世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●金融資本主義、滅びるべくして滅びる 慌てるな金融敗れて山河在り

2016年02月11日 | 日記
CIAの秘密戦争――「テロとの戦い」の知られざる内幕
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●金融資本主義、滅びるべくして滅びる 慌てるな金融敗れて山河在り

今夜の予定は、佐伯啓思氏の欧米文化からの脱却に関する“異論”の話題に触れるつもりだったが、世界経済が紛うことなき不況に突入しようと云う状況が表れただけに、もう少し、執拗に問題を吟味してみようと思う。最終的には、アメリカ発の歪んだ資本主義(金融資本主義】のお蔭で、抜け出す道を見つけること自体が不可能というカオスな迷路に入っているのだから、おそらく、羅針盤などはない。滅多矢鱈な政策を繰り出してみて、イフの奇跡を待たなければならないのが、世界経済の現状だ。

個人的には、イフな僥倖など起きない方が人類の為には良い結果を生むと考えているが、一般論としては、そのような結果を是とはしないに違いない。世界の金融関係者の主論に反対姿勢の経済学者であっても、彼らには、金融資本主義に立脚した現状の立場があるので、その域外に足を踏み出せる奴は稀だ。中谷巌のように、器用な人間であれば、懺悔の上、偏向することも可能だが、滅多にいない。という事は、今後、メディア等に登場する専門家の考えの多くは、金融資本主義の領域内においての議論であり、どの方法論にも、宿痾がつきまとっているので、まっとうな解決の解を提示することは期待できない。これは、社会学的に、理の当然である。

それにしても、サブプライムローン及びリーマンショック以上の規模で、世界経済が崩壊寸前であるにも関わらず、米中露を中心とした代理戦争パワーゲームも止みそうにない。中露を外して、グローバル経済危機を乗り切ろうとしても土台無理だ。にも拘らず、米国やその周辺勢力は、彼らを外す基本理念で乗り切ろうとしている。世界のすべての国が協力しても、解決の道が見つかるかどうか危うい情勢において、無謀過ぎる地政学的事情が加わる。まして、悪いことに、米国は大統領選の真っ最中で、既存のプラットフォームを破壊しようと云う候補者に注目が集まっている情勢だ。まとめる、主役が不在なのだ。

以下の日経とフィナンシャル・タイムズの二つの記事だが、前者は、掌返しのような知った顔をしたコラムで、不快なだけだ。滝田洋一という男も、自分が書いてきた、過去のコラムを吟味する矜持が、必須の人間である。それこそ、何を今さら書き出すのだ。お前等日経の記事の所為で、どれだけの人間が、いま株式市場で塗炭の苦しみを味わっていると思うのか!そう云うコラムだが、怖ろしいのは、後者のフィナンシャル・タイムズのコラムの方だ。個人的には、≪≫内を支持する。≪1つは何もしないことだ。好況時に犯した誤りを是正する機会という理由で、世界経済には時に不況が必要だと主張する人も少なくない。だが不況が社会をむしばむ影響を考えれば、とてもまともな発想とは言えない。≫と云う経済紙らしからぬ発想を書き込んだ点だ。無論、選択肢ではないと断ってはいるが。

もっと凄いのは、破れかぶれで、FRBや他の中央銀行も、資産一杯マネーを刷り続けると云う案だし、預金引き出し制限や、口座凍結に繋がるような選択肢にまで言及している点だ。筆者が、今夜のコラムで言いたいことは、金融資本主義が、リーマン・ショック以降の改善策を中途半端に終わらせたツケが、十倍のパワーとなって、金融機関を襲っている現実だ。世界の金融機関は、明日以降も、応急処置をせざるを得ないので、赤チンや絆創膏レベルの措置を施すだろう。その都度、あらゆる金融関連の相場に迷いを起こさせるだろうが、ステージ4の膵臓がんと肝臓がんが同時進行している事態に至っているのだろう。モルヒネ多用のホスピス状態と云う事だけは認識すべきだ。

しかし、庶民が、不幸になるわけではない。金融資本主義の次のプラットホームによっては、マネーに支配されていた世界から脱して、それぞれが、それぞれのプライベートな価値観に基づき、ゼロベースからやり直せると考えれば、大した問題ではない。足元の共同体や、共通資本の貴重さなど、再び見直すことが可能な喪失感を味わうだけである。つまり、人間らしい生き方と云う原点に戻るだけで、食い物がなくなる世界ではない。空気も水も大地も残っているのだから、怖れることはないだろう。


≪ 世界株安、「家庭の不幸」はそれぞれに
編集委員 滝田洋一
幸福な家庭は同じようなものだが、不幸な家庭はそれぞれに不幸である。トルストイの「アンナ・カレーニナ」の有名な書き出しである。
 日銀のマイナス金利政策を帳消しにするような、2月に入ってのグローバルな金融動乱は、この言葉を想起させる。日米欧株安の株安には、世界経済の先行き不透明感という共通の事情もさることながら、各市場固有の下げ材料が見逃せない。
■追い詰められた欧州銀
英紙「フィナンシャル・タイムズ」が喝破したように、8日からの世界株安の引き金を引いたのは銀行株の下落。なかでもドイツを代表するドイツ銀行株はたった1日で約1割も下げ、リーマン・ショック後の安値を更新した。
  大幅な赤字決算に陥ったドイツ銀の普通株はすでに無配に転落している。それに加えて、ハイブリッド債の利払いを危ぶむ声が市場に広まり、ドイツ銀は 「2016年については10億ユーロの支払い原資を用意した」と火消しに大わらわだ。ドイツ銀ほどではなくとも、欧州の金融機関の株式は総じて下げてい る。  欧州中央銀行(ECB)をはじめマイナス金利政策が広がるなか、欧州の銀行にとって利ザヤの稼げる確定利回り資産が先細りになっている。欧州銀は土俵際に追い詰められている。
そういえば、欧州銀のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のプレミアム(保険料)は、1月29日から跳ね上がっている。日銀がマイナス金利に踏み出したことで、ECBがマイナス金利を拡大すると読んだからだろうか。
 米国の株安の根っこにあるのは、原油安に伴うエネルギー関連企業への不安感だろう。石油・天然ガス開発大手のチェサピーク・エナジーが、「債務再編へ法律事務所を雇った」などと伝わったからたまらない。
 会社側は「破産申請の計画はない」と否定したが、後の祭り。エネルギー関連株が売りの嵐に見舞われた。エネルギー関連の融資の焦げ付きが増えると見れば、金融株にも売りの連鎖が広がる。これが米国株安のメカニズムだ。
■3月決算期を控え襲う「円高・株安」の嵐
10日の東京市場も引き続きこれら米欧の実勢悪を一手に引き受ける結果となった。日経平均株価は1万6000円を割った。投資家にとっての痛手は円に上昇圧力が集中したことだ。
 くせ者は米国の長期金利である。米景気がもたつき、金融市場も動揺していることから、3月の米利上げは雲散霧消したようだ。利上げシナリオの大幅後退を受けて、10年物米国債の流通利回りは1.7%台まで低下し、ドル安が進んでいる。
 ドル安の大波をユーロが円とともに分担して引き受けてくれればよい。ところが、そうは問屋が卸さない。ポルトガルやイタリアなど南欧の重債務国の国債が売り込まれるなか、投資資金はユーロには向かわない。
  かくて為替市場で円は上昇圧力を一手に引き受ける結果となっている。国際金融市場が揺らぐなか、円にばかり買い圧力が集中する構図は、08年のリーマン・ ショック後を髣髴(ほうふつ)させる。しかも日銀はすでにマイナス金利のカードを切っている。3月決算期を控えて、一番嫌なときに「円高・株安」の嵐が襲ってきた。これが日本のお家の事情である。  ≫(日経新聞)


 ≪ [FT]次の不況に備えはあるか 未曽有の緩和策も
リーマン・ショックが起きた2008年よりも金利が低い今の状況で、次の景気後退に見舞われたら、各国の中央銀行はどうするのか。英シンクタンクの レゾルーション財団のリポートが指摘する通り、不況が起きる可能性は極めて高く、中銀は事態に備えておく必要がある。最も重要なのは、中銀はどうすべきか分かっていると国民を安心させることだ。

■先進国の一部は深刻な不況の可能性
金融危機から8年半が過ぎた。09年3月以来、米、日、英などの中銀が設定した政策金利は最高でも0.5%にとどまり、上がる気配はない。欧州中央銀行(ECB)と日銀に至ってはマイナス金利を導入している。日銀の金利はそれまでの20年間も0.5%以下だった。英国の状況はそこまで超低金利ではないが、最近の市場予想では21年の基準金利が1.6%前後、25年でも2.5%前後と、07年の半分以下だ。

 25年までに英国が深刻な不況に陥る可能性は、かなり高いと言わざるを得ない。米国、日本、ユーロ圏についても同様だ。中国経済の不均衡や新興国経済の悪化を考えると、そのリスクは迫っていると言えよう。先進諸国は前回の景気後退時に比べ、伝統的な金融緩和の余地がはるかに少ない状況で不況に突入することになりそうだ。

 だとすればどんな手を打つべきか。1つは何もしないことだ。好況時に犯した誤りを是正する機会という理由で、世界経済には時に不況が必要だと主張する人も少なくない。だが不況が社会をむしばむ影響を考えれば、とてもまともな発想とは言えない。

  第2の可能性は成長率や名目国内総生産(GDP)、インフレ率などの政策目標を変えることだ。もっと高いインフレ目標を初めから掲げていればよかった。だが、今の低いインフレ目標すら達成できていない以上、今さら引き上げても、人々の期待を混乱させるだけで、よい結果にはつながるまい。十分な手段もなしに 大胆な目標を設定すれば、ただの大言壮語と取られてしまうだけだ。

 したがって第3の可能性としては、政策手段を変更するか、既存の手段をより強化するかだ。 その1つとして、あまり議論されていないが、レバレッジ(借金)の解消を組織的に行うことが考えられる。そのためには債務を強制的に株式に転換することなどが必要になろう。深刻な事態に陥れば望ましいかもしれないが、現実的には難しい選択肢だろう。

■資金供給を金融政策の手立てに
既に大規模な量的緩和の規模をさらに拡大するという強化策もある。昨年の第3四半期末時点で、日銀の資産合計はGDPの70%に達している。同 30%未満にとどまっている米連邦準備理事会(FRB)、ECB、イングランド銀行は日銀のように緩和規模を拡大すればいい。さらに購入する資産を外債にまで広げることも考えられるが、それは他国の通貨高を招きかねないため必要ない。日銀やECBの緩和策はすでに自国の通貨安を起こしているからだ。

  さらなる選択肢として、ECB、日銀のほかデンマーク、スウェーデン、スイス中銀が導入したマイナス金利という選択肢もある。市中銀行が中銀に預ける資金に対して金利を支払わなければならないようにすることで市場金利をマイナスに誘導する。一方で一般預金者はマイナス金利を負担しなくても済むようにできれば、採用可能だ。

 ただ、現金がまだ流通する中で、どこまでこの方法が有効かは分からない。マイナスの度合いが過ぎれば、銀行預金の引き出しにペナルティーが課される、あるいは現金が一切廃止されるといった事態にならない限り、多くの人は現金を倉庫に入れて倉荷証券を活用するようになるだろう。加えて、マイナス金利は、通貨安の効果を別とすれば、その有効性には疑問符が付く。 最後の手段として考えられるのが、文字通りお金をばらまく「ヘリコプターマネー」だ。政府や個人による財とサービスの購入を促す目的で、恒久的に紙幣を増刷する政策である。

  金融政策の観点からみれば、これは恒久的な量的緩和を意図して行うことに等しい。もちろん、現在の量的緩和も、後から振り返れば恒久的だったということはあり得る。日本はどうもそうなりそうだ。だから恒久的な紙幣増発のつもりで始めても、結局は一時的だったということもあり得るだろう。

 とはいえ、政府の支出なり、減税なり、国民の預金口座なりに直接お金が投入されるとなれば、何らかの効果は確実に期待できる。重要なのは、供給する資金量を金融政策の一部として中銀自身に任せることだ。

 個人的には、最後の手段を支持したい。だが現段階ではまず、次回は一段と非伝統的な手段が必要になる可能性が高いと肝に銘じ、あらかじめ備えておくことだ。各中銀は、次の不況が到来してからではなく、今のうちに打つ手を考えておくべきだ。 By Martin Wolf

≫(日経新聞掲載:2016年2月5日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
 

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2 コメント

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Unknown (ながよし)
2016-02-11 09:24:50
一週間前、みずほ銀行に口座を作りに行った。
(儲かっている訳ではなく、マイナンバーとか色々不穏だから、今の内に拵えとこうと思った)
支店の中でも大きい方なので、2階に通されたが、新規のコーナーとか、投資のコーナーとか、無人なんだもんね。(つまり、私しか客がいなかった)
これが実体経済なのだと再認識した。
Unknown (武尊43)
2016-02-11 13:25:44
>大胆な目標を設定すれば、ただの大言壮語と取られてしまうだけだ。
アベが言ってる事そのまま。
 それにしても日経もFTのも、資産家だけが生き残る方法を解いているだけですな(怒)
一般庶民が餓死すりゃあ資産家だって食っていけないのを分かっていない。
確かにリーマン時よりも悪いのは確かですし、犯人を作り出すのも難しい(笑)犯人を銀行にしようとしてるんですかねぇ?でも銀行ってどこまでも資産家が庶民から金を吸い上げる為に作ったシステム。そこが傾きゃあ金持ちもダメになるんじゃないですか?
 残る手段の戦争もアンマリ巧くいかない地球上、、。オリンピックもジカ熱でヤバそう、、。
日本は行政改革と既存大手企業潰しに、アメリカの御威光からの脱却という最後の手が残ってますがね(笑)

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