の国鉄南武線や中央線を運行していた。その輸送料は、民間の危険物輸送料の二分の一程度だといわれていた(『法律時報』69年5月号臨時増刊「安保条約」参照)。


 電気通信施設については、日米合同委員会において、第一に施設・区域内の電気通信施設は、米軍が必要な措置を取れること、第二に、施設・区域外においても日本の電気通信施設の優先利用権を米軍が有し、その施設へ米軍が自由に入りする権利があること、また、「日本防衛」のため必要な場合は、米軍みずからが施設を建設、運用、維持できることなどが合意されている(前掲「法律時報」臨時増刊号参照)。
 電話料金については、71年5月の日米合同委員会の合意により、電電公社(当時)の一般施設については一般専用回線と同じ料金で、占領中に終戦処理費で米軍のためにつくった施設と、米軍のリロケーション(配置転換)のため安保諸費でつくった施設については回線費用は無償とし、日本側による施設の保守・修理に要する実費相当額のみを支払うことになったとされている。
 電気ガスについては、電気、ガス会社と米軍との契約にもとづいて供給され、料金が支払われているが、供給についての具体的な優遇の内容はまだその実態が分かっていない。
郵便については、米軍関係の郵便は一般郵便とは同一の扱いをされていない。米軍独自の郵便局の設置、運営も認められている。国外向けの米軍郵便物については、米軍がみずから取り扱いをおこなっている。また、日本の郵便局経由の日本国内間での米軍関係郵便についても、一般郵便物とは別の取り扱いがされている。
放送業務についても、日米合同委員会において郵政省、各放送会社と米軍とのあいだの直接交渉の決定にもとづいて米軍が広報業務をおこなうこと、周波数の配分や妨害除去についてなども合意されている。また、電話監視についても日米が協同して処置をとることが合意されているとのことである。
 
 上水道は、戦後日本に上陸した占領軍が旧日本軍の専用水道のある基地ではそれを使用し、新たに基地が建設されたところでは水道施設が作られ、地方公共団体から給水された。占領軍は1946年1月、日本政府に「対日指令書」を発し、占領軍への「優先的給水義務」を課した。そのうえ、上水道建設費と上水道料金は、日本国民の租税(終戦処理費という名の占領費)から支払われた。
 旧安保条約・行政協定発効の52年4月以後、米軍と地方公共団体との間で、ユーティリティ・サービス・コントラクトという名の給水契約が、行政協定第七条を「根拠」に結ばれるようになった。
 料金の支払いは別として、米軍の各種特権を容認する従属的な給水契約であるが、その基本的な内容は以下の通りである。
 第一は、契約書の正文を英文テキストとしていることである。
 第二は、緊急給水の義務付けと断水の場合の基本料金の減額規定の明記である。
 第三は、給水契約を事実上、地方公共団体の給水条例に優先させていることである。
 第四は、両当事者間に紛争が生じた場合、米軍の契約官が事実上の決定権を持ち、地方公共団体の権利が無視されていることである。
 第五は、料金についてである。契約書では地位協定第七条を引き合いに出して、日本の官庁に適用されている最低料金を云々しているが、日本にはこのような事例はないから、米軍に特別料金を適用していない。これは当然のことである。(岩国市では73年4月、米軍への特恵料金廃止に踏み切った。しかし、神奈川県横須賀市のように用途別料金体系を取っていないところでは、それを採用している自治体と比べて米軍給水が安価になっていることに注意しなければならない。(以上、詳しくは佐藤昌一郎『反核の時代』10章参照 青木書店84年)。」
 これらは日本の水道法・水道条例に反する従属的なものであり、廃棄するのが当然であった。 しかし、米軍の強制、自治体の屈服、日本政府の黙認のなかで継続してきた。
 この従属的な給水契約を拒否する動きが70年代にあらわれる。地方自治の観点からも注目すべきことなので、やや具体的に論じておきたい。
 その第一は、71年東京都内の米軍住宅(グラント・ハイツとグリーン・パーク)を横田基地に移す計画に起因する問題である。横田基地では地下水を汲み上げ、米軍が専用水道としていたが、住宅=人口増と永年にわたる汲み上げで必要地下水の確保が困難となり、防衛施設庁は当初立川市に給水を要請した(71年5月)。しかしその後、音沙汰なしなので、立川市が調査したところ、基地内に口径350ミリ、深さ350メートルの深井戸が掘られ、揚水試験をするばかりになっていることが判明した。阿部行蔵市長は地下水汲み上げの中止を施設長に要求し(71年11月)、東京都も同じく要求し、断念させた。これが第一の成果である。施設長と米軍は阿部革新市長へ給水申し込みをやめ、武蔵村山市にくらがえして東京防衛施設局長名で同市長に給水依頼を行った(71年12月末)。
 市長はその契約を専決事項として処理しようとしたが、市議会での革新議員の追及を先頭とする不平等契約反対の合意、市民運動の展開などの諸要求の結合で、前述した従属的内容を一掃する給水契約をかちとった(詳しくは佐藤昌一郎「水道事業と地位協定〔下〕」法政大学『経営志林11巻2号、75年1月参照)。この時の米軍契約担当官はその合意のゆえに更迭されたといわれるが、米軍は武蔵村山市からの給水施設を日本側の負担で作らせながら、同市からの給水を受けず、当時基地との共存を掲げていた福生市に給水依頼をするのである(東京防衛施設局が74年9月福生市に要請)。
 第二は、沖縄の場合である。・・・以下略


 下水道は、これまで上水道ほど論議されてはいないが、福生市、武蔵村山市は基地内の住宅(現在約1400戸)に79年(福生市)、87年(武蔵村山市)、米軍の覚書で汚水排出量が増えるにつれて料金が上がる累進制をとっている大口需要者から基地をはずしているために、前者が94年度約4800万円、後者が最大で同額の減少になっている。福生市は16年間で約6億円の「値引き」である。佐世保市や宜野湾市はこのような措置をとっていない。(朝日新聞95年10月20日付夕刊)。
 自治体の主体性が問われているのである。
 また、基地内のゴミ処理問題、米軍の自治体との「消防援助協定」も多くの問題をはらんでおり、批判しなければならない。













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善悪を逆さに見せるアメリカをとらえる

2024年03月16日 | 国際・政治
 2020年10月、当時の菅義偉首相は、日本学術会議の新会員候補六人の任命を拒否しました。その具体的理由を語らず、「総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から判断した」とくり返しました。でも、総合的、俯瞰的観点で判断すれば、その任命拒否は誤りである、と私は思いました。
 そして、現在、日本の政府や自民党、主要メディアに一番欠けているのが、総合的、俯瞰的な視点で、世界情勢をとらえることだと思います。


 先日、朝日新聞に「ロシアの戦争観」と題する記事が掲載されました。ウクライナ戦争に関して、現代史家の大木毅氏とエストニア高裁防衛保障センター研究員の保坂三四郎氏に、話を聞いた記事でした(聞き手・中島鉄郎)。
 私は、その内容のみならず、見出しが、すでに総合的、俯瞰的視点を欠いていると思いました。「服従せぬ相手消し去る世界観」と「権力中枢に諜報機関 軍も監視」という見出しです。
 また、囲みで
目前に迫ったロシア大統領選での勝利も確実視され、「プーチンの戦争」は止まる気配がない。一般市民の虐殺や民間施設への空爆、兵士の生命を顧みないような前線投入など、冷酷さと異様さが際立つロシアの戦争スタイル。歴史観や権力構造から考えた
 とありました。
 ウクライナ戦争の経緯や、アメリカをはじめとしたNATO諸国の、ヤヌコビッチ政権転覆をはじめとしたウクライナの内政に対する関与は、無かったものとして論じられているからです。
 文中には、”プーチン政権は、この2年、第二次世界大戦で攻め込んだきたナチスドイツを撃退して勝利した「独ソ戦」(1941~45)に、よく言及しています”という聞き手の問いに、大木毅氏は、”今回の戦争はどう見てもウクライナ戦争への侵略戦争ですから、それを祖国防衛戦争に等値するという議論は荒唐無稽です”と答えています。また、今回も「世界観戦争」の要素はありますか。という問いには、”独ソ戦とは全く違います。ただ、ロシア軍によるブチャでの虐殺で組織的な準備が推測された時点で、その可能性を感じました。軍隊の突発的な残虐行為ではなく、ウクライナ『国民』を消滅させ、ロシア化に服さぬ『まつろわぬ民』は消し去るという、プーチン大統領の世界観が原点にあるのではないか、世界をどう認識し、どう在るべきかと考えているかと言えば、その重心は『ロシア化』『ロシア人』でしょう。”などと答えているのです。
 私は、客観的事実に立脚しない「妄想」のように思いました。
 選挙で選ばれたプーチン大統領を、あたかも、世襲の独裁的天皇や皇帝として見るかのような、「まつろわぬ民」などという古い言葉を使っているところにも、それがあらわれているように思いました。それは、ロシアの国民や軍に支えられた「特別軍事作戦」の考え方や実態を、隠そうとする意図があるからだろうと思いました。


 以前、取り上げましたが、報道(https://parstoday.ir/ja/news/iran) によると、イラン政府報道官・バハードリー・ジャフロミー氏が、「アメリカ は善悪を逆さに見せることにおいて先端を走っている」と語り、「アメリカが見せるやり口のうち、最も得意とする強力なもののひとつに、虚言がある。この国は、嘘を真実に、真実を嘘に見せかけるのである」というようなことを言っています。そして、「言動・行動の両方において善悪を逆さに見せることはアメリカのお家芸である」とし、「アメリカは、様々な時代において真実を実際とは間逆に見せて、直接・間接的に戦争の中心的存在となってきた」と述べたということです
 ふり返れば、捏造文書に基づく大量破壊兵器を根拠としたイラクに対する猛烈な爆撃をはじめとして、思い当たることがいろいろあるのです。
 また、「ブチャの虐殺」には、さまざまな疑惑が語られているにもかかわかず、そうした情報には見向きもせず、客観的事実として取り上げ、プーチン大統領の世界観と結びつけています。でも、「ブチャの虐殺」は、プーチン大統領を「悪魔のような独裁者」に仕立て上げ、ロシアを孤立化させ、弱体化させるために、アメリカとウクライナによって仕組まれた可能性がきわめて大きいのです。その根拠を、kla.tv(https://www.kla.tv)などが、いろいろ指摘していることを見逃してはならないと思います。

 さらに、現在、パレスチナのガザで、爆撃や攻撃を続けるイスラエルを支援するアメリカは再び、善悪を逆様に見せる取り組みを展開していると私は思います。
 安保理のガザ停戦決議に拒否権を発動しておきながら、アメリカは、援助物資を空中投下したり、海路を通じて搬入をしたりして、あたかも人道国家のような姿勢を見せています。でも、ICJの判断を尊重し、残虐犯罪の拡大を防ぎ、犯罪的な爆撃や攻撃を終わらせることが何より大事であり、また、国際組織による人道援助の安全な輸送を妨げるイスラエルの搬入制限を解除することが求められているのだと思います。
 ガザ地区の支援を担っているUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関に対する資金援助の停止を続けながら、援助物資を空中投下したり、海路を通じて搬入をしたりしていることも、善悪を逆様に見せるためなのではないかと思います。
 本気で人道危機を回避しようとしているとは思えないのです。


 アメリカが「善悪を逆様に見せる国」であることは、日本人なら、日米安保条約日米地位協定の内容、そして、米軍の実態を検証すればわかると思います。アメリカは日本の主権を侵害し、基地周辺の住民の人権を無視し続けているのです。
 相次ぐ事故の深刻な疑念が残されているにもかかわらず、オスプレイの飛行再開が強行されるようです。

 だから、そうしたことも含めて、総合的、俯瞰的に世界情勢をとらえることが大事だと思うのです。
 下記は、「日米地位協定逐条批判」地位協定研究会著(新日本出版社)から、日本の航空管制が、米軍優先であることに関する部分を抜萃しました。

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             4 米軍の優先使用、協力を義務化
                 ──第六~八条 十条、二十一~二十三条


           一 安保の目的達成に従属する航空管制業務
 空の大量交通手段となっている飛行機の安全な運行は、ひとたび事故が発生すれば、一度に何百人の命が失われかねないだけに、きわめて重要な問題となっている。航空交通を管理する管制機関は、その安全を確保するうえで決定的な位置をしめている。
 最近、沖縄・普天間基地の米ヘリコプター部隊の嘉手納基地移転が問題になったが、米軍は、ヘリコプターと戦闘機という二つの異なった種類の航空管制を同時におこなうは複雑でむずしいとのべ、難色を示したことがあった。航空機の安全な運行にとって、航空管制がいかに重要な位置をしめているかを示す事実である。
 航空管制は、国内の民間機に対してのみおこなわれるのではない。自衛隊機の場合も、米軍機の場合も、この航空管制のもとに統一的に管理されなければならない。そうでなければ空の交通は大混乱におちいらざるをえない。
 軍用と民間の航空交通管理をおこなう場合、民間機優先れなければならないことはいうまでもない。現に戦闘行為がおきているような場合ならともかく、通常はどの国でも民間優先であり、もちろん管制権は自国が掌握している。領土主権とともに空の主権は、一国の安全にとって欠くことができないからである。
 しかし、日本では、この管制権の重要な一部が米軍に握られている。日本の航空機が、自国の飛行場への離着陸のさい、外国の管制に従わなければならない、ということほど異常なことはない。日本の航空交通管制は、普通の主権国家にはない、世界でもまれな従属的な状態におかれているのである。それを取り決めているのが地位協定の第六条である。
 地位協定第六条一項は、航空交通管制および通信体系を、安保条約の目的達成に「整合」させることを、次のように確認している。
 「すべての非軍用および軍用の航空交通管理及び通信の体系は、緊密に協調して発達を図るものとし、かつ、集団安全保障の利益を達成するため必要な程度に整合するものとする。この協調及び整合を図るための必要な手続き及びそれに対するその後の変更は、両政府の当局間の取極めによって定める」


  1  航空管制の最優先権を米軍に与える
 飛行機の航空管制は、離陸する飛行機を管制する飛行場管制をへて、空港と空港を結ぶターミナル区域での進入管制を通って空路に出て空路管制を受け、目的空港の進入管制をへて。着陸地の飛行場管制にしたうことになっている。我が国における航空交通管制は、地位協定の規定にもとづいて、本土では、1959年まで、沖縄では復帰二年後まで、米軍が一元的に実施してきた。現在でも、米軍基地がある東京、沖縄などの飛行場とその周辺における飛行場管制と進入管制は、米軍が支配している。
  新安保条約・地位協定が締結される以前の59年までの航空管制は、日米合同委員会の合意によれば、「日本側による実施が可能となるまでの間、米軍が軍の施設で行う管制業務を利用して民間航空機の安全を確保する」とされ、復帰後二年間の沖縄については、「二年間は暫定的に米国政府が。ICAO (国際民間航空機関)基準に準拠した方式により、航空交通管制業務を実施する」となっていた。日米地位協定の締結によって、こうした米軍の全土に及ぶ一元的管理がなくなったが。米軍基地及びその周辺の飛行場管制と進入管制がひきつづき米軍によっておこわれているのも、同趣旨の合意があるからである。
 しかも、防空任務に従事する米軍軍用機にたいしては、航空管制上、最優先券をあえる旨も日米政府間で合意されている。(61年3月、日米合同委員会合意要旨第二項)。また、防空上、緊急の必要があるときは、日米の防空担当機関が「安保管制」をおなこう旨の合意がされている(同四項)。「安保管制」とは、軍事的必要時には民間機の航行を制限する管制といわれている。防空担当機関とは、アメリカ側は第五空軍、日本側は防衛庁長官をさすとされている(外務省秘密文書「日米地位協定の考え方」外務省条約局・アメリカ局編)。
 さらに米軍の要求にもとづき、民間・軍を問わず、すべての航空機の航行に米軍機の軍事行動を優先させる区域制限を、アメリカの管制本部におこなわせる、という合意が存在している(59年6月4日、第三付属書第三部J)。これによって米軍は、いわゆる「アルトラブ」という、特定の飛行区域を米軍機以外の他の航空機が飛行しないよう隔離する管制上の措置、空域の「一時的留保」の措置をとることができる。そのうえ、日米両国政府の合意によって、米軍が日本の国土の側図飛行を自由におこなうことができるものとされ、また、第三国の航空機の日本領空への飛来を許可するときは、日本政府は当該航空機の経路、空港、時期を含めて在日米軍と相互に意見の一致をはかることなども取り決められている。日本の主権を自ら制限するような内容の合意を行っているのである。
 72年5月の沖縄復帰にともない、日米合同委員会は「航空交通管制に関する合意」をおこなったが、従来の米軍管制空域を追認する内容でしかなかった。
 航空管制業務を米軍に求める根拠は国内法令ではない。地位協定第六条の規定による両国政府の合意によってのみ航空管制はおこなわれているのである。
 以下、具体的事実の紹介によって、航空管制および民間航空の安全に、どのような問題が生じているかみてみたい。


  2 関東空域を複雑にする米軍横田空域の存在
 横田エリアは、横田米空軍基地の進入管制空域で、横田基地を基点とする東京、神奈川、静岡、山梨、長野、新潟などの各県をまたがった高度2万3000フィートに達する米軍管制空域である。同エリアを航行する民間機は、北陸、中国、九州方面行のもので、羽田空港から出発する241機のうち106機(44%)にのぼる。これらの機は、米軍横田管制の許可がなければ「横田エリア」を飛行することはできない。許可されないときは、羽田上空での空中待機や地上待機を余儀なくされる。
・・・
 関東地域の区域がこのように複雑で危険なものになっている最大の原因は、横田空域のためである。横田空域は、戦後50年を経過した今日でも、安保条約・地位協定によって米軍に管理されたままとなっている。羽田空港や成田空域は相も変わらず、横田空域の高くて厚い「西の壁」にはばまれ、ぎゅうぎゅう詰めの状態で放置されているというのに、西側は米軍区域として優先的に米軍用に保護され、米軍は広い空気をゆったりと使っている。しかも、この空域を通過する全交通量のうち民間機は7割を締めるのに、区域内にある横田基地などへの離着陸機はたった3割にすぎない。
・・・
 こうした状態のため、関東上空の幹線航空路は、北海道方面と中国・北九州方面については、ニqミスや空中衝突の危険性を軽減するため、航空機の対面交通を避け、一方交通方式を採用している。しかし、四国・南九州方面、沖縄方面に向かう航空機は一方交通方式が取れず。やむなく高度差による対面交通方式を採用している。横田空域が返還され、羽田空域が広がれば、四国・南九州・沖縄方面に向かう航空路も、一方交通方式とすることが可能となる。 航空交通の安全性の確保に多大な寄与となる。
・・・
  3 米軍が管制業務を掌握している岩国と嘉手納
 同様に、米軍が進入管制業務を行っている岩国、嘉手納についても深刻な問題が生じている。岩国では、米軍海兵航空隊の管制空域が四国南部から山陰の日本海沿岸まで広がっており、この広大な岩国空域に広島、高松、松山の各空域が圧迫されている。松山空港から五マイルまでは運省省が管制するが、その外側は米海兵隊が管制している。広島空港も離着陸許可を米軍から得ている状態である。
 嘉手納では、嘉手納進入管制(カデナ・ラプコン=Radio aprorch contorpll)空域との関係で多くの問題を抱えている。カデナ・ラプコンとは、嘉手納基地を中心に半径50マイル高度2万フィートの米軍管制区空域である。那覇空港への進入管制は米軍に独占されている為、航空法で空港の飛行管制のおよぶ範囲は、半径9kmの円内の高度900m以下と決められているにもかかわらず、平面で半径1km、高度で300mも狭められている。
 那覇空港の北向き着陸コースは、嘉手納、普天間の両米軍基地への侵入コースと斜めに交差するため、進入・出発とも約27kmという長いああいだ、ジャンボ機も含め、わずか高度300mという、文字どうり海面すれすれをはうような低空飛行を強いられている。これについて飛行パイロットは、ジェット機の飛び方の原理に反する低空飛行であると指摘している。
・・・
 沖縄周辺には、そのほかにも、「W(ウォーニHグ)エリア」と呼ばれる米軍専用制限空域が16カ所設定されている。総面積は9万2000㎢で、沖縄本島の76倍にもなる広大さである。これは本土復帰前に、設定されたものがそのまま残ったものである。この空域では、空対空、空対地などの実弾射撃訓練や各種戦闘訓練が実施され、一般民間機は、この空域を避けて航行することを余儀なくされている。総工費10億円をかけて1500mの滑走路を整備した伊江島空港は75年に完成したが、完成直後から制限空域「W1ー178」があるため、事実上廃校に追い込まれている。
 また、沖縄では、Wエリアと別に、米軍の要請で空域を「一時保留」する。「アルトラブ」が設定されている。このアラトラブは、航空路地図にも出てこない。米軍の一方的な要請で任意に設定される空域は年間1000件にものぼっている。
 全運輸沖縄航空支部の座間味優委員長は、「Wエリアやアルトラブで空域せばめられているため、民間機を針の目をかいくぐるかのように飛行させている。一日も早くWエリアやアルトラブをなくし、軍事優先をあらためさせなければ、空の安全を守れない」と訴えている。


  4 外国軍隊が民間機を管制している例はあるか
 このように、外国軍隊によって、自国の空が支配されている状態について、運輸省OBや著名な航空評論家は、われわれの質問にたいして、「発展途上国についてはすべて情報があるというわけではないが、他国の軍隊が民間航空機の航空管制をしている話は、欧米では聞いたことがない。その国の軍隊が民間航空機の航空管制をしているところはたとえば韓国などがある。ヨーロッパでも、2万5千フィート以上の上空についてはユーロコントロールとよばれており、一部に軍も入った組織が航空管制をしている可能性はある。しかし、外国軍隊が航空管制しているとは聞いたことはない」と述べている。
 ・・・
 地位協定からも逸脱して展開されている日本各地での米軍機による超低空飛行訓練に見られるように、空の安全のために制定されたはずの航空法は、安保条約と日米地位協定に基づく航空法特例法によって、この肝心の部分が米軍に適用されていない。しかも、日米合同委員会の合意に基づいて、日本の空の管制が米軍に一部委ねられていることによって、日本の航空の安全が脅かされている。
 まず、地位協定の規定をも逸脱している米軍機による超低空飛行訓練は、ただちにその中止を求めるべきである。さらに、少なくとも航空法特例法によって、日本の航空法を米軍に幅広く適用除外している規定を廃止し、米軍による進入管制の廃止、沖縄周辺の空については占領時代をそのまま継続するような取り扱いの是正、この三点の是正が最小限必要である。



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トランプとメディアとディープステート、そして日米地位協定

2024年03月10日 | 国際・政治

 私は、朝日新聞から多くのことを学んできたのですが、ウクライナ戦争以降、毎日のように苛立ちを感じる記事を目にします。
 先日、朝日新聞の「考論」という欄に、神戸大学大学院の蓑原俊洋教授の「トランプ氏取りこぼし影響注視」と題する記事が掲載されました(聞き手・根本晃)。
 朝日新聞が、中立的な立場を放棄し、アメリカのバイデン政権の戦略に追随していることを、自ら表明しているような記事だと思いました。下記は、その一部です。
トランプ氏はほぼ全ての州で圧勝したものの、多くの州で当初の得票予想を数%ずつ下回った。こうした「取りこぼし」が、接戦が予想される本選にどのような影響を及ぼすのか注視する必要がある。  
 ・・・ 
 もしトランプ氏が勝利すれば、1期目同様にアジア情勢を軽視する可能性は否定できず、そうなれば日本は米国頼りの姿勢からの転換を余儀なくされる。欧州や韓国、オーストラリアなどとの経済安全保障面での連携を多面的・重層的に深める必要がある。(戦闘が続く)ウクライナやパレスチナの人々は見捨てられるだろう。トランプ氏の行動基準は、自分にとって利益があるか否かだ。バイデン氏はウクライナ侵攻を『自由主義を専制主義から守るための戦い』と位置づけて支援を訴えているが、トランプ氏がそのような崇高な理念を踏襲する可能性はない。” 
 バイデン政権の継続を期待し、トランプ氏を貶める内容だと思いました。確かにトランプ氏は、人類が多くの犠牲を払って進歩させてきた法や道義・道徳を軽視する傾向があり、危うさを感じます。でも、ウクライナ戦争を止めようとせず、また、イスラエルの一方的なパレスチナに対する攻撃、学校や病院、避難所に対する爆撃による多くの子どもや女性の殺害、餓死者を出すような支援物資の制限というイスラエルの戦争犯罪を止めようとせず、国連安保理のガザ停戦決議案拒否権を発動し、イスラエル支援を続けるバイデン大統領が、民主主義の崇高な理念で動いているなどというのは、読者を欺瞞する内容だと思います。

 また、別のところには、”移民締め出し「最大の作戦」■ロシアの侵略 既成事実化”と題する記事が掲載されていました(ワシントン=望月洋嗣)。こちらも、バイデン政権の戦略、さらに言えば、トランプ氏を貶めるために持ち出した「ディープステート(影の政府)」の戦略に追随していることを表明しているような記事だと思います。
 「ディープステート(影の政府)」は、確かに、実態のはっきりしない曖昧なものだと思います。でも、最近のアメリカの軍事費は、8,000億ドルを超えるといいます。そして、それが世界の軍事に関する総支出に占める比率はおよそ38%前後だともいうのです。だから、ロッキード・マーティンやボーイング、 レイセオンなどに代表されるアメリカの軍事産業が、自らの利益のために、バイデン政権国防総省陸海空の米軍組織CIAなどの情報機関大手メディアなどといろいろなつながりをもって、アメリカの政策に関与しているであろうことは、当然、予想できることだと思います。それを「ディープステート」と呼んでいいかどうかは、私にはわかりませんが、間違いなく、そうしたものの力は働いているであろうと思います。アメリカが戦争をくり返してきたこと、また、さまざまな国の内政に関与し武力行使をしたり、紛争を話し合いで解決するのではなく、武力的な戦いの一方側の側を支援してきたことが、そうしたことを物語っていると思います。
 日本でも、大手企業が自民党への多額の献金を続けています。それが、企業の社会的責任に基づくもので、日本の政策決定とは関係がないと断言できるでしょうか。私は、あり得ないと思います。

 現に、2017年、トランプ氏が大統領に就任する数週間前に行われたインタビューにおいて、上院民主党の院内総務であったチャック・シューマー氏は、CIA批判を繰り返してきたトランプ氏を「本当に間抜けだ」と罵り「言っておくが、情報機関を敵に回すと徹底的な復讐にあうぞ」と述べたと伝えられました。
 そして、アメリカ自由人権協会(ACLU)を含む、さまざまなメディアのコメンテーターが、この発言を「ディープステート(影の政府)」の存在を示す証拠として指摘したともいいます。
 それを、トランプ氏が、”「陰謀論」を背景に「ディープステート(影の政府)の解体」といった主張を重ねてきた”などと、断言できるのでしょうか。私は、「ディープステート」を「陰謀論」扱いし切って捨てるその姿勢が、かえって、「ディープステート」の存在を隠しつつ、「ディープステート」に追随するメディアの姿ではないかと想像します。
 なぜなら、CNN MSNBC ニューヨークタイムズ ワシントンポストなどのアメリカの大手メディアが、トランプ氏が指摘していたように、中立的な立場を放棄して、バイデン政権を支えるような報道を続けているよういに思えるからです。そして、日本の大手メディアも、ほとんど同じような報道を続けているように思います。
 ウクライナ戦争に関して、ロシア側の主張は、ほとんど報道されませんでした。
 先日、さまざまな困難を乗り越えてロシアを訪れ、プーチン大統領に長時間のインタビューした元FOXのタッカーカールソン氏について、日本のメディアは、トランプよりのジャーナリストであるとして、その内容は、ほとんど伝えていません。
 ウクライナ戦争の停戦に極めて重要な意味を持つものだと思いますが、その内容は、ほとんど報道されていないと思います。受け入れ難いことです。

 下記は、朝日新聞の、その記事の全文です。
 ”トランプ氏は前回の大統領選の敗北を認めず。陰謀論を背景に「ディープステート(影の政府)の解体」といった主張を重ねてきた。もし再び大統領に選ばれれば「ディープステート」への攻撃に名を借りて、政敵への「報復」を図りかねない。
 政策面で「2期目」に最も力を入れようとしているのが、米国に入ってくる移民への対応だ。5日夜の集会所も「国境を閉鎖する」と宣言。強制送還を含む「史上最大の作戦」を実施する考えを示す。
 一方、米国の対外介入には否定的だ。短期的な視点から二国間の「取引(ディール)」で成果を得ようとする傾向があり、多国間外交の枠組みや同盟国は大きく揺さぶられる。「大統領になれば、ウクライナでの戦争を24時間で片付ける」と語り、ロシアとウクライナの停戦仲介に乗り出す意向を示しているが、実行すれば、ロシアの侵略を既成事実として認めることになる。
 中東では親イスラエルの姿勢をさらに強め、イランや、その支援を受けるイスラム組織にはより強硬な姿勢を取る。1期目にほのめかしていた北大西洋条約機構(NATO)からの脱退に踏み込めば、欧州の安全保障環境が根本的に変わる。
 米国の製造業や米国製品を保護する施策として、外国製品に一律10%の関税をかける考えも示す。日本など友好的な貿易相手国にも経済的打撃を与え、国際的な供給網に大きな混乱をもたらすことになる。
 中国に対しては対決姿勢を強めそうだ。中国製品への関税の税率を上げるほか、世界貿易機関(WTO)ルールの基本である最恵国待遇の打ち切りを示唆している。一方、習近平国家主席との直接交渉で、目先の利益を優先しした妥協を進めかねない危うさもある。台湾有事への対応は明言していない。対日関係は重視しつつも、在日米軍の駐留経費をさらに多く負担することなどを可能性も高い。

 バイデン大統領が、ほんとうに崇高な理念に基づいて『自由主義を専制主義から守るための戦い』をしていると言うのであれば、なぜ、明らかに日本の主権を侵害し、人権を蔑ろするような「日米安保条約」や「日米地位協定」が、いまだに改定されず放置されているのか、私は、神戸大学大学院の蓑原俊洋教授に教えてほしいと思うのです。
 下記は、「日米地位協定逐条批判」地位協定研究会著(新日本出版社)からの抜萃です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
           3 出入国とと移動、民間施設使用を保障する条項──第五、九条

     一 日本の空港、港湾への出入りとその使用(第五条一項、三項)
 地位協定第五条一項、三項は、日本の空港、港湾への米軍の船舶と航空機の出入りについて、次のような規定をおいている。
 「合衆国および合衆国以外の国の船舶及び航空機で、合衆国によって合衆国のために、又は合衆国の管理の下に公の目的で運航されるものは、入港料又は着陸料を課されないで日本国の港又は飛行場に出入することができる」(一項)
 「港に入る場合には、通常の状態においては、日本国の当局に適当な通告をしなければならない。その船舶は、強制水先を免除される」(三項)
 文言からも明らかなように、第一項は、米軍の船舶と航空機が日本の空港、港湾に出入りする場合、空港使用料や入港料を免除することをとりきめたものである。在日米軍に対する支援経費の総額は、1996年度に約6400億円に達しているが、それ以外にも、このような免除措置により、事実上の財政支援がおこなわれているのである。米軍による空港の使用は年間で1000回近くあり(資料10)、艦船の寄港使用も少なくない(資料11)。免除総額についての政府資料は存在しないが、ボーイング747程度の航空機が成田空港を一回(一日)使用しただけで約95万円になることからみて、莫大な額であることは疑いない。
 第三項は、米軍が港湾を利用する場合の通告義務と、その際の水先の免除を定めたものである。国籍不明の戦闘機や艦船が突如として空港、港湾にあらわれれば、航空管制や水先案内が大混乱におちいるわけであり、当然の規定といえる。航空機の場合の通告が書かれていないのは、航空管制が免除されることは安全上ありえないからであり、通告が不要だというものではない。

  1 米軍の出入りと日本政府の許可 
 ・・・
 実際に、航空機や艦船を日本の空港、港湾に出入りさせるにあたって、米軍が日本側に許可を求めてくることはない。空港、港湾の管理者にたいして、ただ通告がおこわれるだけである。その通告にしても、「民間機は二ヶ月ほど前に運行計画が提出されるが、米軍機はその日の朝に連絡がある」(九州のある空港長)という程度のものにすぎない。
 しかし、憲法上の疑義がある民有地の基地としての提供(いまの沖縄問題の焦点)でさえ、提供にあたっては法的な手続きを必要としている。基地として提供されていない日本の施設の使用権を、国内法でなんの根拠づけがされていないにもかかわらず、アメリカが全面的にもっており、日本側に拒否する権限がないとするのは、憲法と国内法を真っ向からじゅうりんする見解である。
 実際、第五条一項のどこにも、米軍の権利という用語が出てくるわけではない。これはNATO軍地位協定の補足協定(93年改定のドイツ補足協定)の対応する条項(第57条第一項a)が「NATO軍は)車両、船舶及び航空機で連邦共和国に入国し、又はその連邦領域内の内部もしくは上空を移動する権利を有する」として、明文で権利を認めていることも異なる。しかも、ドイツ捕捉協定が権利としているのは、ドイツへの入国と移動に限ってのことであり、国内施設の利用までをも権利であると規定しているわけではない。
 さらにいえば、たとえ日本の施設への出入りは米軍の権利だとする立場にたったとしても、それがただちに日本側の許可は不要だ、ということにつながるわけでもない。NATO軍の出入りを権利であると明記したドイツ補足協定でさえ「連邦政府による承認」がその条件であることを明確にしている。米軍の権利を認めることと日本側の承認を必要とすることは、矛盾しないのである。
 米軍の出入国に日本側が個別に承認を与えるべきだとする立場に立つなら、その主体は、いうまでもなく日本政府である。同時に、入国に際して、米軍に提供されている施設でなく、我が国の空港、港湾を使うなら、その管理者にも、使用許可し、あるいは拒否する権限があるということになる。

 この点で重要なことは、空港の管理権は国に属している場合が少なくないが(自治体管理空港もある)、港湾にかんする管理権は、戦前は国家に属していたが、戦後、自治体のものになったことである。この管理権のなかには、危険物を運ぶ船舶の規制などもふくまれる(港則法第四章)。自治体には、演習のための武器、弾薬を満載した米軍艦船の寄港を、港湾の安全の確保などを根拠に拒否する権限があることは明白であろう。神戸市は、入港する艦船に非核証明書の提出を義務づけ、提出しない艦船の寄港を認めていない。これに高知県もつづこうとしている。政府がこれを違法措置であるといえないことは、現行の地位協定のもとでも、米軍にどのような権利があるといっても自治体の管理権を侵すことはできないことを、実際には意味しているといえる。
 
  2 空港、港湾の使用目的の制限 
 地位協定第五条による民間の空港、港湾を利用した出入りがありうるとはいえ、米軍が基本的に使用するのは、第二条にもとづき提供された専用基地であるのは当然である。したがって、民間施設の利用はおのずから限定されたものでなければならない 
 まず、どの空港、港湾を使えるのかという面での限定がある。米軍の構成員・軍属・家族の出入国にかんする1952年5月の日米合同委員会の合意は、「開港又は米軍の管理する空港」については米軍が使用できるとしている。開港とは、「外国船舶の出入りが許されている港のことで、関税法施行令で定められた120近い港のことをいう。米軍が管理する空港とは、地位協定第二条で提供されている基地のうち、空港施設をもつものである。要するに、港湾については日本のものを一般に使用できるが、空港については米軍基地を使用するのが基本ということである。合同委員会の合意は、「緊急の場合は、他のいずれの日本国の港又は空港にも入ることができる」とされており、開港でない港湾、日本の施設である空港を利用できる道を開いてはいる。しかしこれは、合意にあるように、「緊急の場合」しか使えないのである。
 ・・・
  地位協定第二条で恒常的に提供している基地(極東の平和目的で使用できる基地)であっても、戦闘作戦行動のために使用する場合や核兵器を持ち込む場合は、無条件には使用できない。安保条約第六条に関する交換公文により、日本政府との事前協議が必要とされる。ましてや、基地として提供されているわけではない日本の施設の使用が、目的のいかんを問わず許されるということは絶対にありえない。「緊急の場合」にしか使えないというのが、当然の法理である。この観点でみれば、海兵隊の実弾演習を移転するための空港、港湾の使用は、「緊急の場合」でないという点でも、また極東の範囲を超えて展開する部隊によるものであるという点でも、許されないことは明白であろう。
 ところが、実際の使用実態が。このような制約を踏み越えるものとなっていることは、極めて重大である。…
ーーー
        二 提供施設、民間施設間の移動(第五条二項)
 地位協定第五条二項は、軍の装備と軍人、家族について、「合衆国軍隊が使用している施設及び区域に出入りし、これらのものの間を移動し、及びこれらのものと日本国の港又は飛行場との間を移動することができる」ことも定めている。また、この項では、「移動には道路使用料その他の課徴金を課さない」と明記している。この結果、米軍の有料道路使用料の免除額は、年間で7億円を超えるにいたっている。

  1 移動の定義と交通秩序との衝突
 日本国に入国した米軍とその構成員が、提供した基地や入国の際に利用した空港、港湾にとじこもって一歩も外に出ないことは考えられず、これらの間を移動することはありうることである。したがって、その範囲で適用されるなら、いわば当然のとりきめとあるといえる。ところが実際には、道路などを使った訓練が、「移動」と称しておこなわれている。その代表が、沖縄で問題になってきた海兵隊の行軍訓練である。
 行軍訓練とは、ときとして完全に武装した海兵隊が一般県道、一般国道を行軍するものであり、周辺住民に非常な不安を与えている。海兵隊報道部の発表によれば、部隊の即応体制の維持などが目的とされている。 
 ・・・
 …60年の日米合意議事録は、地位協定の第五条にかかわって、「この条に特に定めのある場合を除くほか、日本国の法令が適用される」と明確に述べている。その根拠は、外務省が日米地位協定にかんする解釈を極秘裏にまとめた「日米地位協定の考え方」(73年)によれば、「米軍のわが国内の通行は、直接わが国の交通秩序に関わるものであり、かかる場合にはわが国の法令が遵守されるべきは当然」ということである。米軍だからといって信号を無視してよいなどとなれば大変なことにあるのであり、当たり前のことであろう。
 この規定にしたがって、陸と海の交通秩序にかんする国内法については、適用が除外されていない。…ところが、空の交通秩序を規定する航空法については、米軍のための特例法をつくり、適用を除外しているのである。…
…米軍が極東の平和にとって必要だといえば、地位協定で許されていようがいまいが、日本の上空であっても米軍機の訓練はできるというのである。
 しかし。米軍機の低空飛行が国内の交通秩序に密接にかかわるものであることには変わりはない。また、日本の空は最近もVFR(有視界飛行規則)で飛ぶ航空機同士の衝突が起きるなど、交通秩序の維持がますます重要になってきている。空だけを特例扱いしているのは、まさに米軍の戦略的な要請があるからに他ならないが(本書4「米軍の優先使用、協力を義務化」を参照のこと)、日本国民にとって死活的な空の交通の安全という面から見れば、この特例はただちになくさなければならないであろう。 


  2 車輛制限令の適用除外の問題点
 ・・・
 車両制限レートは、道路法(第47条)が、道路の構造保全と交通の危険防止のため、車両の幅や重量を制限するとしていることにもとづき、その最高限度を定めた政令である。法律で通常は通行が許されない米軍の大型の危険車両が、自由に道路を使用する結果、少なくない事故がおきている。たとえば、1985年3月、沖縄では一ヶ月で四件もの米軍特殊車両による事故が連続し、県議会が「米軍特殊車両の通行および事故防止に関する決議・意見書」を全会一致で採択したこともあった。
 実は、車両制限令は、以前は米軍に適用除外されていなかった。ベトナム侵略戦争の遂行のために、日米両国政府が強行したものである。
 ・・・
 もう一つは、 日本国内を通行する米軍車両に火薬取り締まり法が完全には適用されないことである。砲弾や火薬類など、どんな爆発物を運んでも、「米軍自体の安全規則の順守、そういうものにゆだねられており、(72年、衆議院決算委員会)、国内法では規制できないことである。
 火薬取り締まり法は、火薬類を運搬する場合には、都道府県公安委員会に届け出、運搬証明書の交付をうける義務などを課している。ところが、60年の日米合同委員会合意「米軍の火薬類運搬上の処置」は、その特例を定めている。
 火薬類を運搬する米軍車両は、「火薬」と記載した標識をつけることは義務づけられている。しかし、2000ポンド以上の米軍の火薬類の輸送について、日本の運搬業者が運搬する時には「日本の法令で要求されるすべての手続きを行わなければならない」としつつ、「これの手続きは、米軍所有の軍用車については必要としない」として、米軍自身が輸送する場合は、法律の適用除外している。県当局にたいする通知も「可能な限り」おこなえばよいだけである。都道府県公安委員会は、危険な火薬類をチェックすることもできない。 
ーーー
          三 軍構成員等の出入国管理と検疫問題(第九条)
1 出入国管理の広範な免除の問題点
 通常、外国人が日本に入国するには、自国政府が発行する有効な旅券を所持し、その旅券に日本の在外公館で査証(ビザ)をうけ、上陸にあたっては検疫をうけ、上陸審査を経ることが必要とされる。入国後も、外国人は、在留資格にもとづき一定の在留期間に限って活動できるものとされ、資格外の活動をしたり、期間を延長する場合は、法務大臣の許可をとらなければならない。また、上陸後60日以内には外国人登録法にもとづく登録申請をおこなわなければならず、住所などを変更したときは申請する義務があり、違反したときには処罰されることになっている。
 ところが地位協定第九条は、「合衆国軍隊の構成員は、旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外される。合衆国軍隊の構成員および軍属並びにそれらの家族は、外国人の登録及び管理に関する日本国の法令の適用から除外される」と規定する。つまり、軍構成員は、旅券・査証・登録・管理のすべての法令の適用が免除され、軍属・家族は登録・管理の法令が免除されるということである。 軍構成員とは、協定第一条で述べているように、「日本国の領域にある間におけるアメリカ合衆国の陸軍・海軍または空軍に属する人員で現に服役中のものである。同様に、軍属とは、「合衆国の国籍を有する文民で、日本国にある合衆国軍隊に雇用され、これに勤務し、又はこれに随伴するものであり、家族とは「配偶者および21歳未満の子」「父、母及び21歳以上の子で、その生計費の半額以上を合衆国軍隊の構成員または軍属に依存するものである。
 この結果、日本側はどういう名前の米国人が、どの基地にいるのかさえ、まったくつかめない状態になっている。 … 
 出国も入国も米軍の思うがままにおこなわれることで、国民生活とのかかわりでいつも問題になるのは、犯罪を犯した米兵が、日本側の知らぬ間に出国してしまうことである。

  2 地位協定で明記されていない検疫
 人および動植物の検疫は、出入国管理の一環をなす重要問題である。ところが、日米地位協定はこの問題を規律する条項がない。それならば、日本の国内法を順守し、どこから入国しようとも日本の検疫所の検疫を受けるべきであるが、政府は地位協定に書いていないから国内法の適用はしないとの態度をとっている 
 ・・・
 …しかし、人と動物の検疫に関しては、基本的な構造はまったく変わっておらず、米軍の検査官が認めれば日本側は何もいえないままである。

 

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日米地位協定と日本の主権

2024年03月02日 | 国際・政治

 ”2月初め、朝日新聞は、「時時刻刻」という欄に、”基地発PFAS汚染「例外」の日本”と題する長文の記事を掲載しました。”調査に応じない米側■対策費住民負担”という副題がついていました。
 そして、
発がん性が指摘される有機フッ素化合物(総称PFAS)が日本国内の米軍基地周辺で検出され、住民生活への影響が懸念されている。米国で問題が広がり、米政府は国内向けに規制を強め、大規模な対策予算を投じる。だが、日本国内では対策に積極的と言えず、住民は不信感を強めている。
 というサマリーがついていました。
 また、記事の脇に、”化学物質PFASなにが問題? 体内に長く蓄積され、発がん性も指摘されている”と題する化学物質PFASに関する具体的な説明も付けられていました。
 かなりの長文で、実態や問題点をきちんと把握し、告発するような思い切った記事だと思いました。
 でもこの記事は、”どうすべきか” ということには踏み込んでいません。朝日新聞の中枢は、これ以上踏み込んだことは、日本政府の批判、そして、米軍の批判、さらにはアメリカ政府の批判につながるので書かせないのではないかと想像します。
 だからそれが、現在、朝日新聞を中心とする日本の現場記者の記事の限界になっているような気がします。実態や問題点は指摘しても、”どうすべきか” ということには踏み込めないということです。

 先日、朝日新聞社説は、ウクライナ侵攻2年ということで、”長期化見すえ持続的支援を” と題する記事を掲載しました。この記事は、前記の「時時刻刻」の記事とは対照的に、”どうすべきか” ということが、そのまま「見出し」になっているのです。
 それは、アメリカや日本の政府に抱き込まれた朝日新聞中枢の、政治的立場を示しているのだと思います。

 社説は、下記のような書き出しで始まっているかなりの長文です。
ロシアが国際規範をふみにじり、隣国ウクライナへの全面的な侵略を始めて、きょうで2年になる。 ロシアが一方的に始めた戦争を終わらせられるのは、ロシアだけだ。プーチン大統領に改めて求める。直ちに停戦し、ウクライナ領土から全軍を撤退させよ、と。
 私たちも、認識を新たにしたい。
 この戦争は今後も長く続く可能性があること。その結果、侵略者が得をする事態に至れば、模倣する勢力が後に続き、力と恐怖が支配する世界が現出しかねないこと。私たちの未来のためにも、息長くウクライナを支えていく責務があることを。
 この書き出しでわかるように、朝日新聞中枢は、完全にアメリカの戦略に基づいた考え方をしていると思います。「停戦協議」を求めるのではなく、「全軍撤退」を求め、撤退しない場合は、戦いを続けるべきだというアメリカの戦略です。
 ロシアを敵視しつつ、ウクライナに関わっていたアメリカやNATO諸国の動きを隠し、戦争の経緯を完全に無視して、100パーセントロシアが 悪いという主張であり、また、話し合いではなく、アメリカを中心とするNATO諸国の主張に従わなければ、戦争(殺し合い)を続ける必要がある、という恐ろしい考え方だと思います。これが民主主義を掲げるアメリカや日本の姿勢なのです。 


 私は、”侵略者が得をする事態に至れば、模倣する勢力が後に続き、力と恐怖が支配する世界が現出しかねない” などというのも、くり返し軍事力を行使し、覇権や利益を維持・拡大してきた西側諸国、特に、アメリカの政治家や軍の高官の利己的な妄想だと思います。そんな「妄想」に乗せられて、攻撃的な姿勢を見せるから、抵抗する国や集団が、次々に出てくるのだと思います。
 また逆に、日本のように、主権を放棄して、アメリカに追随する国も出てくるのだと思います。
 
 下記は、「日米地位協定逐条批判」地位協定研究会著(新日本出版社)から、”2 「排他的使用権」を容認する反国民的規定──第三条” の”2 「排他的使用権」国土と環境破壊”と”3 日本の法令による規制の排除”を抜萃しました。有機フッ素化合物であるPFAS(ピーファス)の問題は、同書では、まだ直接扱うに至っていなかったようですが、米軍駐留に基づく、深刻な「環境破壊」や「人権侵害」が、PFASの他にもいいろいろあることが分かります。

 アメリカでは、PFASの環境汚染対策に5年間で、90億ドル(1兆3000億円)の予算を投じる方針だといいます。日本でも、嘉手納基地厚木基地、横須賀基地、横田基地、三沢基地などで、PFASが検出されたリ、流出が分かっているのに、なぜ放置されるのか、なぜ、その費用を住民が負担することになるのか、きちんと受け止めて対応すべきだと思います。

 記事の片隅に、”他国で調査・浄化進む”と題した記事があり、”ドイツの米軍基地では米軍負担でPFAS汚染の調査を実施し、浄化作業も実施している”とあります。また、米軍の環境汚染を取材する英国人ジャーナリストのジョン・ミッチェルさんは、日本の状況は「例外的」との認識だといいます。
 その理由は、日本の政治が、戦後まもなく、アメリカの公職追放解除のおかげで、第一線に復帰しすることのできた戦争指導層によって進められてきたからだと思います。常に、アメリカ追随で、当たり前のことも、アメリカ相手の場合は要求しないからだと思います。だから、現在の自民党政権は、自ら主権を放棄していると言えるのではないかと思います。
 相手がアメリカであっても、きちんと要求すべきは要求し、拒否されたり、理不尽な対応をされたりしたら、それなりの対応をすべきだと思います。
 また、いつまでも軍事同盟など維持しないで、主権を取り戻すために、日米地位協定や日米安保条約の解消・破棄も検討すべきだ、と私は思います。

 日本の米軍基地は、下記のような日米安保条約の条文に反し、くり返しアメリカの利益と覇権のための戦争に使われてきたと思います。ベトナム戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争をふり返れば、分かると思います。日本国の安全に寄与し、極東における国際の平和及び安全の維持に寄与してはいないと思います。

   日米安保条約

第一条 締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。
 締約国は、他の平和愛好国と協同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。

第六条 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。
 前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。”
 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー               
            2 「排他的使用権」を容認する反国民的規定──第三条

 2 「排他的使用権」国土と環境破壊
<基地の造成>
 アメリカは、田畑をつぶし、町を破壊し、山林を崩し、海を埋め立てるなどして基地を造成し、分厚いコンクリートを敷きつめて滑走路を設置したり、その他さまざまな施設を築造してきた。それ自体、重大な環境破壊をもたらすものである。
《実弾演習による国土と環境の破壊》
 演習場では、米軍は無数の実弾を打ち込み、山林を焼きつくし、数え切れない不発弾を放置してきた。たとえば、キャップ・ハンセン演習場では、1972年の本土復帰から95年12月1日までの間に、256日、163回の155mm榴弾砲などの実弾演習が実施され、着弾数は40,823発と膨大な数にのぼっている。このような実弾演習は、県道を封鎖して、住宅地から700mというすぐ近くで実施されておりものすごい発射音や炸裂音、そして激しい振動が周辺住民に多大な不安と恐怖、生活妨害など、さまざまな被害を与えている。現に、実弾演習による被弾・流弾事故は、金武町の記録だけでも、復帰後17件も発生しており、89年にも高速道路のサービスエリアの給与所やトイレの窓ガラスなどの被弾事故が起こっている。のみならず、着弾区域となっている恩納連山は山肌が一面削り取られてハゲ山となり、山林火災もたびたび発生している。演習場内の自然が破壊され、赤土流出による河川や海域汚染の原因となっている。そして、漁業にも多大な被害をあたえている。(金武町の報告 前掲『調査報告 沖縄の米軍基地被害』)。
 沖縄本島北部の山岳地帯は、世界的にも貴重な動植物が数多く生息する自然の宝庫といわれている。国際鳥類保護会議(ICBP)や世界野生動物基金(WWF)から「絶滅の危機」にある種に指定され、その保護が国際的にも求められている特別天然記念物のノグチゲラ、国指定の天然記念物のヤンバルクイナ、リュウキュウヤマガメなどが生息している。この山岳地帯である北部訓練場では、海兵隊がジャングル戦や掃討戦、陸海空にまたがる総合演習をくりかえし、自然破壊を続けている(安仁屋政昭ほか著『沖縄はなぜ基地を拒否するのか』新日本出版社、96年参照) 

 《有害物質の不安と被害》
 他方、基地からは、毒ガス、廃油、ジェット燃料、排気ガスや放射能などさまざまな有害物質が放出・流出されてきた。
 たとえば、沖縄では、屎尿などの汚染やオイル、廃油などの流出は、復帰以降1994年までに65回発生し、県民の飲料水を取水している河川や海域が汚染された。嘉手納町では、復帰前、基地内のジェット燃料が地中を伝わって民家の井戸に流入「燃える井戸」として大問題となったり、キャンプ端慶覧をかかえる北谷町では、海域に流出した廃油が養殖漁場を直撃し、大きな被害を出した。東京・横田基地の周辺、昭島市や立川市などでも、ジェット燃料が住宅の井戸から発見されるなど同様の問題が発生している。さらに、PCBが嘉手納基地に大量に野積みされ、漏出していたなどの問題も発生している。(前掲『沖縄はなぜ基地を拒否するのか』、「東京横田基地」編集委員会編『東京横田基地』連合出版86年参照)
 なかでも横須賀基地、佐世保基地、沖縄県ホワイトビーチは、原子力艦の寄港地であり、寄港時に、通常以上の放射能が検出されたりして、周辺住民らに大きな不安と被害を与えている。横田基地でも核兵器の貯蔵庫の存在が確認され、核事故たいする特別訓練が行われている。
 97年2月には、沖縄の鳥島射爆場で米海兵隊の攻撃機が1500を超える劣化ウランの機銃弾を撃ち込んでいた事実が明らかになった。米側は「誤射」と説明しているが、この劣化ウラン弾は放射能を帯びているものであり、米国内の特定の射撃爆場以外での使用は禁じられているという。しかも、これを使用した事実が一年間以上も秘匿され、日本政府にすら報告されてこなかったのである。日本国民を無視する米側の無法ぶりはここでも明らかにされている。

《騒音被害》
 基地に離発着する航空機騒音やエンジンテストなどの地上音による被害も深刻である。耳をつんざくようなジェット機による金属音をはじめ、100デシベルを超える騒音に四六時中悩まされ続けている。これは、地下鉄の構内で電車が発する騒音以上のものである。そのような爆音が一日に100回、200回と頭上からたたきつけるように、建物を振動させ、住民に襲いかかる。その都度、墜落事故などの恐怖に襲われるのである。
 基地周辺住民が受け続ける被害は、夜間飛行による睡眠妨害を始め、会話・電話・だんらん・育児など日常生活の妨害、学校の授業の中断、自宅での学習の妨害、イライラ・ストレスさらには難聴や高血圧など健康被害にまでおよんでいる。これらの騒音被害をもたらす米軍機の飛行などは違法であり、日本政府が被害住民に損害賠償責任を負うことが横田基地の最高裁判決で確定している(1993年2月25日、第一小法廷判決)。嘉手納基地や厚木基地でも、それぞれ同様の判断が裁判所で出されている。
  ところが、裁判所は、米軍が基地の管理権を有すること、日本政府が米軍に対して基地の管理運営権限を規制し活動制限する権限がないことを理由にして、夜間飛行の差し止めを認めず、せめて夜だけは静かに眠らせてほしいという住民の要求をしりぞけてきたのである。(前記横田基地公害訴訟最高裁判決など)。日本政府は、最高裁判所が判決を出したのちに、ようやく厚木基地と同様に横田基地についてもアメリカ政府との合同委員会で、夜10時から朝6時までの飛行を規制する合意を行った。しかし、この合意も遵守されておらず、騒音被害は改善されていない。しかも、たとえば、横田基地についての東京都環境保全局の調査では、1994年に環境基準を達成した日は、年間わずか14日に過ぎないと報告されている。
 これに対して95年3月1日に発表した「アメリカと日本の安全保障関係にかんする報告書」(国防省)では、在日米軍施設は、アメリカあるいは日本のいずれかのきびしいほうの環境基準を満たしていると報告している。米軍は、日本の最高裁の確定判決をも無視し、違法な騒音被害をみずからまきき散らしつづける実態をいつわり、公然と虚偽の報告を行っている。これでは、騒音被害が改善されるはずがない。

   3 日本の法令による規制の排除
 米軍基地においては、日本の法令による規制は排除され、ないがしろにされている。たとえば、建物を建築する場合でも、宅地造成法や建築基準法などの適用はされず、弾薬庫の設置にも火薬類取締法は適用されず、埋め立てにも公有水面埋め立て法などの適用されず、米軍は勝手に日本の国土を利用してきた。騒音規制法その他さまざま環境基準なども、無視しつづけてきた。
 普天間基地の「返還」に関連して、基地機能を維持し、移設するため、嘉手納弾薬庫地区での1500メートルの滑走路を有する基地新設が提起されたが、そこでも自然環境の破壊がいっそう拡大される点が指摘された。環境保護という視点は、日本の政府にはまったく考慮されていないのである。その後、この基地の新設は、同規模の海上ヘリポート建設案に変更されているが、その場合でも、海洋汚染や漁業への被害など深刻な問題が発生することが予想され、地域住民が強く反発している。
 このように日本政府は、本来適用されてしかるべき日本の法令の遵守を米軍に求めず、地位協定上、明記されている制限(地位協定第三条第三項「公共の安全に妥当な考慮を払う」など)すらこれを遵守させようとしていないのである。 
 前述のように米軍基地の航空機騒音が基地周辺住民に多大な被害をあたえつづけているにもかかわらず、夜間飛行の規制すら米軍に要求せず、また、沖縄での実弾演習を初めとするさまざまな被害についても、これを放置しつづけてきたことに、日本政府の姿勢が端的に示されている。
 沖縄県は、地位協定第三条を見直し、「地域の住民に大きな影響を与える航空機騒音および環境保護に関しては、施設・区域内でも国内法を適用すること」を政府に要請している。県民の生活と権利を守る立場からの当然の要求である。これに応じようとしない日本政府の態度には、国民の生活・権利を犠牲にして日米安保や軍事・米軍の利益を最優先させる反国民的姿勢が露呈されている。 

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続くナワリヌイ死亡報道の問題点

2024年02月26日 | 国際・政治

 21日朝日新聞は、”ナワリヌイ氏妻「闘いを続ける」【6.8万人、遺体引き渡し要求】”と題する下記のような記事を掲載しました。

北極圏の刑務所で獄死したロシアの反政権派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の妻ユリアさんが19日、夫の遺志を継ぎ、「さらに激しく闘いを続ける」と宣言した。5万人規模の追悼デモが3月2日にモスクワで計画されるなど、批判の声が広がっている。

 ロシア当局によると、ナワリヌイ氏は16日に死去した。国外にいるユリアさんはSNSに動画を投降し、「プーチンは私の夫を殺した。同時に私たちの希望や自由、未来を、私たちから奪おうとした」と述べた。

 ロシアの独立系メディアによると、ナワリヌイ氏は3年間で計308日間、懲罰の独房にいれられた。

ユリアさんは、「部屋は67平方メートルで床の穴がトイレ代わり。横になることもできない」過酷な環境だったとしたが、「彼はあきらめなかった」と強調した。「大切なのは、アレクセイのために、自分たちのために闘い続けることだ。もっと必死に、もっと激しく」と訴えた。…”以下略

 また、合わせて

母「息子に会わせて」訴え”と題して、ナワリヌイ氏の母、リュドミラさんの訴えも掲載しました。

 こうした情報が、ロシアを悪者として追い詰め、プーチン政権を転覆して覇権と利益を維持したいアメリカにとって、極めて有効であることを見逃してはいけないと思います。バイデン政権の高官や情報機関の関係者が、ナワリヌイ氏やユリア氏に接触し、プーチン政権転覆のために、さまざまな支援をしているのではないかと想像します。

 

 ナワリヌイ氏の死亡にこだわり、プーチンが殺したものとして、連日、ロシアを悪者にするような記事を掲載しているメディアが、ガザで毎日、多数のパレスチナ人が不当に殺されている事実を受け流し、イスラエルの戦争犯罪を阻止しようとしない現実を、私は、受け入れることができません。

 メディアは、不確かな情報を、事実であるかのように報じてはいけないと思います。また、確かな情報に対する自らの姿勢をはっきりとさせる責任があると思います。犯罪は止める必要があるのです。止めようと意図する報道が必要だと思います。

 また2024224で、ウクライナ戦争が2年を経過し、3年目に入るからでしょうか、ウクライナに関わる記事が、連日、いろいろなかたちで掲載されています。20日には”「芸術さえ壊される ウクライナ 300ケ所以上の文化財」”と題する記事が掲載されました。ウクライナが、アメリカをはじめとするNATO諸国の支援を受けてヤヌコビッチ政権を転覆し、その後もロシアを挑発し続けた事実を隠し、さ、ウクライナの戦争被害の報道を、停戦につなげようとする意図を示さず、ロシアのプーチン政権を変えなければくり返される、という論調で書かれていることに、私は、大きな問題を感じます。

 先日は、何人かのウクライナの人たちの証言が朝日新聞に掲載されていたのですが、その中のオレクシー・ロクチオノウさん(64100メートル先の工場に着弾」と題する証言には、見逃すことのできない考え方が示されていました。下記です。

”…即時停戦には反対です。もしいま停戦すれば、ロシア力を蓄え、間違いなく再び戦争を始めます。ウクライナが負けたら、次はバルト三国、その次はポーランドです。プーチン大統領は止まらない。ウクライナが独立した1991年時点の全領土が解放されなければいけません。ロシア軍を撃退し、再び現れないようにしなければなりません。ミサイル攻撃で工場が燃えたり、シェルターに避難したり。そんな暮らしは平和ではない。子供達が笑って静かに暮らせるような、そんな日が来てほしいと願っています。

 同じような考え方は、日本でもしばしば目にしたり、耳にしたりしました。私は、この考え方はゼレンスキー大統領によって広められた考え方だと思います。また、この考え方は、プーチン政権を転覆したいアメリカの戦略から出てきたものだと思います。

 ロシアをあらゆる組織化から追放し、オリンピックをはじめとする、世界の諸大会からさえもアスリートを排除して、あらゆる交流を遮断したり、話し合いを拒否じたりしなければ、”ウクライナが負けたら、次はバルト三国、その次はポーランドです”などということには決してならないと思います。また、ならないように交流を深め、話し合いをするべきなのだと思います。

 こうした考え方で、話し合いを避け、ロシアを敵視し、武力を充実させたり、高度化させしたりして、軍事訓練などをくり返すから、ロシアの方も、それに対応するのだと思います。 

 国連憲章第二条の3に”

すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない。

 とあります。西側諸国の対応は、国連憲章違反だと思います。

 

 ウクライナ戦争でも、イスラエル・パレスチナ戦争でも、国連憲章に基づいた、平和的な解決のための該当国を中心とする話し合いがありません。それは、圧倒的な経済力と軍事力を持つアメリカが、それを維持し、発展させるための世界戦略をもって関わっているからだと思います。そうした世界戦略は、アメリカの過去の対外政策や外交政策にもあらわれていたと思います。

 ふり返れば、アメリカは、相手がアメリカを攻撃したわけではないのに、朝鮮戦争でも、ベトナム戦争でも、湾岸戦争でも、イラク戦争でも、アフガニスタン戦争でも、敵対する国家や組織を武力をもって攻撃しました。国連憲章違反だと思います。

 

 だから、考えるのですが、日米安保条約およびそれに基づく「地位協定」が改定されたり、破棄されたりしない限り、日本も平和に寄与する国にはなれないと思います。

 

 日米安保条約の第六条には、下記のようにあります。

第六条

 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。
 前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。

 そして、日米地位協定(正式名称は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定)第二条の1(a) は、下記のように定めています。

 

第二条【施設区域の提供と返還】

(a) 合衆国は、相互協力及び安全保障条約第六条の規定に基づき、日本国内の施設及び区域の使用を許される。個個の施設及び区域に関する協定は、第25条に定める合同委員会を通じて両政府が締結しなければならない。「施設及び区域」には当該施設及び区域の運営に必要な現存の設備、備品及び定着物を含む。”

 

 これらの条約や協定は、先日も触れた当時のアメリカのダレス国務長官が語った「望む数の兵力を望む場所に望む期間だけ駐留させる権利」をアメリカに与えたものですが、現実は、こうした条約や規定さえ、守られてはいないのです。

 「日米地位協定逐条批判」地位協定研究会(新日本出版社)は、それを明らかにしています。下記に抜萃した文章には、その決定的証拠ともいえる、アメリカ国防総省発表の「アメリカと日本の安全保障関係に関する報告書」も、下記のように取り上げています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

             2 「排他的使用権」を容認する反国民的規定──第三条

 

 四 条約の目的を逸脱している米軍基地使用

 日本政府は、米軍が安保条約の目的を越えて基地を違法に使用していることを容認している。「排他的使用権」についても、たとえば、ドイツの補足協定の署名議定書で明らかにされているように、「防衛活動」という「目的の遂行上必要な範囲内のものに限られる」。すなわち米軍の使用の仕方が米軍の施設・区域を設定した目的に合致するかどうか、軍隊としての機能上、最小限不可欠であるのかなどの限界がある。

 それ自体、憲法違反の疑いが強い米軍用地の特別措置法(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等に関する特別措置法)でも、「駐留軍の用に供するため土地などを必要とする場合において、その土地等などを駐留の軍用に供することが適正且つ合理的であるときは、この法律を定めるところにより、これを使用し、又は収用することができる」(第三条)との限界を規定している。

 そして米軍の施設・区域の提供は、あくまで安保条約第六条を基礎としているのであるから、同条の「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する」という目的によって制約される。ところが、在日米軍は、この目的の範囲を大きく逸脱し、アジア・太平洋地域さらには世界に向けてその機能を強化・拡大している。現に、イラクによるクウェート侵攻に端を発して1991年の度湾岸戦争に際しても、在日駐留米軍は、日本の米軍基地から湾岸戦争へ参加している。

沖縄からは、嘉手納基地の空中給油機、第一特殊部隊群第一大隊(グリーンベレー)、海兵隊8000名などが現実に湾岸戦争に参加した。また、969月の米軍のイラク攻撃についても。在日米軍が参加している。952月に発表されたアメリカの「東アジア戦略報告」、964月の日米両首脳による日米安保共同宣言に明示されている安保「再定義」からも明らかのように、日米安保条約、駐留米軍が、アジア・太平洋さらには地球規模で機能しつつある。

 このように目的を逸脱した基地の使用ついても、日本政府はなんら問題とせず、逆に、アメリカの要求にしたって、みずから積極的に憲法や法律を無視する態度に出ている。このような地位協定とその明文すら逸脱する運用によって、基地被害が放置され、国民の生活と権利が犠牲にされつづけてきたのである。今、このような反国民的規定の存在そのものが問われなければならない

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

            1 日本の国土を提供する根拠条項──第2、4条

 

3 安保条約の目的にも反した基地提供の実態。

 しかも、安保条約・地位協定の実際の運用、すなわち基地の提供の仕方に問題がある。日本政府は、安保絶対必要論の立場から基地の提供をはかってきたが、この解釈運用は日米両政府の思うままの恣意的なものになってきた。そのため、ほんらいなら安保条約の規定にも反する基地提供がおこわれてきたのが最近の実態である。

 すでに見たように、「施設・区域」の提供を定めた地位協定の根拠となっているのは、安保条約の第六条である。安保条約第六条は、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全に寄与するため。アメリカ合衆国はその陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される」とのべている。既定今日の目的は、日「本国の安全」と「極東の平和と安全」と明記されている。しかし、実態は、この目的条項をはるかに逸脱している。

 たとえば、現在、日本に展開している米軍の主力は、沖縄における海兵隊であり、横須賀を母港とする空母戦艦群であり、また横田、三沢、嘉手納の第五空軍である。その作戦行動は極東の領域を遥かに超えたアジア・太平洋地域であり、中東・ペルシャ湾であり、すなわち地球規模の地域である。沖縄、岩国、厚木、横田、三沢、横須賀、佐世保などをはじめとした米軍基地は、安保条約の基地使用目的にすら反して提供されている。

 アメリカ国防総省が953月に発表した「アメリカと日本の安全保障関係に関する報告書953月一日付は次のように述べている。

「日本におけるわれわれの陸軍、空軍、海軍および海兵隊の基地は、アジア太平洋における防衛の第一線を支援するものである。これらの部隊は、広範な局地的、地域的、並びにペルシャ湾にいたるまでの地域外の緊急事態に対処する準備を整えている。太平洋とインド洋の横断距離は非常に長いので、アメリカは、地域的緊急事態に対応できるように計画された。小規模で、機敏で、より機動性に富む部隊を重視しており、そのことが在日米軍基地の地理的重要性を大きく高めている」1991117日に始まった湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦は、この典型例であった。湾岸戦争では、在日米軍基地から沖縄の海兵隊約8000人以上、横須賀母港とする空母ミッドウェー戦闘群六隻。岩国の海兵隊攻撃機ニ個飛行中隊31機、横田の輸送部隊などが出動した。

 また、969月のイラクに対する武力攻撃には、三沢のF16戦闘爆撃機、嘉手納の空中給油機、横須賀のトマホーク搭載駆逐艦が出撃した。

 すでに在日米軍の実態は、このような地球規模に展開する軍隊となっているのである。ここには、国民の意思はもちろん、国会の意思もまるで反映されていない。

 

 

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アレクセイ・ナワリヌイ死亡の報道に見える国の姿

2024年02月21日 | 日記

 メディアには、読者や視聴者に真実を伝える責任があると思います。
 ロシア政府が16日、ナワリヌイ氏が北部シベリアの刑務所で意識を失い死亡したと発表し、ロシアの刑務所当局も、声明で、ナワリヌイ氏が「散歩後に気分が悪くなり、直後に意識を失った」と説明したといいます。救命措置もほどこしたということです。
 にもかかわらず、テレ朝は、ロシアと対立するウクライナのゼレンスキー大統領が、「プーチンは望む者は誰でも殺す。ナワリヌイ氏が殺害された後、プーチンをロシアの合法的な元首と見なすのは馬鹿げている」と非難したことだけを伝えました。私は、根拠を知りたいと思ったのですが、示されませんでした。

 また、朝日新聞は17日夕刊で、”ナワリヌイ氏死亡 バイデン氏が追悼 「死の責任はプーチンに」”と題し、下記のように伝えました。
バイデン米大統領は16日、ロシアの反政権派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が死亡したと伝えられたことを受けて、急きょホワイトハウスで演説した。「驚きはないが激怒している」と語り、「間違いなく死の責任はプーチン(大統領)にある」と断言した。
 バイデン氏はナワリヌイ氏の活動について「勇敢にも汚職や暴力、プーチン一味によるあらゆる悪事に立ち向かった」と語った。また、毒殺未遂に遭った後もロシアに戻ることを選んだとして、「プーチンにはない多くのものをもっていた。法の支配が存在するロシアをつくることに身を捧げた指導者だった」とたたえた。
 プーチン氏については「いまウクライナで見られるように他国の市民を標的にするだけでなく、自国民にもひどい罪を犯している」と強く非難した。ナワリヌイ氏の死因については「何が起こったのか正確にはわからない」と述べた。
 バイデン大統領は、最後に言い訳めいたことを少しつけ加えてはいますが、基本的には、ゼレンスキー大統領と同じように、プーチン大統領の責任を問う根拠は示していません。メディアは、そのことをきちんとつけ加える必要があると思います。
 そういう意味で、テレ朝や朝日新聞のゼレンスキー大統領およびバイデン大統領の発言に関する報道は、読者や視聴者に真実を伝える責任をきちんと果しているとは言えないと思います。根拠を示さず語ったことも含めて、読者や視聴者に伝える責任があると思うのです。そうでなければ、陰謀論が国際社会を動かしてしまうことに加担することになってしまうと思います。
 
 またメディアが、その後も連日、ゼレンスキー大統領やバイデン大統領の主張を支持し、補強するような報道を続けていることも目に余ります。
 朝日新聞の「素粒子」の欄には、”ロシアの極寒の地にナワリヌイ氏死す。どんな悪魔のささやきにも屈せず「諦めないで」と笑顔で照らし続けた”などとありました。
 さらに朝日新聞は、その後社説でも、「ナワリヌイ 弾圧国家が恐れた勇気」などと題する記事を掲載しました。ナワリヌイを持ち上げ、じわじわとロシアを追い詰めていくような報道だと思います。 

 アメリカやイギリスがやってきたことをふり返れば、とても受け入れることはできない報道です。特に、アメリカがくり返し国際社会を欺瞞してきた過去を、なかったことにするような報道だと思います。

 アメリカが、国際社会に発する政治的情報は圧倒的です。そして、ロシアや中国に関する政治的情報は、大なり小なりプロパガンダがらみだと思います。
 Twitterには、ナワリヌイが、ロシアでカラー革命を引き起こすために、MI6(イギリスの秘密情報機関)将校ウィリアム・フォードに、年間1000万ドルを要求したという、下記のような情報がありました。


”Video of Alexei Navalny asking MI6 Officer Ford for $10Million a year to start a color revolution in Russia.”(https://twitter.com/i/status/1758637374140195144)は削除されていましたが、こちらにありました(https://twitter.com/search?q=%2410Million%20a%20year&src=typed_query)。


 この情報が真実かどうかは、私にはわかりませんが、無視できません。頭の片隅に置いて、今後の展開を見ていく必要があると思っています。なぜなら、都市から遠く離れた北極圏の極寒の地に拘束されているナワリヌイ氏を、プーチン大統領が、今、殺さなければならない差し迫った理由はないのではないかと思うのです。むしろ、ウクライナ戦争の支援で行き詰まり、局面を打開したいのは、アメリカやウクライナ、NATO諸国の方ではないかと思います。だから、私は、まったく逆のことを想像してしまいます。
 西側諸国、これほどナワリヌイ氏の死亡にこだわるのは、彼が、ロシアを撹乱し、プーチン政権を転覆するというアメリカの戦略に欠かせない重要人物であったからではないかと想像します。

 先日も触れましたが、ウクライナ戦争が始まった当初、毎日のようにメディアに登場し、解説をしていた大学教授や専門家と言われる人たちは、皆、同じようなことを話していたと思います。ウクライナ戦争は、独裁者プーチンが、ウクライナ領土を奪い取るために始めたというような内容でした。
 ウクライナ戦争の経緯を解説したり、どのようにすれば停戦に持ち込むことができるかというような話は、ほとんどなかったのです。だから、ロシアを孤立化させ弱体化させたいアメリカの戦略に沿うような解説だと思って聞いていました。
 ウクライナ戦争の背景を理解するために欠かせないろいろいろな事実、例えば、ロシアのウクライナ侵攻(特別軍事作戦)に関わるプーチン大統領の侵攻前の演説、マイダン革命の実態およびアメリカの関与、ウクライナを巻き込んだ大がかりなNATOの軍事訓練、ノルドストリーム2に関連するアメリカのロシアに対する制裁の実態や経過、ウクライナの大量破壊兵器の存在、NATOの東方拡大の経過や実態などの話はほとんど聞くことがありませんでした。
 解説はいつも、プーチン大統領の野望の内容や由来、ウクライナに対する支援の必要性、両国が使用している武器の性能、考えられる両国の作戦、戦況などだったと思います。
 だから私は、解説を聞くたびに、日本がアメリカの影響下にあることを強く感じていました。


 圧倒的な経済力と軍事力を誇るアメリカは、豊富な資金をもって、アメリカの方針に沿う考え方を深めたり、研究したりしようとする優秀な人物に、必要な情報や研究の場を与え、活躍することのできる職場や役職を準備して育てているのだと思います。そして、アメリカの政治的な情報を発信する学者や軍事の専門家を育成しつつ、そのネットワークを拡大してきたのだと思います。

 そうした人材育成システムが、日本でも、アメリカと連携して機能するようになっているので、ウクライナ戦争の解説に出てきた専門家や大学教授が、皆、同じように、アメリカの戦略に沿う解説をしたのだろうと想像します。
 だから、日本の大学もメディアの中枢も、そうした「アメリカ国務省閥」とか、「アメリカ軍産閥」でもいうような人たちの勢力が強くなり、日本の国際政治に関わる報道は、ほぼ「アメリカ国務省閥」あるいは、「アメリカ軍産閥」の人たちによってもたらされることになってしまったのだと思います。だからかなり偏っており、真実は伏せられていると思います。アメリカに不都合な報道は、ほとんどないのです。

 ロシア政府が、ナワリヌイ氏が死亡したことを発表するや、死亡原因がはっきりわからない段階で、即座に「プーチンが殺した」「プーチンの責任だ」と騒ぎ立てたゼレンスキー大統領バイデン大統領の反応の仕方に、人命尊重の観点からではなく、とにかく、敵対するプーチン政権を潰したいという姿勢がはっきりあらわれていると思います。
 毎日毎日、女性や子どもを中心とするガザのパレスチナが死んでいるのに、本気で止めようとせず、支援を続けてのがアメリカであることに目をつぶって、ナワリヌイの死亡関する憶測報道を続けていては、世界が平和になることはないと思います。

 だから、こだわっていろいろ調べるのですが、「日米安保条約」の第六条に基づいて定められた、「日米地位協定」の第二条には、下記のようにあります。
”第二条【施設・区域の提供と返還】
 1(a) 合衆国は、相互協力及び安全保障条約第六条の規定に基づき、日本国内の施設及び区域の使用を許される。個々の施設及び区域に関する協定は、第25条に定める合同委員会を通じて両政府が締結しなければならない。「施設及び区域」には、当該施設及び区域の運営に必要な現存の設備、備品及び定着物を含む。
  (b)合衆国が日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基づく行政協定の終了の時に使用している施設及び区域は、両政府が(a)の規定に従って合意した施設及び区域とみなす。
以下略
 この条約によりアメリカ合衆国は、当時の国務長官ジョン・フォスター・ダレスが語った「望む数の兵力を望む場所に望む期間だけ駐留させる権利を確保」したのです。
 わかりにくい表現ですが、 「日本国内の施設及び区域の使用を許される」ということは、どこでも、自由に使う、ということなのです。特定の施設区域ではないのです。こうした日本の主権を否定するような条約の締結をさせたアメリカが、「民主国家」の代表のような顔をして、ロシアや中国と敵対していることを見逃してはならないと思います。
 また、第四条には下記のようにあります。
第四条【施設・区域の返還のさいの無補償】
 1 合衆国は、この協定の終了の際又はその前に日本国に施設及び区域を返還するに当って、当該施設及び区域をそれらが合衆国軍隊に提供されたときの状態に回復し、またその回復の代わりに日本国に補償する義務を負わない。”以下略
 なども、随分、日本をばかにした規定だと思います。借りているという意識ではないのだと思います。
 沖縄県民は、広大な基地の存在のみならず、こうした不平等条約によっても、さまざまな苦難を強いられている現実を、しっかり受け止める必要があると思います。

 

 

 

 

 

 

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やっぱり、

2024年02月17日 | 国際・政治

 どこかで戦争が始まったら、とにかく、停戦ために努力するということが、平和のために最も大事なことだと思います。そして、両方の意見を聞き、法や道義・道徳に照らして、停戦の条件を整えるために力を尽くすのが、平和国家の役割だと思います。
 でも、圧倒的な軍事力と経済力を誇るアメリカは、いつも、同盟国やアメリカの意向を受け入れる側を支援し、抵抗する国や組織を潰すために武力行使をしてきたと思います。それは、過去の歴史をふり返ればわかります。
 アメリカは、今も、ウクライナ戦争では、ウクライナの支援を続け、イスラエル・パレスチナ戦争では、イスラエルを支援しています。
 そして、日米安全保障条約を締結している日本は、常に、アメリカのお手伝いをさせられてきたのが現実だと思います。だから、平和を実現するためには、日米同盟の強化などしてはいけないのだと思います。逆に日米安保条約のような軍事的な条約は、解消を考えるべきだと思います。
 自衛隊の南西シフトで、九州南端から台湾へと連なる南西諸島で、現在、自衛隊の体制強化が進んでいます。沖縄県・与那国島の陸上自衛隊駐屯地をはじめ、宮古島や鹿児島県の奄美大島、そしてさらに、沖縄県の石垣島でも、島民の反対を無視してミサイル部隊などの新編・移駐が進められているのです。
 
 すでに日本だけでも、北海道から沖縄まで、全国各地81か所に米軍専用基地が存在し、自衛隊との共用基地を入れると130か所にもなるということを忘れてはならないと思います。
 これらの基地は、アメリカに敵視されている中国や北朝鮮、ロシアにとっては大きな脅威だと思います。特に、アメリカがさまざまな関与を続ける台湾の問題をかかえる中国にとっては、自衛隊の南西シフトは、台湾有事に備える対中戦争の準備であり、見過ごせないことだと思います。
 アメリカの要人が次々に台湾を訪れたり、くり返し高度な武器を大量に売り込んできたことと連動して、自衛隊の南西シフトは、中国にとっては見逃せない政策だと思います。アメリカや日本のそうした政策を抜きに、中国の南シナ海での軍事的プレゼンスの強化を非難するのはいかがなものかと思います。
 中国を含む多くの国が、アメリカを恐れ、対応に苦慮している現実を、無視してはならないと思います。

 日本は平和憲法を持つ国であり、その基本理念である基本的人権の尊重、国民主権、平和主義は世界に誇るべきものであると思います。その憲法を蔑ろにするような政策は、人類に不幸をもたらすと思います。
 利益を追及するために、道を外れたようなことはしてはならないことです。多くの犠牲を出しながら深められてきた国際社会の法や道義・道徳を尊重するべきで、歴史の歯車を逆回転させるようなことはしてはならないと思うのです。しばらく前、ビッグモーターの問題で、大騒ぎになりましたが、国家の政策のあやまりは、比較にならないくらい大きな不幸を関係国にもたらすと思います。

 ウクライナ戦争が始まった当初、西側諸国では、ロシアとの戦争に踏み切ったゼレンスキー大統領の演説に皆、立ち上がって拍手を送り、勇気ある指導者として高く評価していたと思います。
 でも、西側諸国の期待に反し、ウクライナ側が重要な防衛拠点としていたアウディーイウカが先日陥落したといいます。そして、ゼレンスキー大統領がウクライナで信頼されているザルジニー総司令官を解任する事態となりました。それにともなって、ゼレンスキー大統領の支持率は急落していると言います。報道によると、”2023年12月、国際社会学研究所(キーウ)による世論調査では、ザルジニー氏を「信頼する」との回答が88%に上った。一方でゼレンスキー氏を「信頼する」は62%で、2022年末の84%から大幅に下落した”というのです。

 そんな状況下で、私は、Yutubeの”【ゼレンスキー退任?】支持率低下のワケを識者たちが徹底分析 小泉悠×東野篤子×廣瀬陽子×長谷川雄之”と題された動画(https://www.youtube.com/watch?v=KwiIxvl5Xig)を見て、やっぱりそうかと思いました。

  ふり返れば、開戦当初、小泉悠氏や東野篤子氏や廣瀬陽子氏は、ウクライナやロシアを知る専門家として、毎日のように、日本のメディアに登場し、ウクライナ戦争について解説していました。でも、ゼレンスキー大統領を非難したり、批判したりするような解説は、聞いたことがありませんでした。
 ウクライナの敗北が濃厚となり、ゼレンスキー大統領の支持率が急激に低下してきた今になって、「所詮、喜劇俳優だった」とか「たまたま立候補したら、大統領選で勝利してしまった人」というような評価をするのは、専門家としていかがなものかと思いました。ウクライナの世論の評価に合わせて評価しているようでは、専門家として失格ではないかということです。

 専門家は、戦争の経緯や実態を深く理解し、世論を正しい方向に導く立場にあるのであって、世論の評価などに影響されてはならないと思います。また、小泉悠氏や東野篤子氏や廣瀬陽子氏は、いつも、ウクライナ戦争は、”欲深い独裁者プーチンが始めた戦争である”というアメリカの戦略に沿うような解説をしていたので、私は、アメリカの組織から何か指示を受けているのか、とか、CIAのエージェントか、と思うことがたびたびありました。
 小泉悠氏や東野篤子氏や廣瀬陽子氏から、戦争を終わらせ、平和を取り戻すために、何が必要かという話や、2022年2月24日のプーチン大統領演説についての解説を聞いたことがありませんでしたし、NATOの東方拡大の問題やノルドストリーム2に関わるアメリカの制裁の問題、また、マイダン革命に対するアメリカの関与の問題などについての解説も聞いたこともありませんでした。
 私は、ロシアを孤立化させ、弱体化しなければ、アメリカの覇権や利益がそこなわれるということで、アメリカがウクライナにやらせた戦争が、ウクライナ戦争だと思っています。だから、そんな解説では、ウクライナ戦争を理解することはできないし、終わらせることもできなだろうと思いながら聞いていたのです。
 だから、上記のYutubeを見て、やっぱりそうかと思ったのです。

 アメリカの戦略に沿うような解説をしていた小泉悠氏や東野篤子氏や廣瀬陽子氏は、第二次世界大戦で沖縄を占領したアメリカ軍が、「銃剣とブルドーザー」で、沖縄県民の私有財産を没収・略奪し、基地を作った過去をどのように受け止めているのかと思います。また、日米安保条約に基づく「地位協定」で、日本の主権を侵害し、日本国民の人権を制限している事実や、アメリカ側にさまざまな特権や特典を与え、不平等な状態にある現実をどのように考えているのか、とも思います。
 アメリカ軍は、世界各地に、49の大型基地をもっているといいます。小さい基地も含めると500を超えるといいます。それが、世界平和のためでしょうか。それは、アメリカの覇権の維持や利益のためではないのでしょうか。小泉悠氏や東野篤子氏や廣瀬陽子氏は、アメリカ軍が、日本を守るために沖縄に駐留している、と本気で思っているのでしょうか。
 沖縄県のホームページには、下記のようにあります。
沖縄は今日まで米軍基地のために土地を自ら提供したことは一度としてありません。戦後の米軍占領下、住民が収容所に隔離されている間に無断で集落や畑がつぶされ、日本独立後も武装兵らによる「銃剣とブルドーザー」で居住地などが強制接収されて、住民の意思とは関わりなく、米軍基地が次々と建設されました。
 世界平和のために、アメリカに追随することはやめるべきではないか、と私は思います。
 

 

 


 
 
 

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イスラエルのジェノサイド条約違反を許さず、

2024年02月13日 | 国際・政治

 ウクライナ戦争を一日も早く終わらせるために、タッカー・カールソンの意図をねじ曲げない報道をしてほしいと思います。


 タッカー・カールソンは、プーチン大統領に対するインタビューの意図を語っています。
(https://twitter.com/i/status/1755088674465959990)。そのなかで、タッカー・カールソンは、アメリカのウクライナ戦争に関する報道は、”

ジャーナリズムではなく、政府のプロパガンダだ”と断言しています。それは、日本のウクライナ戦争に関する報道も、アメリカ政府のプロパガンダであるということだと思います。

 また、アメリカはウクライナに多くの資金援助をしているので、アメリカ人は真実を知らなければならないとも言っています。だから、プーチン大統領に直接インタビューするため、困難を乗り越えてロシアを訪れることにしたのだと語っているのです。きちんとその意図をくみ取った報道をしてほしいと思います。

 先日朝日新聞は、イスラエルによる「ジェノサイド条約」違反が続いているのに、アメリカに気を配って、何の批判も非難もせず、ただ、イスラエルのネタニヤフ首相が、ハマスの戦闘休止条件を拒否したという事実だけを伝えました。下記です。
イスラエルのネタニヤフ首相は7日、パレスチナ自治区ガザ地区の戦闘休止や人質解放に向けてイスラム組織ハマスが要求する条件を「妄想」だとして拒否する考えを示した。「絶対的勝利」を達成するまで、ハマスとの戦闘を続けることも改めて誓った。
 AP通信によると、ネタニヤフ氏はこの日の夜、記者会見で「ハマスの妄想的な要求に屈しても、人質の解放につながらないだけでなく、新たな虐殺を招くだけだ」などと述べた。「我々は絶対的な勝利に向かっている。それ以外に解決方法はない」とも語った。
 ネタニヤフ氏はこの直前に、イスラエルのテルアビブを訪問したブリンケン米国務長官と会談していた。ブリンケン氏は会談後の記者会見で、「ハマスの対応には話にならない部分もあるが、合意に達する余地はあると考えているし、達するまで取り組む」と述べた。(ワシントン)

 ICJが「ジェノサイド条約」の違反が疑われるということで発した「暫定措置命令」は、法的に誠実に履行されるべきものであり、それを無視することは、国際法違反だと思います。
 でも、その国際法違反を問題とせず、あたかも、アメリカのブリンケン国務長官が、「戦闘休止」について懸命に努力しているかのような記事になってます。
 ウクライナ戦争に対する時とまるで異なるアメリカの対応をどのように考えているのか、と苛立ちを感じました。

 

 このイスラエルの「ジェノサイド条約」違反の記事と対照的な記事が、同じ朝日新聞に掲載されました。FOXニュースの政治トーク番組で司会を務めたタッカー・カールソンが、ロシアを訪れ、プーチン大統領に直接インタビューすることに関する、下記の記事です。
ロシアのプーチン大統領が、ウクライナ支援に否定的なトランプ前米大統領に近い元テレビ司会者タッカー・カールソン氏の取材を受け、動画が米国時間8日に公開された。プーチン氏はバイデン米政権に対し「ロシアと交渉した方がいいのではないか」と発言。米世論の分裂を見透かすように揺 さぶりをかけた。

 イスラエルのジェノサイド条約違反の記事では、まったく自らの主張を入れず事実のみを伝え、タッカー・カールソンのインタビューに関する記事では、自らのプーチン大統領やトランプ大統領、タッカー・カールソンに関する自らの主張を読者に押しつける内容になっていると思います。

 私は、そこに朝日新聞をはじめとする日本の主要メディアが、バイデン民主党政権の影響下にあることが示されていると思います。

 大事なことは、イスラエルのジェノサイド条約違反の記事こそ、自らの主張を入れて、読者に同意を求め、「ジェノサイド」を止める世論をつくり出すことであり、また、アメリカ人に真実を伝えるために、タッカー・カールソンがプーチン大統領にウクライナ戦争について何を問い、プーチン大統領が、それにどう答えたのか、ということだと思います。

 タッカー・カールソンが、さまざまな困難を乗り越え、わざわざロシアを訪れたのは、ウクライナ戦争について、西側諸国で伝えられていないプーチン大統領の主張を直接聞き伝えるためです。にもかかわらず、朝日新聞は、その内容には触れず、プーチン大統領の発言の一部を切り取って、”米世論の分裂を見透かすように揺さぶりをかけた。””などと自らの主張で結論づける記事を掲載したのです。


 そこで考えるのが、日本の政府やメディアは、なぜ独立国家としての視点をもって対応しないのかということであり、アメリカの、特に、民主党政権の外交姿勢や報道に追従するのか、ということです。 

 そういう観点でふり返れば、2009年、日本の民主党が総選挙で300議席超の圧勝をおさめ、政権交代を実現した時のことが思い出されます。
 当時の民主党政権の岡田克也外相は、外務省内で行った会見で「密約の問題は、外交に対する国民の不信感を高めている。事実を徹底的に明らかにし、国民の理解と信頼に基づく外交を実現していく必要がある」と述べ、問題視されていた「核持ち込み」や「沖縄返還をめぐる日米間の密約」について、外務省内にある資料を調査し、調査結果を報告するよう命令しました。いわゆる外交文書などの「調査命令」です。

 その際の調査対象は、「60年日米安保条約改定時の核持ち込みに関する密約」、「朝鮮半島有事の際の戦闘作戦行動についての密約」「72年の沖縄返還時の有事の際の核持ち込みに関する密約」、「米軍基地跡地の原状回復費の肩代わりに関する密約」などでした。
 自民党政権は、国会などの場で「いかなる密約もない」と繰り返し答弁していましたので、画期的なことでした。
 そして、調査の結果、「核持ち込みに関する密約」の秘密関連文書などが発見され、自民党政権時代に情報が隠蔽されていたことが明らかになりました。
 これら4つの密約は過去に交わされたものですが、その密約が破棄されず、現在もなお日本の主権を侵害し続けていることは、見逃されてはならないと思います。

 そして、そうした密約のほかにも、秘密裏に日本の重要問題が決定されていく基にあるのが、下記の「日米安全保障条約第六条」にある行政協定、現在の「地位協定」だと思います。

第六条 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。
 前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。
 また、下記の「日米安全保障条約第三条」で、設置が定められている「合同委員会」です。
第三条
1 合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、使用、運営、防衛又は管理のため必要な又は適当な権利、権力及び権能を有する。合衆国は、また、前記の施設及び区域に隣接する土地、領水及び空間又は前記の施設及び区域の近傍において、それらの支持、防衛及び管理のため前記の施設及び区域への出入の便を図るのに必要な権利、権力及び権能を有する。本条で許与される権利、権力及び機能を施設及び区域外で行使するに当つては、必要に応じ、合同委員会を通じて両政府間で協議しなければならない。
2 合衆国は、前記の権利、権力及び権能を、日本国の領域への、領域からの又は領域内の航海、航空、通信又は陸上交通を不必要に妨げるような方法によつては行使しないことに同意する。合衆国が使用する電波放射の装置が用いる周波数、電力及びこれらに類する事項に関するすべての問題は、相互の取極により解決しなければならない。一時的の措置として、合衆国軍隊は、この協定が効力を生ずる時に留保している電力、設計、放射の型式及び周波数の電子装置を日本側からの放射による妨害を受けないで使用する権利を有する。
3 合衆国軍隊が使用する施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払つて行わなければならない。

 この日米地位協定は、安保条約に基づいて、日本に駐留する米軍に対し、基地を提供することを規定しているのみならず、米軍や米兵、また、その家族に対し、さまざまな特権を与えていることはよく知られていると思います。
 また、見逃してはならないことは、この「合同委員会」で、外交を中心とする日本の重要問題が、秘密裏に決定されているということです。極論すれば、アメリカ政府の意向が、そのまま日本政府の意向になっているということです。

 だから、日本の政府のみならず、主要メディアも、アメリカの支援するイスラエルの「ジェノサイド条約」違反を非難したり、批判したりすることがありませんし、タッカー・カールソンのプーチン大統領に対するインタビューの内容の詳細を伝えたり、解説したりすることがないのだと思います。まさに属国なのです。

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国際社会の現実が示す「ならずもの国家」

2024年02月07日 | 国際・政治

 イスラエル・パレスチナ戦争に、アメリカが直接介入を始めました。アメリカ軍がハマスと連帯して戦うイエメンのフーシその他の武装勢力へ報復攻撃を開始したのです。
 ヨルダンのアメリカ軍の拠点で、アメリカ兵3人が無人機による攻撃で死亡したことを理由に、すでにその6倍の死者を出す空爆を行った上、バイデン大統領は、「我々の対応はきょう始まった。今後も時と場所を選ばずに攻撃を継続する」と、”報復が数週間続く可能性”を示唆したというのです。
 でも、過去をふり返れば、イスラエルの不法行為がなければ、こういうことにはならなかったということを忘れてはならないと思います。 

 先日、国連のグテーレス事務総長は、ガザ地区のハマスとイスラエルの軍事衝突に関し、「何もない状況で急に起こったわけではない、パレスチナの人々は56年間、息のつまる占領下に置かれてきた。自分たちの土地を入植によって少しずつ失い、暴力に苦しんできた。経済は抑圧されてきた。人々は家を追われ、破壊されてきた」などと述べましたが、それが事実であることは、誰にも否定できないことだと思います。
 また、イスラエルによる空爆地上侵攻による襲撃が続くガザで「国際人道法違反」が見られると指摘したことも、国際司法裁判所(ICJ)が、イスラエルに対し暫定措置命令を発したことで、誤りとは言えないことが明らかになったと思います。
 さらに、グテーレス氏が安全保障理事会で、「どんな武力紛争でも民間人の保護が最重要だ」と語ったことも、国際法や道義・道徳に照らして当然のことだと思います。
 でも、イスラエルはグテーレス事務総長に対し辞任を要求したばかりでなく、国連関係者への査証発給停止を表明し、実際に、グリフィス事務次長(人道問題担当)へのビザ発給を拒否しているといいます。
 また、国連パレスチナ難民救済支援機関(UNRWA)の複数の職員が、ハマスによるイスラエルへの奇襲に関与した疑いがあるなどと言い出しました。そして、アメリカを中心とする西側諸国は、その事実が確認されていない”疑い”の段階で、資金拠出の一時停止を発表するという対応をしています。
 
 2月8日、朝日新聞は夕刊で、「暴力行為イスラエルの入植者制裁」と題し、下記の記事を掲載しました。
パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区で深刻化する暴力行為について、米国務省は1日イスラエルの入植者4人に金融制裁を科すと発表した。「西岸地区の平和と安全、安定を脅かす特定の有害な活動について責任を負うように促す」と説明している。
 発表によると、4人はそれぞれ、車輛や建物に火を放ってパレスチナ市民を暴行するなどを指揮し、1人を死亡させた。パレスチナ人農業者とイスラエル人の活動家を石やこん棒で攻撃してけがを負わせた。パレスチナ人らに暴行する入植者グループを率いて、家を離れなければさらなる暴力をふるうと脅し、畑を焼き払って家屋を破壊した──といった行為に携わった。(ワシントン)
 でも、こうしたことは、ハマスのイスラエル襲撃後に始まったことではなく、グテーレス事務総長が言うように、56年間続いてきたのです。
 だから、イスラエルに対する非難が渦巻く国際社会に対し、イスラエルを支援するアメリカは、イスラエルを追い込むことなく、自らの立場を正当化するため、アメリカは、あたかもそうした不法行為を許さない民主的な国であるかのように装う必要に迫られたのだと思います。
 でも、アメリカ人が殺されたり、被害を受けたわけでもないのに、イスラエルの犯罪者に、いちいちアメリカが金融制裁を科すというのも、随分おかしな話だと思います。イスラエル人の犯罪は、イスラエルに裁かせるべきであり、イスラエルが裁かないのであれば、イスラエルという国に、国際社会が制裁を科すというのが、通常のあり方ではないかと思います。

 下記は、「君はパレスチナをしっているか」奈良本英佑(ほるぷ出版)に取り上げられている資料から、「国連安全保障理事会決議242号」と「二階堂官房長官談話」と「国連総会決議3236号」を抜萃しました。
 これらの資料は、当初、国際社会がイスラエルに対し、今よりはるかにまともな対応をしていたことを物語っていると思います。
  「国連安全保障理事会決議242号」は、イスラエル軍の撤退や、主権、領土の保全、および政治的独立平和に生存する権利の尊重など規定しています。
 また、日本も、田中内閣当時の「二階堂官房長官談話」で、この「国連安全保障理事会決議242号」支持し、パレスチナ人の自決権の尊重1967年戦争の全占領地からのイスラエル兵力の撤退、パレスチナ人の国連憲章に基づく正当な権利の承認尊重などを要求しています。
 また、「国連総会決議3236号」は、”追放され奪われた祖国と財産に復帰するパレスチナ人の固有の権利を再確認し、かつ、彼らの復帰を要請する”とか、”すべての国と国際機関に対して、国連憲章に基づき、自らの権利を回復するためのパレスチナ人民の闘争に支持を与えるように呼びかける”
”と明記しています。

 でも、現実は、こうした「決議」や「談話」は、ほとんど実行されることなく、ずるずるとイスラエルが望み、意図する方向に事態が進んきたのではないかと思います。それは、西側諸国を中心に多くの国が、アメリカの硬軟織り交ぜた巧みな政治的工作に丸め込まれて、イスラエルの「安保理決議」違反や「国連総会決議」違反を黙認してきたからだと思います。だからイスラエルは、いい気になって、本気でパレスチナの地からパレスチナ人を追放するという段階に進んできたのではないかと思います。
 ガザは、もう人が住める状態では無くなっているようです。戦争が終わっても、避難したガザのパレスチナ人は、もう戻ることはできない状態になっているということです。国外に逃れるしか道が残されていないということではないかと思います。そして、ヨルダン川西岸も徐々にガザと同じように潰されていく気配を感じます。
 それは、やはり、圧倒的な経済力と軍事力を誇り、世界中に基地を置くアメリカが、イスラエルを支えているからだと思います。イスラエルは、世界の頂点に立つアメリカにとっても、周辺地域を威圧するために極めて重要な中東に存在する国だからだと思います。

 
 2002年、当時のブッシュ大統領は、「米国国家安全保障戦略」で、イラク北朝鮮イランなど、アメリカの意向に従わない国に対し、「悪の枢軸」とか、「無法者政権(outlaw regime)」という言葉を使い、「」というレッテルをはって、国際世論を誘導する方針を示しました。
 でも、本当の「悪の枢軸」、「無法者政権(outlaw regime)」がどこであるかは、国際社会の歴史が示していると思います。
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                                                国連安全保障理事会決議242号

安全保障理事会は、中東における重大な事態について引続き憂慮を表明し……

一、憲章の諸原則を満たすためには、次の二原則の適用をふくむべき中東の公正かつ永続的平和の確立を必要とすることを確認する。
(Ⅰ)最近の紛争において占領された領土からのイスラエル軍隊の撤退。
(Ⅱ)あらゆる交戦権の主張ないし交戦状態の終結。ならびに同地域のすべての国の主権、領土保全および政治的独立。および武力による脅しまたは武力の行使を受けることなく安全な、かつ承認された境界の中で平和に生存する権利の尊重と確認。
二、さらに次の諸点の必要性を確認する。
 (a) 同地域における国際水路の航行の自由を保障すること。
 (b)難民問題を公正に解決すること。
 (c)この地域におけるすべての国家の領土不可侵と政治的独立の保障
(以下略)                                               (1967年11月22日)
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                        二階堂官房長官談話

一、我が国政府は、安全保障理事会決議242号の早急、かつ、全面実施による中東における公正、かつ、永続的平和の確立を常に希求し、関係各国および当事者の努力を要請しつづけ、また、いちはやくパレスチナ人の自決権に関する国連総会決議を支持してきた。
二、我が国政府は、中東紛争解決のために下記の諸原則が守られなければならないと考える。
(1)武力による領土の獲得および占領の許されざること。
(2)1967年戦争の全占領地からのイスラエル兵力の撤退が行われること。
(3)域内のすべての国の領土の保全と安全が尊重されねばならず、このための保障措置が取られるべきこと
(4)中東における公正、かつ、永続的平和実現に当ってパレスチナ人の国連憲章に基づく正当な権利が承認され、尊重されること。
三、わが国政府は、上記の諸原則にしたって、公正、かつ、永続的平和達成のためにあらゆる可能な努力が傾けられるよう要望する。わが国政府は、イスラエルによるアラブ領土の占領継続を遺憾とし、イスラエルが上記の原則にしたがうことを強く要望する。わが国政府としては、引き続き中東情勢を重大な関心を持って見守るとともに、今後の諸情勢の推移いかんによってはイスラエルに対する立場を再検討せざるを得ないだろう。
                                                      (1973年11月22日)
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                         国連総会決議3236号
 
「パレスチナ人民の権利を認める決議」
 総会は、パレスチナ問題を審議し、パレスチナ人民の代表であるパレスチナ解放機構の発言を聴取し、また、本件の討議中に行われた他の発言も聴取し、パレスチナ問題の公正な解決がいまだ達成されていないことを深く憂慮し、かつ、パレスチナ問題が依然として国際の平和と安全を脅かしていることを認め、パレスチナ人民は、国連憲章に基づき自決の権利を持つことを認め、パレスチナ人民がその固有の権利、とくにその自決権の行使を妨げられていることに重大な憂慮を表明し、憲章の目的と原則に従い、パレスチナ人民の自決権を確認する関連書決議を想起し、
一、以下の事項をふくむ、パレスチナにおけるパレスチナ人民の固有の権利を再確認する。
(a)外部から干渉されることのない自決の権利
(b)民族独立と主権の権利。
二、また、追放され奪われた祖国と財産に復帰するパレスチナ人の固有の権利を再確認し、かつ、彼らの復帰を要請する。
三、パレスチナ人民のこれら固有の権利の十分な尊重と実現は、パレスチナ問題の解決のため不可欠であることを強調する。
四、パレスチナ人が、中東における公正かつ永続的平和の達成のための主要当事者であることを承認する。
五、さらに国連憲章の目的と原則に基づくあらゆる手段により、その諸権利を回復するパレスチナ人民の権利を承認する。
六、すべての国と国際機関に対して、国連憲章に基づき、自らの権利を回復するためのパレスチナ人民の闘争に支持を与えるように呼びかける。以下略。
                                                       (1974年11月22日)

 

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