櫻井郁也ダンスブログ Dance and Art by Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

◉新作ダンス公演2024年7/13〜14 ◉コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー

映画『ルームROOM』:良かったです

2016-05-02 | アート・音楽・その他
『ルームROOM』という映画を観た。
昨年のアイルランド・カナダ合作で原作がエマ・ドナヒュー。オーストリアで実際に起きた「フリッツル事件」という誘拐長期監禁事件がベースになった小説『部屋』の映画化であり、監督のレニー・アブラハムソンは表面的な個性を抑制して俳優に多くを委ねているが、この映画を通じてかなりの注目を集めているのではないかと思う。

17歳で誘拐され10メートル四方の「部屋」に監禁されたまま犯人の子を産み5歳まで育てた女性がいる。その女性と5歳の誕生日を迎えた息子が映画の中心だ。二人は「部屋」から脱出することに成功し「世界」に帰還する。そして彼らは「世界」なるものや「家族」なるもの、さらには彼ら自身の「内面」なるものに、触れ直し、救われ、新たな傷さえ負いながら、再生への道を歩き始める。その心のひだを抑制されたタッチで静かに描いてゆく映画だ。恐ろしい事件、極限的な状況、それらは最低限の示唆にとどめられていて、描写も物語も映像も全て、ホームドラマのように優しい。柔らかい光と音に満たされている。それゆえにこそ登場する人々の細やかな心の内部が観る者に切実に迫る。監禁されていた部屋、帰り着いた子ども部屋、家という部屋、親子という部屋、男と女という部屋、自分自身という部屋、世界という部屋、、、。次々と現れる「部屋」を二人は脱出してゆくのだろうか。観ていて、人生の宿命とも言えるような囲いと解放の果てしない物語をさえ想起した。そう言う私だって、この少しばかり広い映画館という部屋で、東京という部屋で、いや私自身という部屋で、こうして居るのだが。

本作でアカデミー主演女優賞に初ノミネートで受賞を果たしたブリー・ラーソンを始め子役のジェイコブ・トレンブレイなど、俳優たちの演技が大変なリアリティーで凄い。

一見地味な映画だが、味わい深い。
僕はおすすめしたいです。

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