こんにちは。
先月の4日に、友人に誘われて「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2017」へ行ってきました。
今日はその感想を書いておきます。
ラ・フォル・ジュルネ(熱狂の日)は、1995年、フランス西部の港町ナントで誕生したクラシック音楽祭のことです。
毎年テーマとなる作曲家やジャンルを設定し、コンベンションセンター「シテ・デ・コングレ」の9会場で、同時並行的に約45分間のコンサートが朝から夜まで繰り広げられます。演奏者には旬の若手やビッグネームが並び、5日間で300公演!を開催。その中から好きなコンサートを選び、1日中、音楽に浸ることができるのです。
入場料がお安いんです〜。それは「一流の演奏を気軽に楽しんでいただき、明日のクラシック音楽を支える新しい聴衆を開拓したい」という、アーティスティック・ディレクターのルネ・マルタンの意向によるものなんだそうです。
ユニークなコンセプトで展開されるラ・フォル・ジュルネの人気は国外へも拡がり、2000年からポルトガルのリスボン、2002年からはスペインのビルバオ、2005年からは東京国際フォーラムで開催されています。
2008年には金沢とブラジルのリオデジャネイロ、2010年には新潟、びわ湖、ワルシャワ、2011年には鳥栖、2015年にはロシアのエカテリンブルクで開催され、いずれも大成功を収め、クラシック音楽界にセンセーションを巻き起こしているのだそうです。
僕はそんな音楽祭があることも知らず、東京でも開催されていたことも今回、友人に誘ってもらうまで知らない勉強不足の男でした〜(笑)
1995年、フランスの港町ナントで、ルネ・マルタンが初めて企画したラ・フォル・ジュルネは、2005年「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」として東京に上陸しました。
2007年には来場者数100万人を超え、2016年までに延べ726万人の来場者数を記録。世界最大級の音楽祭に成長しているのだそうです。
2015年には、クラシック音楽の文脈に沿った従来のテーマを一新し、あらゆる文化の根底にある普遍的なテーマに基づき、時代やジャンル、地域を越えたプログラムを組むことによって、音楽との出会いがより豊かで冒険と発見に満ちたものになったと言われています。
今では“誰もが楽しめる丸の内のゴールデンウィークの風物詩”になっているのですね。会場の国際フォーラム1階地上広場には「ネオ屋台村® 有楽町東京国際フォーラム村」による多彩なキッチンカー(移動販売車)が所狭しと並び、たくさんの人垣ができていました。
僕はコーヒー好きなので、真っ先に目についたのは「Cona Cafe」という挽きたての豆を注文ごとにハンドドリップし、一杯ごと淹れてくれるお店でした。美味しかったですよ〜(笑)。友人は帝国ホテルさんのソフトクリームを食べていました。
今年の『ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン』は、ルネサンス時代から今日まで600年間にわたり、音楽と密接な関係にある「ダンス」と「舞曲」をテーマに開催されました。
太古の昔から、人が踊るところにはいつも音楽が奏でられいたんですよね。ダンスは人間の最も原初的な表現行為の一つと言われていますし、常に音楽とともに民衆の中から生まれ、クラシック音楽にも多大な影響を与えていますから。
アーティスティック・ディレクターのルネ・マルタンは、経営管理学と音楽(打楽器、音楽史、記譜法、和声、電子音響音楽)を学んだのち、ナント市に芸術研究制作センター(CREA)を創設し、1979年より同センターの芸術監督として、ナント市およびロワール地方で毎年、室内楽と宗教音楽を中心としたコンサートの企画制作を始めました。
1981年、南仏の豊かな自然に囲まれた小村ラ・ロック・ダンテロンに国際ピアノ音楽祭を創設。1988年には、大ピアニストのスヴャトスラフ・リヒテルより仏トゥレーヌのメレ農場で行われる音楽祭を任されるようになり、1986年、仏ラ・ボールでコンサートシリーズ「エルミタージュ=バリエールでの楽興の時」を開始し、2年後の1988年には、キリスト教修道院としては西欧最大のフォントヴロー王立修道院の芸術監督に就任と、クラシック音楽会に革命をもたらした人なんですね。
マルタンはこれらの経験をもとに1995年、従来のクラシックコンサートのイメージを根底から覆す画期的な音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」を企画し、世界中のクラシック音楽ファンを熱狂させているのです。
僕と友人が今回、参加したのは、No.116 ホールAの公演でした。
◎出演者
小曽根真さん(ピアノ)
フランス国立ロワール管弦楽団
バスカル・カフェ(指揮)
◎曲目
『ストラヴィンスキー:バレエ「火の鳥」組曲(1919年版)』
1.序章
2.火の鳥とその踊り
3.王女たちのロンド
4.魔王カスチェイの凶悪な踊り
5.子守歌
6.終曲
『ラヴェル:ボレロ(小曽根スペシャル)』
特別ゲスト:エリック宮城さん(トランペット)
「火の鳥」組曲を作曲したストラヴィンスキー(1882年〜1971年)は20世紀最大のロシア人作曲家です。力強いリズムと鮮烈な曲想の「火の鳥」、「春の祭典」や、古典的な音楽に美をもとめた「プルチネッラ」といったバレエ音楽の傑作を残しました。大戦後に亡命したアメリカでは、ジャズや前衛的な技法を取り入れた作品や、宗教曲も残すなど、生涯を通じて多彩な作風で観客を魅了しました。
「ボレロ」を作曲したモーリス・ラヴェル(1875年〜1937年)はフランスの作曲家です。パリ音楽院に学びますが、作曲家として最高の栄誉であるローマ賞を逃し、学外で作曲家として地位を確立しました。職人的な緻密で洗練された作曲技法を駆使し、「水の戯れ」「夜のガスパール」などの多数のピアノ曲、「ボレロ」「ダフニスとクロエ」をはじめとする管弦楽曲で知られます。オーケストレーションの達人と言われています。『亡き王女のためのパヴァーヌ』も傑作ですよね〜。
「火の鳥」組曲(1919年版)はセルゲイ・ディアギレフの依頼によって、イーゴリ・ストラヴィンスキーが作曲したロシアの民話に基づく1幕2場のバレエ音楽です。音楽としては多少長めで、分かりやすいメロディラインも少なく、どちらかと言うと効果音的で抽象的な音が多いので、初めて聞くととっつきにくいと思うのですが、民話に基づく、バレエのストーリーに沿った曲なので、やはりバレエダンサーの踊りとともに聞きたい曲だと思いました〜。でも豊かな色彩を感じさせてくれるサウンドなんですよ〜。
ラヴェルの「ボレロ」を僕が初めて聞いたのは、幼い頃、クロード・ルルーシュ監督による1981年公開のフランス映画『愛と哀しみのボレロ』をレーザーディスクで観た時です。昔、自宅にプレーヤーがあったんです。1930年代から1960年代にわたり、パリ、ニューヨーク、モスクワ、ベルリンを中心とするフランス、アメリカ、ロシア、ドイツにおいて交錯する、2世代4つの家族の人生を描いた大作でした。
4つの家族のモデルとなっているのは、ルドルフ・ヌレエフ、ヘルベルト・フォン・カラヤン、エディット・ピアフ、 グレン・ミラーです。
クライマックスの、フランスで行われたチャリティ公演のシーンで、この家族が一堂に集結するのですが、ジョルジュ・ドン(ルドルフ・ヌレエフがモデル)がボレロに合わせて踊るのです。このシーンを初めて観たときは物凄い衝撃を受けました。
ダンスの振り付けもでしたが、ボレロという曲のなんとも言えないメロディラインの不思議さにです。同じメロディが何度も繰り返されるだけのように聞こえるのですが、ジョルジュ・ドンのダンスとともに、徐々に気持ちが高揚していくなんとも言えない感覚に子供ながらに感動したことを覚えています。
今でも、CMなどによく使用される名曲ですよね。渡辺直美さんの皮膚の汗臭剤のCMは『愛と哀しみのボレロ』のラストシーンをモチーフにしているのだと思いますよ〜。映画はもっとスケールがデカイですけど(笑)。
演奏は、仏文化省の音楽部監督であった作曲家のランドスキが、ナント・オペラ座管等を母体に1971年に創設した『フランス国立ロワール管弦楽団』、指揮は、パリ国立高等音楽院を卒業し、フランスを代表する今もっとも旬な指揮者のひとりと言われるパスカル・ロフェです。現代音楽と古典楽曲の両方を得意とし、18世紀や19世紀の交響曲レパートリーの解釈においてもまた絶大な評価を得ている方だそうです。
『ラヴェル:ボレロ』は小曽根スペシャルと題されていました。
特別ゲストにトランペットで有名なエリック宮城さんを迎えて…。
小曽根真さんは、バークリー音楽大学ジャズ作・編曲科を首席で卒業し、同年6月にニューヨークのカーネギー・ホールにてソロ・ピアノ・リサイタルを開きます。このとき、見物にきていたクインシー・ジョーンズに見出されて米CBSと日本人初のレコード専属契約を結び、アルバム『OZONE』にて全世界デビューされ、以降、ゲイリー・バートン、チック・コリアとの共演や、ビッグバンド No Name Horsesを結成しツアーを行うなど、最先端のジャズシーンで活躍し、ニューヨーク・フィルハーモニック、サンフランシスコ交響楽団から招かれるなど、ジャンルを超えて活動されている、日本を代表するジャズピアニストです。
エリック宮城さんは、ハワイのご出身です。お父様もプロトランペッターで、小学生の頃から楽器を始め、中学生の時にプロデビューを果たされ、高校を卒業後、バークリー音楽大学へ奨学金を得て入学。22歳でBuddy Rich、Woody Herman等のビッグ・バンドにリード・トランペッターとして招かれるなど、国内外の多数のトップ・アーティストと共演されている方です。
最初は、クラッシックとジャズの競演?
どんな感じなのかなあと思って会場に入りました。すると…
クラシックという緻密に構築された世界とジャズという形にとらわれない自由で即興演奏を主体とする世界が、溶け合ったり、反発したりしながらいつの間にか見事に一つの音楽として僕の心を揺り動かしてくれました。
ボレロが持つ美しくて規則正しいメロディに、不規則と言っていいのか、小曽根さんの自由奔放なピアノが交わって、とても刺激的なステージでした。プラス、エリック宮城さんのトランペットがボレロとともに聞けるとは新鮮でした〜(笑)。
小曽根さんの汗が見えるくらい、ステージに近い席でしたので、小曽根さんの緊張も、音楽にかける熱情も、身近に感じることができて至福の時でした。
最後のフォルテッシモが高らかに鳴り響くと、こらえきれないとばかりに、客席から大きな拍手と歓声が沸き起こりました。
盛り上がりますよね〜。ボレロは(笑)。
3回ほど観客の熱いアンコールに応えてくださり、最後はスタンディング・オベーションで幕。僕は滅多に立つことはないのですが、今回は思わず立ってしまいました〜(笑)。
堅苦しいイメージのクラシックコンサートのイメージを覆されました。
クラシック音楽は楽しいです!
来年もまた参加したいなあ〜。
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