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周恩来の義理の息子、李鵬一族の落日 革命元勲の末裔らが迎える冷え冷えとした黄昏(宮崎正弘国際ニュース早読み)

2018-03-01 | 中国の歴史・中国情勢
李鵬といえば、周恩来の義理の息子(つまり養子)。元首相、前全人代常務委員長(いわゆる国会議長)。しかしながら李鵬の評価は中国民衆の間で極めつきに低く、なぜこんな人物が中国の最高指導者なのかと疑問視する声が大きかった。トウ小平が、89年天安門事件で趙紫陽を失脚させるや、李鵬は自分が総書記に任命されると信じていたフシがある。

突如、総書記に任命されて、上海からやって来たのは江沢民だった。江沢民はトウ小平の後ろ盾を得て、将軍任命の辞令を乱発し、同時に軍のサイドビジネスを黙認し、そうやって人民解放軍を抑えた。なぜなら江沢民は軍歴がなく、工学エンジニア出身でソ連留学経験があり、自動車産業に詳しいが、政治力量は未知数だった。

憤懣やりかたない李鵬は、97年香港返還式典の際、江沢民とは別に特別機を飛ばして香港に押しかけ、ふたりが雛壇に並ぶという異常事態を現出した。それでも守旧派を「尊重」した江沢民は黙っていた。

胡錦涛時代の十年は、江沢民の「院政」であり、胡錦涛は李鵬一族のやりたい放題に眼を瞑った。腐敗分子の象徴として泳がせたとも言える。

李鵬一家は中国の電力利権を抑えた。李鵬自身が水力発電の専門エンジニアあがりでもあり、中国の水力発電所からダムの建設と管理、そして石炭、重油を燃やす火力発電から近年は原子力発電にいたるまで、あらゆる電気の利権の元締めとして君臨した。

その象徴的な構造物が世界最大の水力発電「三峡ダム」であり、軍の反対を押し切って、重慶と武漢の間の揚子江に完成させた。高さ185メートル。水位165メートル。軍が強く反対したのは、軍事戦術的に言えばダムがミサイル攻撃に脆弱であること、地誌学的に言えば、上流地帯が水没し、生態系が激変するが、地滑り、地盤沈下、地震の誘発が恐れられたからで、またその通りになった。

下流域では、ダム決壊の場合、溢れ出る激流が洪水となる可能性があり、いまでも新しく八十万人を立ち退かせる計画がある。『上海水没』という本まで出た。

現実問題としてはプロジェクトの必ず付帯する、中国的伝統。すなわち「汚職」である。建設資材から発電機購入に必要な莫大な予算。もう一つが立ち退き住民へ支払う補償金のピンハネだった。地域幹部が行ったことは幽霊戸籍をでっち上げて、法外な補償金をせしめ、ポケットに入れるという大規模な汚職事件も発覚したが、その上納先と噂された李鵬への追求はなかった。

▲李鵬の娘、李小琳は世界に「セレブ」「キャリアウーマン」と名を売ったが

この間、もっとも注目されたのは娘の李小琳で一時は中国の「キャリア・ウーマン」の代表格として世界の有名人になった。なにしろ当時の彼女の肩書きは「中国電力国際発展有限公司」董事長、「中国電力新能源発展有限公司」薫事長。

ところが習近平が権力を握るや、守旧派征伐の標的とされ、彼女は突然、片田舎のダムの所長のポストに「大左遷」された。

息子の李小鵬はと言えば、やはり電力企業系列の社長をつとめ「アジアの電力王」などと言われた。政界に転じて山西省副書記、省長となっていたが、評判が芳しくなく、2016年に交通運輸部長(閣僚級}に飛ばされた。日本で言えば「運輸大臣」だが、そのうえに国務委員(たとえば王毅外相は上位の国務委員=楊潔チに頭が上がらない)がおり、中国ではただの飾り。

そして李小鵬は部長級でありながらも、全人代のメンバーに落選した(2018年2月27日)。これで中国政治における李鵬一族の利権はすべて失われることとなった。この人事が象徴してあまりある李鵬一族の落日ぶり、周恩来の義理の息子一家、革命元勲の末が迎えた、寒風の吹きすさぶ黄昏だ。

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