世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●エリートと大衆の分断 大衆層では宗教・民族等による分断も

2016年02月07日 | 日記
移民からみるアメリカ外交史
クリエーター情報なし
白水社


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●エリートと大衆の分断 大衆層では宗教・民族等による分断も

見出しでは書き切れなかったが、大衆の一部人々は、自らエリートの奴隷になりたがる分断も加わる。中には、ナショナリズムな感情論に身を任すものさえ出てくる。それに比べ、エリート層は是々非々の生き方に順応しているので、利害損得の価値基準が一致している。つまり、エリートが、表向き仲が良いのは、欧米的マネー信仰と云う価値観で一致を見るからだ。マネーには、それを取り巻く人々の接着剤としての機能もあるので、理屈に適う生き方と、マネーと云う接着剤は相性がよく、堅固な社会構造を形成する。

ただ、中国、インド、南米、アフリカと市場原理が求めたグローバル経済のフロンティア役の地域では、成長疲労が生まれてきている。現在、最後のフロンティアとしてミヤンマーなどASEAN地域が注目されているが、此処が最後だと云う事も、マネーゲーム参加者は知っている。一時、世界は中間層を増やせたから、一定の経済成長を生みだし、ソ連邦が崩壊することで、欧米デモクラシーを信仰レベルまで引き上げた20世紀だったが、やはり、こちらにも、限界があったと云うことだ。

エリート層には、マネーがあり、利害損得の一致があり、知恵と狡猾さを持っている事が多い。ピケティではないが、資本主義の完全な歪みなのだが、エリート層も、半分はシステムに翻弄され、抜け出せない状況を抱えている。ここまで大衆と分離することは、自らの立場を危うくするのは運命的なので、自ら率先して、その仕組みからドロップアウト出来ない。ドロップアウトすることは、自分の社会性を失うことが多いので、家族まで失う決意が必要になる。つまり、一個人の器量で、ドロップアウトを選択することは、殆どない。

エリート層が、単に強欲なわけではなく、ドロップアウトした後の世界が見えないものだから、頑強な躊躇に繋がっている。ゆえに、その状況を理解しているエリート層の中には、高額所得に対する課税強化は歓迎だと云う発言まで出てくる。どうせ、自分や家族だけでは使い切れない富が偏在して貯まってしまうだけなのだから、取られても痛痒はない。ただし、そのような気持は、個人においてのみ有効な話で、株式会社となると、これは断然話が違ってくる。現在のグローバル企業の経営者たちには、株主の利益に損害を与える行為をするとペナルティーが科せられる。

FTも言及しているが、有限責任しか担保していない株主に、企業群は、無制限の要求を呑まなければならないのか、問題を提示している。そう、現在のエリートたちにも悩みはある。20世紀後半から21世紀にかけて、あまりにも株主利益が増長してしまった。そして、その要求に答える企業群がグローバル企業に増えて、現在に至っている。一部のオーナー企業群を除けば、現在のエリート群も、実は金融資本主義、グローバル世界経済の犠牲者だと言える。ゆえに、現状のエリートと大衆の分断は、誰の責任でもない。世界の潮流に乗っていたら、このような仕組みになってしまったのだ。

現在、米大統領選が幕を開けたが、長丁場だけに、誰が有利か判断できない状況だが、候補者脱落な人々はほぼ見えた。しかし、少なくとも、第二次大戦後のアメリン・デモクラシーを標榜する覇権国家としてはあり得ない状況の候補が大統領候補として生き残る可能性を残している点は、世界的に大きな現象なのだと思う。筆者は、歴史的流れから、米国の役目は終わったと考えている人間だから、遅すぎる現象なのだが、漸く現実の世界に現れてきたようだ。極端と極端が勢力を伸ばし、中間穏健層が存在感を失っている。米国の成長の源泉である、移民を切るか、守るか論で左右に分かれている。或る意味で、金の奴隷でいるか、金を奴隷にするか的な論争でもある点は、最低でも日本よりも健全だ。

ただ、この問題の解決は容易ではない。なぜなら、闘う敵が、人間であったり、国家間であるわけではなく、世界の経済の血液として流れている正体不明な「マネー」だからである。自分たちの生活の利便の為に考えだし、都合よく使っていた貨幣が、人間を使役し始めたのである。ロボットを作って、ある日気がつくと、その開発者が、そのロボットの召使になっているような笑い話が、地球上で起きているのだろう。おそらく、この問題の解決は、エリートにも、大衆にも最終的には出来ない。出来るのは、「マネー」自体の自殺的暴走によってだけだろう。その時、世界の人々に何が起きるか、筆者は寡聞にして知らず。


 [FT]エリートと大衆、拡大とまらぬ溝
 今年11月の米大統領選に向けた候補指名争いの初戦となるアイオワ州の党員集会では、共和党のテッド・クルーズ氏が、本命視されていたドナルド・トランプ氏から予想外の勝利を奪った。
 一方、民主党では民主社会主義者を自称するバーニー・サンダース氏が、主流派が支持するヒラリー・クリントン氏と互角の戦いを見せた。エリート層に対する大衆の反乱が一気に表面化した格好だ。
 問題は、欧米のエリート層と一般市民との距離を縮められるのかということだ。 複雑な現代社会の統治には、専門的な知識が必要だ。だが、経済エリートや官僚エリートと一般市民との間には、修復不能なまでに溝が広がっている。これが行き着くところまで行くと、政治に対する一切の信頼が失われてしまうかもしれない。
 そうなった時、有権者は、既存体制を一掃しようとアウトサイダーの支持に回る。我々が今、目にしているのは、信頼がアウトサイダーに向かい始めた変化だ。米国だけではない。欧州の多くの国々でも同じ変化が生じている。
 これを一部の不満分子による動きで、主流は変わらないとみるのは甘い。そう考えるのは危険だ。不満がさらに高まれば、主流が崩れないとも限らない。
 仮に体制の主流が変わらないとしても、多くのマイノリティーが不満をため込み、多数派も不信に満ちているような社会は決して望ましい社会ではない。

■有権者、「エリートは腐敗していて無能」
 では、乖離(かいり)の根本原因はどこにあるのか。一つは文化的な変化であり、もう一つは人口における民族構成の変化に対する不快感だ。拡大する格差と経済的な不安定さに対する懸念もある。
 恐らく最も根本的な原因は、「エリート層は腐敗し、自己満足に浸り、無能だ」と感じている有権者が増えていることだ。扇動的な政治家はこうした不安や怒りを利用するもので、現実にそうしている。
  経済協力開発機構(OECD)が昨年12月に公表した報告書によると、過去数十年の間に大半の加盟国で格差が大幅に拡大したという。特に税引き前の総所得に上位1%が占める割合が大きく拡大した。経済エリートとの格差が著しいのが米国だ。同報告書は「(米国の)1975~2012年の税引き前総所得の伸びの約47%が上位1%に流れた」と指摘する。これに伴いポピュリズムが右翼、左翼を問わずまん延してきた。
 この状況に、体制の中核を担う者はどう応じればいいのか。優れた政治家は、一般市民が「自分たちの懸念について考えてくれている」と感じる必要が あると理解している。市民が「自分や自分の子どもたちが将来も豊かに暮らせて、経済的安定を維持する手段を持ち続けられる」と感じる必要があることもだ。 まず、経済や政治エリートの能力と良識に対する市民の信頼を回復することが必要だ。

 ■金融部門を縮小し競争の促進を
 そのためになすべきことを列挙しよう。第一に、グローバル化がもたらす破壊的側面は大量の移民であり、国境をまたぐ移動は管理する必要がある。米国には 1100万人もの不法移民がいるが、このような事態を許すべきではなかった。欧州では国境管理の回復が待ったなしの課題だ。でなければ欧州連合(EU)の 存続すら危うくなる。
 もちろん難民問題は最優先課題だ。そのためにEU外の秩序促進に向けて効果ある手を打つ必要がある。
 第二は、ユーロ圏は現在の緊縮政策を根本的に見直すことだ。実質総需要が2008年上半期より少ないという現状には、あきれるほかはない。
 第三は、金融部門の縮小だ。金融活動が拡大しても、それほど経済に寄与しなかったことは明らかだ。それどころか金融部門の拡大は大量の富の移転を促した。
 また、資本主義における競争の促進も重要だ。現代は、企業が大きな政治的な力を振るう新たな「金ぴか時代」だ。この事態への対策の一つが競争の促進であり、断固たる施策が必要だ。
 さらに、公正な課税の実現も欠かせない。資本家や一部の大企業は、利益に対して極めて軽い税しか納めていない。彼らは法は守っていると主張するが、税法の成立過程で大きな影響を及ぼしている以上、法に従っていれば問題なしとする主張は誠実ではない。
 株主第一主義も再考を要する。株主は有限責任という大きな恩恵に浴している。リスクが有限である以上、会社に対する支配権も制限されるべきだ。むしろ、長期勤続の社員など、社内でリスクにさらされている者への配慮が必要だ。
 最後に、政治におけるカネの役割を封じ込めることも大切だ。  欧米諸国は今後、一層様々な問題に直面するだろう。多くの市民が、ないがしろにされ、権利を奪われていると感じている。この問題に、これ以上目をつむっていることは許されない。 By Martin Wolf
(2016年2月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) (c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.  ≫(日経新聞)

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1 コメント

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Unknown (武尊43)
2016-02-07 08:15:53
FTは自国の一部の金持ちに被害が及ばないように喚いているだけ(笑)
移民がイギリスに移動して来ては困る訳だ。何せ一般庶民が不満を膨らませ、その不満が金満家(エリート・貴族)に向かって来てしまうからだ。その不満が国家分断に発展しそうなのが今の英国病。
米国の大統領選挙をこき下ろしてしるのは、矢張り同じように一般大衆の声が大きくなるのを防ぎたいだけ。
東京新聞の社説でもトランプとサンダースを「ポピュリズム」と一刀両断にした。
違うよ!確かにトランプはポピュリズムかも知れない。しかしサンダースに寄せられているのは『民の声』なんだ!民衆の憤りがサンダースを生みだし、頂点に導こうとしているんだ。そうでなければ彼が73歳になる今も民主党議員として活動してこれた訳が無いんだ。トランプは何所までも実業家で資産家。この違いは大きい!

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