今年の因幡屋演劇賞を以下の通り発表いたします。深く豊かな時間をありがとうございました。リンクはそれぞれ観劇後のブログ記事です。
1、文学座4月アトリエの会 ヘンリック・イプセン作 原千代海翻訳 稲葉賀恵演出『野鴨』
2、劇団文化座 宮本研作 米山実演出 『反応工程』
3、studiosalt×マグカル劇場 椎名泉水作・演出 『7-2016ver.-僕らの7日目は毎日やってくる』
4、劇団フライングステージ 関根信一作・演出『Family,Familiar 家族、かぞく』
5、文学座有志による自主企画公演 久保田万太郎作 生田みゆき演出『霙ふる』
昨年から「目を離せない、見逃せない」演劇人となった日本のラジオの屋代秀樹(1,2,3,4,5,6,7,8)、劇団肋骨蜜柑同好会のフジタタイセイ(1,2,3,4)の舞台を今年も大いに楽しんだ。
ここ数年相次いだ歌舞伎俳優の旅立ちに、「向こうも自分も生きているうちに」と足を運ぶ歌舞伎公演では、今さらながら片岡仁左衛門の素晴らしさに加え、若手の頑張りが嬉しかった。とくに十二月大歌舞伎の「寺子屋」で松王丸を初役で演じた中村勘九郎は、絶対的な主従関係と親兄弟の情愛に引き裂かれそうになる松王丸を、観客により近しい存在として見せてくれたのではないか。頸を刎ねられるときのわが子の様子を聞き、加えて弟の無念の死への悲しみに堪らず号泣する。この狂言を見て「もらい泣き」という感情が生まれたのはこれが初めてのことだ。これほど痛ましく、温かで心優しい松王丸に出会えるとは。歌舞伎観劇の記事は書かないことも多いので、この場で短く感想まで。
慌ただしく過ぎた2016年、多くの舞台に出会えて幸せでした。因幡屋ぶろぐにお立ちよりくださった皆さま、ありがとうございました。
来年も楽しんでいただけるよう、一生懸命舞台を見て、考えて書き続けます。どうかよろしくお願いいたします。