名画座の難点を挙げるとすれば、他人に不寛容な、思いつめたような映画マニアがいるところだ。今回は気持ちよく鑑賞できた。
ドキュメンタリー2作品とも、自己の芸術性を禁欲的に高めた人々の話しだ。
『ラスト・タンゴ』は、50年にわたってペアを組んだアルゼンチンタンゴの名手の回想。
夫婦になり、夫婦別れしてもなお、ペアとして踊るのだが、
妻だったマリア・ニエベスの言葉に深みがある。
「うまくいかない夫婦の愛憎と、芸術とは別に考えるべき。その苦悩の中から芸術は更に高められる」
極めた人の言は、凡人とは違う。
(早稲田松竹 2本立て シニア900円)