浅野秀弥の未来創案
【トランプと橋下】
手品的改革などない
ドナルド・トランプ氏(70)が第45代米国大統領に就任し、前任のオバマ氏を全否定して余りある大統領令を連発し物議を醸している。彼の言動を眺めていて「レベルは違いすぎるが、橋下徹氏(47)が政界デビューしたころに何だか似ているなぁ」と感じた。
この二人は奇妙な共通点がある。トランプ氏は不動産王、橋下氏は弁護士の正業を持ちながら、テレビでの毒舌で一躍人気者になり究極のポピュリズム (大衆迎合)に乗ったこと。テレビ界から政界に身を投じる際に、既存勢力に散々毒づき、分かりやすい「敵」を作って一般民衆を扇動したこと。橋下氏は大阪 都構想、トランプ氏はアメリカ第一などの分かりやすいスローガンで「これさえ実現すれば、あなたたちはたちどころに幸せになれる」と民衆を期待させたこ と。既存メディアを敵に仕立て記者会見などで徹底的にば倒、「マスコミは守旧派の味方」との演出を施したこと。自分の意見は煙たい新聞やテレビを通さずツ イッターなどのSNSで一方的に発信、しかも粗っぽくて分かりやすい表現でファンを拡大させたなど枚挙にいとまがない。
権力を持たぬ弱い有権者は、日々の苦しい生活に対し「誰に怒りをぶつけたらよいのか?」が分からない。そのときに、大声でわめきながら「任せなさ い。私に1票入れれば、明日からあなたを取り巻く世界が一瞬で変る」という夢を見せられると、大衆は「彼こそ救世主」と感じて、物につかれたように投票行 動に走る。これを専門用語で“青い鳥症候群”という。魔法的な改革は存在せぬどこにもいない青い鳥を求めて旅する兄妹と似ているこの意味は「首長一人だけ が変って、すべてもの事柄が自分の思い通りになるはずはない」というしごく当たり前の実態だ。
さらにずる賢い人間は、そうした究極のポピュリズム・カリスマ政治家にうまく取り入り、自分の利権をいつの間にか手に入れようとする機を見るに敏 な既存政治家。大阪都構想やカジノ誘致を「誰が得をするのか?」の視点からじっくり考えてみればよい。大阪市民はどこまで人がいいのだろうか?