Not even one meowその1 | That's where we are

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the Church of Broken Pieces
(アメリカ救急医の独り言と二人言)

救急隊に搬送されてきた患者は

大きな荷物と共にやって来た

 

「70代男性、呼吸困難。胸痛なし。

酸素濃度は正常です。」

 

買い物の際に引きずって歩くような

ショッピング・カートとでも言うだろうか?

下矢印こういうヤツ

大きなごみ袋に包まれた何かを

2つか3つか積み込んでいて

そして、ごみ袋の上には

 

「ちょっと、コレ、何?」

 

ケージの中にうずくまる白いフワフワ

 

救急隊員「それ、猫ですわ」

 

いや、猫なのは説明してもらわなくても分かる

上から見ても、横から見ても

紛れなく猫だから

 

そうじゃなくって

道端でピックアップしてきた患者が

なんでケージに入った猫を連れているのか?

 

ベビーシッターに預けに行く途中なのだと

そう患者は説明した

 

大きな真っ白い猫

緑と黄色のグラデーションが入った眼

高級感あふれるキャットフードのコマーシャルに出ても

全く違和感のない綺麗な猫

「美人さんだね」と声をかけた

私の顔を1,2秒だけチラッと見て

あとはそっぽを向いてふて寝

 

預けに行く途中なら

その人に引き取りに来てもらえないかしら?

病院に(人間以外の)動物はいられないから

 

OK, I willと言いながら

患者が電話をしようとするそぶりも見せず

本当に預かってくれる人がいるのかしら?

カートに入った大きなビニール袋といい

もしかして、住んでいる所を追い出されたのか?

 

なんやかんやで、患者は入院が必要な状態

入院病棟にベッドも見つかった

ところが、問題はこの美人猫

盲導犬等サービス・アニマルでない限り

病棟へは犬猫の立ち入りは禁止

 

「預かってくれる人、いるんじゃなかったの?」

「今夜は迎えに来られないとか言ってましたよ

でも、本当にそんな人、いるんでしょうかねぇ」

 

そのうち、チャージ・ナースがやって来て

(ER内で患者がどのベッドへ行くか手配する係)

「ナース・マネージャー(ナースの総括)が言うには

SPCAに迎えに来てもらうか

AMAで出て行ってもらうしかないみたいです」

(SPCAはペットのレスキュー、アダプションを手伝う団体

AMA=勧められた検査、治療を拒否すること)

 

SPCAって...真夜中に開いてるの?

 

ネットで電話番号を探し、電話してみたが

『営業時間は朝8時から...』留守電のみ

ホームページに書いてある内線番号に

手当たり次第にかけてみると

『もしもし』

あ!つながった!

 

『そういうのは私の担当じゃありません

朝8時に事務所が開くので、そこにかけて下さい』

 

う~ん、困った...

 

SPCAのホームページには

「動物がいなくなったり、見つかったり、

捨てられていたりした場合は

アニマル・コントロールに連絡を」と

デカデカと番号が書いてあった

ここじゃ、どうだろう?と電話をかけてみることに

 

(続く)

 

どくしゃになってね…